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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第七章 ジーダス攻略戦・前半
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今……なんて?



「たく……次からは気を付けろよな……」

「善処します……」


 目の前には倒れている数人の衛兵。


「き……貴様ら……既に中に他の……」

「ああ。悪いな。元はといえばお前らがこちらを見つけるからだ」


 そう言ってキリは通信機を掌の上で躍らせている。


「思いっきり言いがかりじゃな」


 ちなみに衛兵たちの持っていた通信機はオフにしてある。

 これはデルタの指示で、ジーダス側が異変を感じても雁也さんがフォローしてくれるらしい。

 助かります……。スパイ行動の事はもうバレているのにどうやってフォローするのか知りたいけど。


「と、トドメを……さしていないことを……後悔するぞ……」

「悪いけど殺しに来たんじゃねぇんだよ。助けに来たのとちょっくらジーダスを潰しに来ただけだよ。テメェらはついでだ」


 全くちょっとじゃないような気がする。

 でもなんでだろう……ウチは心臓がバクバクなってるのにキリは全く緊張していないような気がする……。

 同じ学生で年代なはずなのに……。

 いつも喧嘩してるから馴れているのかな?

 でもそれだけじゃないような気がするけど……。


「助けに……? ま、まさかあの二人をか!?」

「当たり前だろ。っていうかもう黙っとけよ」


 ガッ。


「ごふぅ……」


 衛兵は遠慮なしに振り落とされたキリの蹴りにより気絶してしまった。


「キリ。喋りすぎじゃ。もう少し口を(つつし)まぬか」

「ああ、俺もそう思った。わりぃな。デルタ。この転送装置を使えばそっちで捕まえれんのか?」


 そう言って事前に配られていた卵のような形の機械を取り出した。


『そうだ。大丈夫。ちゃんと起動してくれるさ。ちゃんと起動するかどうか実証済みだしな。使い方は教えたな?』

「わかった」


 そう言ってキリはその卵型の転送装置を衛兵に押し付ける。

 すると衛兵はそのもうこれでいいよね……に吸い込まれていった。


『お。きたきた。これで完了だ。雁也からの情報だと……今のところまだバレてはいないから順調に進んでいけ』

「了解」


 そしてウチたちは扉を開けて、廊下を突き進む。



 ――ハズだった。



「おいおい。まさかこんなとこに侵入者かよ」

「ゲイザー。油断するな。ガキでも儀式で強化された衛兵数人を一瞬で倒した強者だ」

「へ! わかってるよ」


 扉を開けた先には男が二人、同じような服装で立っている。

 一人はポケットに手を突っ込んでいて、もう一人はマスクをつけていて顔が見えない。


「どうして……? バレてないって……」

「チッ。向こうはしくったか?」


 キリは舌打ちをする。

 ウチはなぜこの男の人たちがこちらの事を知ったのか気になったが、戦闘になると思ったので言葉を紡ぎ、精霊を喚ぶ。

 キリはまだ喚んでいないが、ルナは構える。

 なんでだろ……。向こうは見つかっていないのにこっちばかり見つかるのは……運なのかな……?


「しかしこっちばかり見つかるとか……」

「こっち? まるで他にもいるような言い方だな」


 ちなみにキリが言った『こっち』とはおそらくもう一つの救出部隊のことをさしているだろう。


「どうやって俺たちのことを知った?」

「そんなもん。勘に決まってんだろ?」

「正確には偶然だ」

「はぁ?」


 キリは口を開けて意味がわからないといったふうに睨んだ。

 そうしてからマスクをつけていない方の男のが頭をポリポリと書きながらめんどくさそうに言った。


「あのなぁ。幹部(、、)はボスから命令が来てないから自由に行動してんだよ。だから俺たちがここに来たのはただの偶然だ」

「そうだな。そして俺たちが来た時にちょうど貴様らも来たということだ」


 ……おかしい。だって監視カメラはデルタの方にも映像が言ってるからこっちに来ていたらデルタが気づいているはず。そのデルタさんが気づかなかった? どういうこと?

 確認にしなきゃ……ってちょっと待って。


 気づく。

 今……こいつら――


「幹部……だと?」


 キリが睨みを効かせて言った。

 すると男二人は口元を緩ませる。マスクをしている方は口元の端が見えたのでにやけさせているとわかった。




「【弐乱の拳】ゲイザー・ハモンド。ジーダス幹部の一人」

「【水流心】廉兵(れんぺい)(あきら)。ジーダス幹部の一人」




 幹部……。ウチたちが勝てるはずない……。

 相手は大人。こっちは子供。


「ど、どうしよう……」


 目でわかるほど不安をあらわにする。

 経験の差が違うのだ。

 いくらルナの身体強化魔法があったとしても、戦闘経験が違えば……。


「お前ら先いけ」

「え?」


 キリが前にでる。


「いいからいけよ。俺がここに来たのは助けるためだけじゃねぇ。強者にも会いに来てんだ」


 その顔は喜々としていて、目の前のことしか考えていなさそう……。

 キリ……他にも目的があったなんて……。

 しかも相手は大人なんだよ!? ウチたちはまだ……。


「へぇ。お前血気盛んだな。面白そうだ」


 そう言ってあらかじめ喚んであったのか、本人と同じ魔力を感じる革に鉄のついたグローブをはめる。


「後悔するがいい」


 こちらも用意してあったのか、男の周りに本人と同じような魔力を感じた。

 そしてこのことから亮と名乗った男は自然(ネイチャー)の事を知る。

 ダメ! いくら一学年で最強の方でも大人二人なんかに勝てるはずがない!!


「ダメだよ! 相手は大人で幹部なんだよ!?」

「だから?」


 パァンッ。口元を緩ませ、拳を打ち付ける。


装備(イクウェンメント)自然(ネイチャー)か。いいぜ。こ――」


 言葉はそこまでだった。


「このバカ者!!」




 スパァァン! と音を立てて、その場に沈黙が舞い降りた。




「イッテ! 何すんだよ! ルナ!」


 いつの間にかキリに後ろにいたルナの手によって引き戻されるキリ。

 さっきの音は光っているハリセンを叩きつけた音だ。

 おそらく魔法で作ったハリセンだろう。魔法だからハリセンと違って痛さが半端ないと……。


「キリはまだ先に進むがよい。先に行くには必要な人材じゃ」

「はぁ?」

「キリはまだ先に進んだほうがよいと言っておるんじゃ。まだ先に強者がいないこともないじゃろ?」

「お前俺から取ろうってんのか?」

「そうではない。キリにはもっと先に進んで欲しいのじゃ」

「じゃあこいつらはどうすんだよ」


 ルナがキリより一歩前に出る。


「妾がやろう。こやつら二人ならば妾がやれば勝率(、、)は上がるというものじゃ」

「テメッ! 俺が力不足とでも言うのか!?」

「そうではない。キリには体調万全で先に進んで欲しいんじゃ。時間もない。話はこれで終了じゃ」


 ルナがさらに一歩前に出る。


『ちょ、おい! そこはカメラが!!』

「大丈夫じゃ。妾は神霊。人工物に妾はうつ――」



 ビィー ビィー ビィー


『侵入者。侵入者。T‐3通路に金の髪の女。T‐3通路に金の髪の女』



 赤い光と音が鳴り響く。


「「…………」」

「……うむ?」

「あ~あ」

「ふん」


 ……え?

 人工物に……なんて……?

 そこでルナはハッとしたように顔を驚かせる。


「そうじゃった! 妾、主から離れておるから今は人間と同じように人工物にも見えるんじゃった!!」

「はぁ!?」

「今更!?」


 意味がわからないけどもっと早く気づい――、


『続いて赤い髪の女、黒髪の男、二名も確認』

「え!?」

「おいおい……」


 カメラを見る。

 思いっきりこちらを見ている。


『さすがに今カメラを動かしたら俺と雁也の事までバレる』


 インカムからここのカメラの援護不可の言葉を貰う。

 どうしよぉ~~~~!!!!


「とりあえずデルタはこれ以上二人が見つからぬように援護せい。妾はこやつらを倒してから()こう。さぁ今すぐ行け二人共」

「ごめん!」

「負けたらテメェ承知しねぇぞ! 俺から取ったんだからな!」


 ウチとキリは幹部の隣を通り抜け、デルタの支持を仰ぎつつ先に進んだ。

 見つかってしまったものは仕方がない(仕方なくないけど!!)。

 これ以上は見つからないように行かなきゃ!!



何かツッコンだりはたいたりする時に必ずハリセンが思い浮かぶ私……。

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