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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第八章 ジーダス攻略戦・後半
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 Intermission 武藤アキ



 深夜の路上。私、武藤アキは従姉妹のハナと深夜のネタ集めに没頭していた。

 なぜって? そんなの! 今週の新聞のネタがピンチなほど無いからに決まってるじゃないの!! と涙目で誰にともなく訴えていると……ヒュンッ。

 頭上をかなりの速度で飛んで行った白い光。


「? 今のって……リクちゃん?」

「リクちゃん? どこなのねどこなのね!」


 周りを見渡すハナを置いて、私は目の前を走り去って消えていった白い光を目で追い続ける。

 今はもう見えないけど確かに白銀色の髪をした女の子が走っていったのが見えた。

 私の目は伊達じゃない。これでも【情報師】を名乗っているのだ。


 この速さなら目でギリギリ追える。

 そう、ギリギリ。


(今のはちょっとした魔力完全開放? でもちょっと違う。ただの魔法かな? でもリクちゃんがこの短期間に? ……まぁでも……)


 先程から微かに聞こえる魔法が炸裂する音。これは……、


「スクープよ!! ハナ!! すぐに音のする方に向かうわよ!!」

「えぇ!? 今日はもう眠いのね!」

「そんなの吹き飛ばしてしまえ!!」

「了解なのね!!」


 元気にそう言って音のする方に向かって走り出す。私の頭の中の地図が正しければあっちの方向にはジーダス本部があるはず!!

 ジーダス本部にリクがなんの関係があるかはわからないが、とにかく行って見るに限る!!

 そしてあわよくば新聞に載せれるネタを取る!!


「今週の『文刊新聞』か『秋新聞~季節じゃないよ!~』の記事にしよ!! そうときまれば猛ダッシュよ!!」

「猛ダッシュなのね!!」


 魔力も開放せずに猛ダッシュ。普通は無理だろう速度に私は到達する。

 自慢じゃないが、情報に関して、現地まで行くスピードは誰にも追いつけないと言われるほどだ。そんな私の足に付いて来れるのはハナだけだ。

 元気に付いてくる姿は妹そのもの。だけど今現在は私の立派な助手だ。

 立派な助手としての力はかなりの物だ。大人になっても私の良い助手でいてもらいたい。なんて言ったらフラグだよね!

 多分それは無理だけど。ハナの将来の夢は新聞を作ることではなく、農園を作ることだ。

 自然(ネイチャー)で、その上、彼女の魔法ならば納得できるし天職だろう。だから止めるつもりはない。


 流れゆく街並みを見ながら、少し不思議に思うことがあった。

 近づくにつれてこれだけの爆発音が届いているにも関わらず、街のみんなは特に気にした風もなく明かりも付かづ、暗いままの街並みだ。


(これだけの音が鳴ってればいつものように野次馬ができてもいいころなのに……。それともみんなもう行っちゃったのかな?)


 逆に気にしないような人ばかりなのかもしれない。


 そうこう考えていると、ジーダス本部に付いた。

 やはりと言うべきか、既に何人か先客がいたので私は何人かに聞き込み調査をした。


「ここで何が?」

「なんだかジーダスが襲われているみたいなのよ」

「そうそう。でも襲われているというよりも裏切りみたいなのよ? 一体何が起こってるのかしらね~」


 ふむふむ。


「そういえば貴女見たことがあるわ。武藤新聞屋の店長さんでしょ?」

「え? あ、はい。よく知ってますね」

「当たり前よ。貴女みたいな子、なかなかいないもの」

「え? この子が武藤新聞屋の? いつも面白い記事を読ませて貰ってるわ~。来週もよろしくね?」

「ええ! 期待しててください! 私がちょちょいと面白くして見ますから!」


 そう言って別れる一人目と二人目。


「ここで何が?」

「裏切りみたいなのよ。なんだか正面から攻撃されてるみたいで……。そういえばあんた、武藤新聞屋の?」


 ここにも私の事がわかる人がいたのか。


「ええ、そうですよ! 現在聞き込み調査中です!」

「へぇ。がんばってんなぁ。来週も楽しみにして待ってるからな!」

「は~い! 楽しみにしててくださいね!」


 さてはて……三人目のおえて、私はどんどん聞き込みを続けて行った。

 そして誰もが裏切りと言う言葉を口にしていた。

 言っておくがここでは今のおばさんたちの言葉はこの国でなければ、笑い話で終わる。それがヒスティマなのだから。

 他の国で起こったことなら、ここに来ている人たちはすべて冷やかしな人たちになるだろう。ジーダスがここで終わってもなんともない。あ、そう。という笑い話で終わる。

 他にも、両社の企業での力の戦いで、負けた側の企業は弱かったんだで終わる。


 しかしこの国は違う。ロピアルズに守られているこの国は裏切りなど最低な行為。人殺しなど言語道断。だからロピアルズがもうすでに動いる可能性がある。


 しかし、どうしてなんだろう。この国以外、なぜこんな世界になったんだろうか?

 私の祖母の祖母の祖母など、悪魔の襲来が来る年号より前の人の話だと世界中が裏切りなんて最低な行為で、笑い話ではおわるような話ではなかった。

 他の国から、この国の学校。特に桜花魔法学校に入学できる人はすべて根は優しい人たちばかり。他の国の学校は違う。

 感情を捨てろ、という学校だって当たり前にある。命を捨てろ、と言う学校が普通にあるのだ。


 だから……この国に生まれてきた者達。この国の学校は他の国の学校からは甘く見られているが、この国だからこそ、人としても情を持っている物だと私は思う。

 そのあとも私は情報収集をして、まとめたものと、なぜそれにリクが関わっているのかなんとなくわかった。


 ズバリ!!

 聞いた限りの真相は、桜花魔法学校の有名な大先輩である天童雑賀が裏切ったからよ!!

 義兄である天童雑賀が裏切ったからリクもそれに巻き込まれたんだわ!!

 どう!?

 あってるでしょ!?


「アキ? どこに指を指してるのね?」

「べ、別にどこでもいいでしょ」


 とにかく、そんな感じにも捉えられるけど……。はたしてそれが真相なんだろうか?


 と言うことろで、一風変わった姿の人を見かけた。

 どう考えても野次馬ではない。そんな雰囲気を醸し出している男だ。こんな季節にフートコートを着ている。背の高さ的に男って決めちゃったけど……、あってるよね?


「すみません。ここで何が起きているのか聞きまわっているのですが、何か知っていることはあります?」

「…………」


 聞いてみたがまる無視されてしまった。だけど根気良くが私のモットーの一つ! こんなのでくじけてたまるもんですか!


「あの……。聞いていますか?」

「…………」


 この男は思いっきり無視を決め込んでいるかのようにして目の前のジーダス本部を見ている。


「聞いていますか?」


 さすがに痺れが切れそうなんですが……と思った矢先。




「……ムスメよ。ワレがミえているのか?」




 唐突に口が開いた。

 え? 何? 幽霊的な類の物!?


「えっと……普通に見えているって言うか、なんていうか……」


 私、声をかけちゃいけない物に声かけちゃった!? なぁんてね。初めから雰囲気が違うと思って聞いたのだ。残念ながらこのアキ様に怖気ろと言うことは無理な話よ!


「そうか。ミえているのか」


 そう答えた男はこちらを振り向く。


「――ッ」


 息をのんだ。どうしてか? 決まっている。なぜならこの男は……。


「スコしはミコみがあるが、まだまだミジュクモノだな」


 顔が無い。顔があるべきところは黒い炎になっていて、実体が無いようにも見える。触ってみても多分、触ることはできずに炎で焼き尽くされるような錯覚を覚える。


「どうした。ワレにナニかヨウではナいのか?」

「い、いやぁ」


 どうする……。多分、この男(?)は人間じゃない。人語を喋れるってことはおそらく高等な精霊。だけどそんな精霊が単独で行動? 聞いたこともない。


 聞くか聞かないか……。


「えっと……」

「どうした。ナニかイってみよ」


 もう、どうにでもなっちゃえ!!


「貴女は……何者なんですか?」

「…………」




 言っちゃったぁぁぁぁぁぁっっっ!!!! どうしよう! こんなので殺されちゃったらマジで勘弁だけど、でも今しか言うようなチャンスは無かったし! ああ、もうどうしたらどう……。




 と頭の中で混乱する。そうしていると男が口を開いた。





「ワレは守護十二剣士(、、、、、、)がヒトリ。ワがナはワレをタオしたモノのみキけるゲンメイ。シソのハジまり、〝雷光の姫君(始祖の愛し子)〟四の守り人。ヒスティマにて、すべてのホノオのコンゲンをツカサドるモノ。トう。なぜにモトめる」




 ……え? 求める?


 そう聞くと、後ろから聞きなれた声。


「アキちゃ~ん。一杯情報を集めてきたなのね!」

「え? あ、うん」


 ハナの声にチラッと目をそらした瞬間だった――ゴゥッ。


「きゃっ」


 一陣の熱い風が吹き抜けた。


「どうしたのね?」

「い、いや。なんでも……ってあれ!?」


 目を戻す。そこには先ほどの黒い炎の男がいなくなっていた。いくら探してもいない。

 キョロキョロと顔を振っている私にハナは疑問を持って聞いてくる。


「どうしたのね?」

「えっと、さっきまでここにいた男の人見てない?」

「男の人? アキちゃんはずっと一人でここにいたのね?」

「……え? た、確かに私は男の人と話してて……」

「だから誰もいなかったのね。変なアキちゃんなのね」


 でも、確かに……。

 そう思って男が立っていた地面に目を向けた時だった。


 キランッと薄く輝く何かが落ちていて、私はそれを拾い上げた。


「なんだろ……これ」


 何の素材でできているかわからない温かい石に紋章……だろうか? それが刻まれていた。剣と、盾と、国が書かれていたのだ。


 よくわからないが、なんとなくこれは放してはいけない物だと思い、ハナに気づかれないように大事に懐にしまった。

 そして私は、あの男の事も新聞には載せないでおこうと心に決めた。確実性があるものでもないし、なにしろ、私の本能が、あの男の事を関係ない者には知らせてはいけないと思ったからだった。


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