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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第八章 ジーダス攻略戦・後半
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稲妻



 弦は右腕を引き、魔力を溜める。奴も見たところ武装型だから近距離の魔法だろう。

 ならば、それには答えてやる。

 右の拳に魔力を溜める。だが半端な魔法では軽く打ち返されるだろう。さらに魔力を溜め、そして――


「〈雷迅〉ユニオン〈雷剛拳〉、〈轟崩拳〉!」

「〈光雷掌〉!」


 ドゴォォォォォン!!!! 二つの雷がぶつかり合う。

 どちらも一歩も引かない初撃は見事につり合い、その場に静止する。

 その間にマナは横を抜けてスピードを上げて飛んでいく。


「これが狙いか……なら、〈雷火掌〉!」


 マナがとおり抜けて行くのに掌底を俺に向かって放つ。


(なるほどな……)


 何を考えてなのか悟った俺は、いっそう魔力を溜める。


「ここで打ち合えばマナんとこに行けねぇな? オラァァ!!」

「――ッ!?」


 俺に向かう掌底を真正面から迎え撃った――パァァァァンッ!!

 再び雷がぶつかり合うが、今度は、俺の拳が弦の掌底を弾きとばし、続けざまに弦に回し蹴りを放つ。


「グゥッ」


 腹の中心部に当たって蹴り飛ばされた弦は、ドンッと背中から壁にぶつかる。

 弦を突き飛ばしたことに、これでもっと時間が稼げる事を安堵するが、それどころではなくなった――ボウッ


「熱ッ、火か!?」


 弦の放った〈雷火掌〉は手の内の別の雷がぶつかった物に雷のダメージを与えると同時にぶつかった物を燃やす事も出来る魔法らしい。

 雷だけなら自分も雷でダメージは無く、物理的ダメージだけで済むが火が追加されたことによりダメージが上乗せされる。

 雷を纏わせ、火を消す。


 だが、弦との打ち合いで勝ったことによる成果はあったし、これくらいのダメージならば問題ないとして、解決する。

 先ほどより強い掌底を放つ事はできただろうが、奴は威力を落とした。


「ま、まさか……二回連続で打ち合おうとした奴は初めてだ……」

「だろうなぁ。じゃなかったら威力を下げる意味はねぇ。大方、俺が避けたと同時に雷に物を言わせてマナを殺してただろう?」

「……気づいていたか……」

「同じ雷属性だ。そんくらいのことは気づかずにしてどうする?」


 今の打ち合いでお互いの場所が入れ変わっている。

 つまり、後ろがユウへの通路で、弦の後ろの通路が戻る事の出来る通路だ。

 打ち終わった後にユウへの通路をチラ見したが、もうマナの姿は見えない。後は弦を足止めするだけだが……。



 ――無論、足止めで終わらせるつもりはない。



「おらこいよ。俺がここでリタイアさせてやるよ」

「図にのるなよガキが」


 弦からの殺気が絶え間なく襲う。

 だがそれがどうしたというように平然と立つ。

 これで弦の目標は俺に絞られたな……。マナのところに行く可能性はほとんどなくなった。

 まぁ、ここで倒しちまうから関係ねぇけどな。


「〈雷火掌〉」


 弦が先ほどと同じ魔法を紡ぐ。

 だがさっきとは魔力の入れが違い、強くなっているのがわかる。

 俺は頭を掻きながら一言。


「これ以上火傷は負いたくねぇな……」


 ため息交じりに言った。

 雷で消せばいい話であるが、実は俺、熱いのは苦手だったりする。


「ならどうする? 逃げるのか? そしたら俺はあの女を殺しに行くぞ?」

「逃げねぇし殺させねぇ」


 腕を下ろし、口元を緩ませる。とっておきの一つを使うため、〈雷迅〉にさらに魔力を込める。

 リクとの時は使わなかった。

 正直、なめていたし、使わなくても十分、追いつけた(、、、、、)

 いや、むしろ〈雷迅〉を使い始めたら簡単に追い抜くことができた。

 あんまり、知られたくないので、リクには『これがトップスピードだ』と言ってしまったが……。

 有象無象に魔力を吸い込み続ける〈雷迅〉の覆っていた黄色い雷はいつしか蒼白く、バチバチと音も鳴らず、ジジジ……と低い音で唸り始める。


「もう当たらねぇ。これだけで決着がつけれるとは思えねぇけどな……今の俺の本気でやってやる」


 先ほどまでの〈雷迅〉とは似ても似つかない。

 当たり前か……。

 入れる属性を変えたのだから。

 その変わってしまった〈雷迅〉に弦は驚きを隠せなかった。


「お、お前……その魔法の属性……稲妻(、、)か!?」

「ああ。それがどうした?」


 稲妻属性……。

 雷系統の最終属性……。

 その扱いは非常に困難で、少しでも間違えば死に至る属性。


「……それなりに名の通った二つ名か?」

「いや、むしろ親がそうだな」

「……名は?」

「俺の名字でわかんなかったのかよ」

「名字? ……仙道!! 親は幸理か!?」


 声を荒上げる弦は、お人好しなオヤジの名をあてる。それによって怯む弦に「クハハ」と笑いを堪えられなかった。

 なぜなら、ほとんど脅しだ。

 確かに〈雷迅〉では稲妻属性が使えるが、他の魔法では使えない。使おうとして痛い目にあったことが何度もある。他の人が見れば奇跡が続いたと言うだろうが……。

 後は、親があのお人好しのオヤジだとしても俺はオヤジじゃない。


 まぁ〈雷迅〉とユニオンは教えてもらったけどな。

 ちなみに『ユニオン』とは隔合とほとんど同じ意味だ。

 だが、ユニオンが使えるのは限られてる。

 魔法と魔法を合わせるだけの構築を脳内で作ることが重要。それだけの想像力と創造力、魔法と魔法の相性などいろいろあるからだ。

 後は稲妻属性だが……。

 どんな感じで使っていたのか、話でよく聞いていた。〈雷迅〉だけだが、稲妻属性が使えるようになったのは中三の時だ。それまでは〈雷迅〉でもかなりの痛手を負っている。


「話はもういいよなぁ?」

「……それだけの強さを持つならば……俺も本気を出さないとな……〈雷炎豪火〉」


 弦の体が火と雷に包まれる。


「……ま、マジかよ……」


 これでは殴る前に俺の手が焼けちまう。

 げんなりする俺。これでは稲妻属性を出した意味がない。

 まぁ――


「行くぞ少年。幸理の子供ならばこれくらい造作もないだろう?」

「……そうだな。俺も、テメェを遠慮なく殴れるぜ。〈雷迅〉ユニオン〈雷剛拳〉、〈轟崩拳〉」


 ――そんな事情なんて関係ねぇか。


 ゆっくりと歩き出し、段々と速度を上げていく。

 その速度はすでに雷の速度になり、轟音が鳴り響いて弦にせまる。

 弦はゆっくり腕を振り上げる。

 俺も拳を握りしめ――



 ――同時に振るった。


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