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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第八章 ジーダス攻略戦・後半
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器と魂

視点はマナですよぉ(==ノ



「どうしたのマナ姉?」


 なかなか目の前の事で動かなかった思考回路が動き始める。


「い、いいいま、ひひひ棺が……」


 恐る恐る顔を上げてユウを見る。

 顔はおそらく恐怖でいっぱいだろう。


「ん? あいつの器なら壊したけど?」

「う、器? ど、どう考えても棺をこ、こ殺して……」


 震える手で火が消え、灰となってしまった場所を指す。ユウもその場所を見て答える。


「殺して? 別に殺してないけど?」

「ど、どう考えても火で燃やして灰にしちゃったでしょ!?」

「? ……ああ。マナ姉は棺のあの器の事言ってたのか。ロピアルズ(、、、、、)しか知らないもんね。大丈夫だよ。ここにいるから」


 そういって懐から小さな小瓶を取り出す。

 その瓶の中には何やら光の塊のような物が入っており、光の塊は外に出ようと瓶を叩いているように見える。


「そ、それって……何……?」

「これはね……。簡単にいうと魂なんだよね♪」

「た、魂!?」


 それってなんだかオカルト的な……。

 でも待って! 魂を扱う魔法なんて聞いたこと無い……。


「あっと。これはロピアルズ最大秘密裏の事だから口外無用ね。言ったらきっと悲しいことになると思うから」


 背中に汗が流れ始めるのをなんとか押しとどめ、続きを聞く。


「で、でもなんで魂なんか取る必要が……」

「それは簡単な話。ロピアルズ警察会では有罪になった囚人の懲役の仕方が三つあるの」


 そういいながらユウは「ここにいるのは危ないから歩きながら話そ」と言って歩き出す。

 ウチもそれについて行く。そしてなんとなく思ったことを口にする。


「ユウちゃんは、ロピアルズに関係が?」

「う~ん。マナ姉ならいいかな。あるよ。って言うかロピアルズ警察会を動かしてるシーヘル・ツヴァイさんの直属で動いてるの」

「え!? シーヘル直属!?」


 ロピアルズ警察会は、【双竜の右翼】シーヘル・ツヴァイと言われている者が指揮者だと言われている。妻の【双竜の左翼】リーナ・ツヴァイとのコンビネーションがロピアルズ警察会、最強の異名を持つ男だ。


 その人の直属で動いているって……。とそこまで考えたところで先ほどの戦いを顧みる。

 先ほどの戦いは、もはや戦いではない。一方的な攻撃だ。棺は手足も出なかった。

 初めて見た時にあれほどの傷があり、血が流れていたけど今ではすっかり治っており、傷さえもなかった。


「ユウがロピアルズ警察会の人って信じてもらえた?」

「う、うん……」


 完全に信ずることはできそうにないが、昔、ユウちゃんはあまり嘘が得意ではない事を思い出して、反射的に答えた。


 ロピアルズ……。


 この国最強の企業の人員の一人がまさかこんなにも近い関係の中にいるとは……。


「ユウがロピアルズ警察会の人って信じてもらえた?」

「う、うん……」


 完全に信ずることはできそうにないが、昔、ユウはあまり嘘が得意ではない事を思い出して、反射的に答えた。

 ……何か大事なことを忘れている気がする……。ユウがロピアルズ警察会のシーヘル直属だとして、何かを忘れているような……。ユウだけじゃない。もう一人、身近にロピアルズ関連の人がいるような気が……。


「そっか。じゃあ三つを説明するね。じゃないとユウがまるで人殺しみたいな事言われちゃうしね♪」


 そうしているとユウが喋り始めたので考えを中断した。

 そしてユウの言葉に、実際そうなのではないだろうかと、心の中で思っても絶対に口には出さないし、顔にも出さない。

 ロピアルズと聞いていろいろ出すわけにはいかないだろう。最強と同時に謎の多い企業でもあるのだから。


「まず一つ目」


 考えているウチの脳内を無視して(実際覗かれていたら嫌だが)、ユウちゃんは喋り始める。


「一番軽い処罰のなんだけど、器はそのままで、警察会の仕事をベテランをお目付け役として手伝ってもらう」

「そ、それだけ?」


 いくらなんでも軽くはないだろうか?

 そしてまた器って……。


「一番軽いのだしね。でもちゃんと指導とか、いろいろやるよ。それは、どの処罰でも一緒。二つ目ね」


 早くも二つ目ね……。


「これはちょっと辛いぐらいかな。本来の器から、偽の器に魂を宿して……」

「ちょ、ちょっと待って! 何!? 本来の器とか偽の器とか!」


 器、器言うけどやっぱり意味がわからない。しっかりした説明を受けていない。


「ん~と。簡単にいえば体の事だよ。死ぬまで一緒なハズの体の事をロピアルズでは器って言ってる。簡単でしょ?」


 それってつまり……。


「魂の無い体もロピアルズは持ってるってこと?」

「正確にはアンドロイドかな。でも、人間と約九九%同じように作られてるから人間と言ってもいいかな」

「確かに。アンドロイド……つまり機械な訳だが、人間のように食べなくては空腹で死んでしまうし、斬られれば、血が出て死んでしまう。人間がそんな機械を作れるとは思いもよらなかった」


 エングスはユウの後ろを歩かずに浮遊してついてきている。

 人間のように作れる技術なんてあったのか……と思いながらもロピアルズならできそうな事がと心のどこかでは感じていた。


「これで器の事はわかった?」

「うん。なんとなく……」

「それじゃあ続けるよ? 偽の器に魂を映した後は同じように仕事を手伝ってもらうだけ。でも自由行動はちょっと制限されてるね」


 と言うことは、三つ目は……。


「三つ目も同じように仕事を手伝ってもらうんだけど……。これまでと違うところは、まず無期。ずっと仕事を手伝ってもらう。もう一つは……。もう二度と本来の器に戻れない」


 そう聞いた時、ウチは今さっきの棺を思い出す。

 彼は体を灰にされた。あれではもう、元通りにはならないだろう。


「いたぞ! こっちだ!」

「ボスからの命令だ! 殺せ!」


 何人かの衛兵が出てくる。


「ま、そんな感じで話は終わり。エン。行くよ?」

「承知」


 剣にしたエングスを手に持って構えるユウ。

 ウチは魔力も無くて、何もできない。ただの邪魔でしかないだろう……。


「マナ姉。集合場所は?」

「え? あ、えっと……社長室の前って聞いてるけど、まずキリを助けに行かないと……。まだ生き残ってるって思いたいけど、相手はあの【雷豪】だから……」

「りょうか~い♪ 案内よろしくね」

「わ、わかった」


 案内を開始する、と同時にロピアルズの処罰に関する事を考えていた。一番軽い処罰は、とても軽いのだが、一番重い処罰は、かなり重いと思う反面。

 仕事を犯罪者に手伝わせてもいいのだろうか? とも思った……。

 ベテランが付いていると思っていても、どうしても不満が残る。だって、一番重い処罰は……、



 ――ロピアルズに所属させる……と言うことなのだから……。


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