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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第七章 ジーダス攻略戦・前半
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 Intermission ソウナ・E・ハウスニル

ちょっと文字数少ないです。

「ごきげんよう。ソウナ・エンジェル・ハウスニル。あぁ。今は罪人、ソウナでしたね」

「……棺……。なんの用? それとなんでミドルネームを知ってるの?」


 棺……。

 ここの幹部で、ボスの命令を他の幹部に伝えたり、私みたいに捕まっている奴から情報を拷問して聞き出したりする。

 もちろん戦闘力も他の幹部に劣らない。


「ミドルネームなんて調べればいくらでもでるんだよ」

「……そう。で、なんの用?」


 ホントはわかっている。


「そればっかかね……。少しは察しようとしないのかい? 【治癒天使】、ソウナ」


 今いる場所は牢獄の中。

 当たり前だが、ひんやりとした空気で、かなり肌寒い。

 ずっとここにいると風邪ひいちゃいそう。

 普通はそんなことを考える場面では無いのだが……。で、こいつがここに来た理由だがおそらく……。


「まぁいい。明日の午前一時、おまえの魔力供給をすると、ボスから言伝を預かっている」


 やっぱり。


「……そう。早かったのね。逃げたあの子を探し出してからすると思っていたのに」

「私もそうした方がいいと思うのですがね。ボスの命令なのですよ。これには逆らえなくてねぇ」


 おそらく逆だろう。

 リクを本気で探しだしたいからこそ、私を処分(、、)するんだ。

 今まででも十分に邪魔だった私を。あいつは私を道具としか思っていない。


「そういえば、内部にいた銀髪の少女も捕まえてあげましたよ」

(ユウちゃんが!?)


 まさかこいつ……それも言うために……。つまりリクをユウを使っておびき出すんだ……。

 私がもし、あいつだったらそうする。親族を人質として、目的の人物をおびき出す。出なければ親族を殺し、出てこれば包囲、捕縛。そして……。


「逃げた奴が捕まるのは時間の問題だ。ジーダスが誇る、追撃部隊は、逃がした奴などいない」

「わからないと思うわよ? だってまる三日で何の情報もつかめていないのだから。落ちたものね、ジーダスの密偵部隊は」

「クッ! 黙れ!!」


 棺の拳が私の頭を殴る。

 激痛。でも私は声も出さずに耐える。

 どうせあと少ししか生きられないのだ。

 ならば出し惜しみする必要が無い。

 私の治癒の魔法は、魔力を回復させる事などでき無いのだから……。


「チッ。もう一人は何も話さねぇし……。ソウナ。少しでも奴の情報出せ! そうすれば命は助けてくれるそうだ」

「私が……言うとでも?」

「ああ?」


 棺は手をさっきよりも力強く握り、強く殴る。

 視界が揺れる。気持ち悪い……。

 激痛も嫌だけど気持ち悪さも嫌。

 でも耐える。激痛は今でも続いており、気持ち悪さも続いている。


 何度も殴る棺。


 それに耐えるソウナ。


 その繰り返し。

 私は何も言うつもりもないし、何も売る気もない。

 私は……そういうことしかできないから……。


 リクを巻き込んでしまった謝罪が、こういうことしかできないから……。

 こういうことしか思いつかないから……。

 私は……昔からダメダメで、人に迷惑かけてばかりだけど、ちゃんと人を助けていて、感謝の言葉が嬉しくて……。

 それなのに、もう自由が与えられないのなら……。

 私が、もう少しでこの世にいないのなら……。

 私は……ただ……ただ……願うの……。

 最後の最後まで救えなかったあの人が――



 ――あの人が……昔みたいに……笑って……。



「クソッ。まぁいい。せいぜい最後の時を過ごすんだな」


 悪態を付きながら棺は部屋の外に出て行った。

 それと入れ替わるように入ってくる何者か。

 棺は気づいていなかったようだ。真横を通ったのに……?

 ソウナは涙が滴るのを隠そうとして、手を動かすけど、鎖につながれていて拭うことができない。

 だからせめて顔を下に向けるだけだった。


「ソウナ……さんでよかったかな?」

「誰……?」


 下を向いたままだったからなのか、声からして男である彼に聞く。

 すると彼は何を思ったのか、私の顔にハンカチが当てられ、涙を拭う。


「?」


 不思議に思って、私は顔を上げると、目の前にいるのは……。


「貴女にこの優しい力を使いこなせるなら、俺は貴女にこの力を授けよう。もうすぐ来る、救いの手を取るならば、貴女に俺の力を少し分けてあげよう。使うのは、貴女の勝手だ」

「何を……?」

「おそらく、あの子が貴女を必ず助けに来るだろう。諦めるな。貴女には、まだ生きる権利がある」


 優しげな顔の男。その面影はとある誰かに似ている気がして……。


 ズドォォォォォンッ!!


「!?」


 激し音が鳴ったと同時、私の中に流れ込んでくる温かい魔力。そして、目の前にいたはずの男がいつの間にか消えていた……。


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