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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第八章 ジーダス攻略戦・後半
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……最悪

リク→レナ→キリという順番で視点が変わります。



 ボクは部屋に入ると、そこがどんな部屋なのか気づいたと同時に儀式陣の真ん中に倒れているルナを見かけて急いで近づいて抱き寄せる。


「ルナ! 目を覚まして!! ルナ!!」


 何度か揺するが、ルナは一向に目を覚ます気配がない。


『りく。『ヘカテ』はまりょくぎれでいしきがないだけだから――』

「じゃあボクの中にあるルナの魔力を全部渡せばいいんだね!?」

『う、うん……』


 ボクは先ほどから強く感じるルナの魔力を手から出すようなイメージをして、ルナに魔力を送ると強く思う。

 すると手から光の束が出てきて、ルナの体を包み込んだ。


「な、なんだ……これは……」

「私にもわかりませんよ。……と、亮さんには後でソウナさんのいる部屋まで案内してもらいますから。地下での壁を開けるのは、幹部が最適ですから。万が一の事があるかもしれないので、これは付けておいてくださいね」

「これはッ!? お前……まさか……!」


 光の束がルナの覆い続ける後ろで、雁也はある物を亮に付けていた。


「う……」


 光の束がおさまってくると、ルナの呻き声が聞こえ、目が薄く開いたかと思うと、段々と意識を取り戻し、言葉を発することができた。


「ここは……どこじゃ……?」

「ルナ!!」


 完全に意識が戻ったことを知ると、ボクはルナを強く抱きしめた。


「く、苦しいぞ……リク……」

「あははは……ごめん」

「いや、別によいのじゃ。……目が覚めたのじゃな……よかった……」


 急に脱力するルナを見て、ボクのせいでルナが心配してしまった事を知る。


「これは呪いなんかじゃないんだ。契約していない神、シラが聖地にいたからボクに影響があっただけなんだ」


 涙を流しつつもルナにルナ自身の呪いで無いと伝える。


「聖地……じゃと……? ……契約していない神が初めからいることなどありえるのか……?」


 ルナが気になって考え込もうとしているところ悪いんだけど、まだ、ソウナや、ユウが残ってる。


「ルナ……」

「?」

「ボクの刀になってくれないかな……?」

「当たり前じゃ。ただ……その……」

「? どうしたの?」


 口ごもったルナは、なかなか言い出しそうに無かったのでボクがルナより先に言いたい事を言う。


「ごめんねルナ。一人で行かせちゃったから……」

「そ、そんなことは無いぞ!? 妾が魔力切れなど――」

「だから一人で行かせてごめんねって」

「そ、そんなことは……。り、リクは悪くないであろう!?」

『はいはい。ふたりともあやまったのですからそれでいいでしょう?』


 シラに横槍を入れられたが、ルナは「じゃ、じゃが……」と続けたけどシラにさらに黙らせられたので「そ、それでよい」と断念した。

 ボクも引けなかったけど、シラにやっぱり黙らせられたので「それでいっか」と断念した。


『ふたりともききわけがわるいです』

「「…………」」


 どうやって黙らせられたのがはちょっと伏せておきたいです。

 ボクはルナに刀になってもらう。

 ここでの用はもう無いので、雁也のいる場所に向かった。

 二人は口を開けていて、ちょっと面白い顔になっていた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ええっと、こちらでよろしいんですの?」

『ああ。あと扉の前には何人か衛兵が居るみたいだからリクちゃん達が着くまで待っていてくれ』

「……気づかれなかったら入ってもいい?」

『いいけど……多分無理だと思うよ?』

「……どうして?」

「簡単ですわ。扉の目の前に衛兵がいて、しかも扉までの距離が少しはあって隠れれるようなところがないからですわ。違くて?」


 得意げに言うと、デルタが『ああ、そうだよ』という声が聞こえる。

 白夜は「……そう」と相変わらず無表情で答えるだけだった。


「そういえばデルタさん。もう一つの部隊……と言っても二人ですが、大丈夫ですの? いくらルナさんの身体強化魔法がかけられてあるとしても……」

『……まずいな……』

「どうしてですの?」

「……何かあった? ……見つかった?」


 危険と知らされ、即座に状況を知るため、足を一度止めて聞く。

 すると最悪な情報を知らされた。


『幹部が待ち伏せしてやがった……。しかもジーダスの最高実力者のトップ(ツー)の【雷豪】だ……』

「なんですって!?」

「……大変」


 苛立ちを入れるデルタの言葉に出てきた【雷豪】の名が出ると同時に驚いてつい声を上げた。

 幸い、近くに敵やカメラが無かったので誰にも気づかれなかったと思う。白夜は相変わらず無表情で、他人事のように聞き流す。



 ――まるで興味が無いと言った風だ。



 キリ、マナの二人の部隊が勝つことを見越してなのか、はたまた、本当に興味が無いのか、わたくしは前者の一択だろうなと思う。

 そう思いたかった。


 なぜ後者が出てきたのかと言うと、彼女はジーダスに着いてからというもの、いつもの無表情だった。

 だが、無表情なのはまだ良いだろう。感情を表情に出せない人はいると理由が付けられる。


 その理由を持ってしても彼女の様子はおかしい。

 初めての戦地に身を投じれば誰だって緊張で動きは鈍るし、言葉も少し焦ったりするのがわかるだろう。

 いい例としてマナだろう。ジーダスに侵入してから語尾が伸びておらず(少なくともわたくし達といた間)、緊張しているのが見て取れた。彼女にそんな様子を見たことが無い。

 戦地が初めてではないのだろうか?

 だとしたら彼女はどんな生活を送ってきていたのだろうか?

 とても辛い過去でもあったのだろうか?

 一体、彼女の過去には何があったのかどうか……?

 わたくしも知らない彼女の事を理解したいと思ったときに、白夜がわたくしの視線に気づく。


「……どうかしたの? レナ」

「い、いえ。なんでもないですわ」


 白夜の言葉に、適当に返して少し慌てて横を向く。


「…………?」


 首を傾げる白夜だが、わたくしは知らないと言った風に前に進んでいった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 レナと白夜が扉のすぐ近くまで行く数分前。


「……最悪……」

「俺はそうでもねぇな。戦いたかったしなぁ」

「それホントに言ってる?」

「……ンな訳ねぇだろ。悪いがさすがにここまで力差がありそうな奴とは戦いたかねぇ」

「随分と好き放題言ってくれるな」


 マナと俺の前にさっき会った二人組と同じような服装の男。

 違うところと言えば腕のところに黄色の腕輪が付けられているぐらいか。


「だが、その様子からだとこの俺の事は知っているみたいだな」

「当たり前だろ? ジーダス幹部、最高実力者トップ(ツー)の【雷豪】さんよぉ」


 ニタァと口元を曲げて、笑みをあらかさまに見せつけるようにして少しずつ近づく【雷豪】。

 冗談抜きにこの男は強い。

 英名持ち程の実力者に近いものならば軽くひねられるかもしれないが、英名持ち程の実力者でない者ならば、強い部類に入るのだ。


「お前たちの狙いはこの先にいる女だろう?」

「ハッ。どうだかなぁ?」

「いやいやいや。どう考えてもバレてるって」


 マナが曖昧な言葉を新明にする。男が魔力を解放して武器を喚び出す……いや、俺と似た、雷を体全身に纏う。幹部のコートは脱いで壁際に捨てていた。


「チッ。やる気満々かよ……。仕方ねぇ」


 パンッと右手を左手に打ちつけて、あらかじめ魔力解放と呪文を紡いでいたので、雷は俺の両腕両脚を覆った。


「俺と同じ系統か……。だが、なぜ全身に纏わない?」

「別にいいだろ? 俺の勝手だ。〈雷迅〉」


 加速効果のある魔法を唱える。

 キリの周りを電気がバチバチと舞う。


「マナ……」

「なに?」


 マナは〝ファイアーバード〟を喚び、戦闘準備万全だが……。


「先に行け」

「え?」


 マナが聞き取れなかったというようにこちらを見る。


「俺が奴をここで足止めするからお前は先に行ってリクの妹を解放しろ。もう近いだろ?」

「でも……そんなことしたらあんたは!?」

『キリ。それは俺でも許さんぞ?』


 耳のインカムからデルタの声がする。


「うっせぇな。何勘違いしてんだよ」

「え?」

『勘違いだと……?』


 二人とも意味がわからないと言った風な様子に「はぁ」とため息をつく。


「俺は足止め(、、、)するっつったんだよ。リクの妹が【朱】ならとてつもねぇ戦力になんだろ?」

「……【朱】?」


 【雷豪】が【朱】に反応して眉を寄せる。

 やべぇ、しくじったな。

 【朱】という二つ名から、『朱の魔人』が出てきたら厄介だ。絶対に通らせてくれねぇ。


「とにかく、俺は死なねぇ程度にやるからリクの妹、解放して来い」

「そ、そうだね……それなら……」


 マナは納得してくれた。この状況、どう考えても逃げられねぇからな。だが……。


『…………』


 デルタは【雷豪】の実力を重々承知しているため、そう易々と許可を出せない。まぁ、


「ほら早く行けよ」

「わ、わかった。力を貸して、ファイアーバード! 〈炎翼〉!」


 デルタの許可が無くたって行かせるけどな。

 マナの背中に炎の翼が顕現する。〈炎翼〉は炎でできているが、空も飛ぶことができ、走るより飛んだ方がマナにとってかなり速いのだ。


『!? 何勝手に動いて――』

「帰ったら説教でも何でも聞いてやるよ」


 そしてデルタの言葉を遮り、インカムを取って壁際に捨てた。

 体全身に力を入れる。


「援護する。おまえはちゃんと走りぬけろよ?」

「う、うん」


 その言葉を聞くと、さっきから暇そうにしていた【雷豪】に向かって走り出す。

 マナも続いて、翼をはばたかせ、【雷豪】の先の通路を見据えて飛んで行く。


「【雷豪】久詩那(くしな)(げん)。相手が子供だろうと容赦はせん!!」

「誰が子供だ!! 俺は【一匹狼】仙道桐!! テメェのそのツラ、潰れても知らねぇからなぁ!!」



 雷同士の戦いが、幕を開けた。


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