Intermission ソウナ・E・ハウスニル
ちょっと文字数少ないです。
「ごきげんよう。ソウナ・エンジェル・ハウスニル。あぁ。今は罪人、ソウナでしたね」
「……棺……。なんの用? それとなんでミドルネームを知ってるの?」
棺……。
ここの幹部で、ボスの命令を他の幹部に伝えたり、私みたいに捕まっている奴から情報を拷問して聞き出したりする。
もちろん戦闘力も他の幹部に劣らない。
「ミドルネームなんて調べればいくらでもでるんだよ」
「……そう。で、なんの用?」
ホントはわかっている。
「そればっかかね……。少しは察しようとしないのかい? 【治癒天使】、ソウナ」
今いる場所は牢獄の中。
当たり前だが、ひんやりとした空気で、かなり肌寒い。
ずっとここにいると風邪ひいちゃいそう。
普通はそんなことを考える場面では無いのだが……。で、こいつがここに来た理由だがおそらく……。
「まぁいい。明日の午前一時、おまえの魔力供給をすると、ボスから言伝を預かっている」
やっぱり。
「……そう。早かったのね。逃げたあの子を探し出してからすると思っていたのに」
「私もそうした方がいいと思うのですがね。ボスの命令なのですよ。これには逆らえなくてねぇ」
おそらく逆だろう。
リクを本気で探しだしたいからこそ、私を処分するんだ。
今まででも十分に邪魔だった私を。あいつは私を道具としか思っていない。
「そういえば、内部にいた銀髪の少女も捕まえてあげましたよ」
(ユウちゃんが!?)
まさかこいつ……それも言うために……。つまりリクをユウを使っておびき出すんだ……。
私がもし、あいつだったらそうする。親族を人質として、目的の人物をおびき出す。出なければ親族を殺し、出てこれば包囲、捕縛。そして……。
「逃げた奴が捕まるのは時間の問題だ。ジーダスが誇る、追撃部隊は、逃がした奴などいない」
「わからないと思うわよ? だってまる三日で何の情報もつかめていないのだから。落ちたものね、ジーダスの密偵部隊は」
「クッ! 黙れ!!」
棺の拳が私の頭を殴る。
激痛。でも私は声も出さずに耐える。
どうせあと少ししか生きられないのだ。
ならば出し惜しみする必要が無い。
私の治癒の魔法は、魔力を回復させる事などでき無いのだから……。
「チッ。もう一人は何も話さねぇし……。ソウナ。少しでも奴の情報出せ! そうすれば命は助けてくれるそうだ」
「私が……言うとでも?」
「ああ?」
棺は手をさっきよりも力強く握り、強く殴る。
視界が揺れる。気持ち悪い……。
激痛も嫌だけど気持ち悪さも嫌。
でも耐える。激痛は今でも続いており、気持ち悪さも続いている。
何度も殴る棺。
それに耐えるソウナ。
その繰り返し。
私は何も言うつもりもないし、何も売る気もない。
私は……そういうことしかできないから……。
リクを巻き込んでしまった謝罪が、こういうことしかできないから……。
こういうことしか思いつかないから……。
私は……昔からダメダメで、人に迷惑かけてばかりだけど、ちゃんと人を助けていて、感謝の言葉が嬉しくて……。
それなのに、もう自由が与えられないのなら……。
私が、もう少しでこの世にいないのなら……。
私は……ただ……ただ……願うの……。
最後の最後まで救えなかったあの人が――
――あの人が……昔みたいに……笑って……。
「クソッ。まぁいい。せいぜい最後の時を過ごすんだな」
悪態を付きながら棺は部屋の外に出て行った。
それと入れ替わるように入ってくる何者か。
棺は気づいていなかったようだ。真横を通ったのに……?
ソウナは涙が滴るのを隠そうとして、手を動かすけど、鎖につながれていて拭うことができない。
だからせめて顔を下に向けるだけだった。
「ソウナ……さんでよかったかな?」
「誰……?」
下を向いたままだったからなのか、声からして男である彼に聞く。
すると彼は何を思ったのか、私の顔にハンカチが当てられ、涙を拭う。
「?」
不思議に思って、私は顔を上げると、目の前にいるのは……。
「貴女にこの優しい力を使いこなせるなら、俺は貴女にこの力を授けよう。もうすぐ来る、救いの手を取るならば、貴女に俺の力を少し分けてあげよう。使うのは、貴女の勝手だ」
「何を……?」
「おそらく、あの子が貴女を必ず助けに来るだろう。諦めるな。貴女には、まだ生きる権利がある」
優しげな顔の男。その面影はとある誰かに似ている気がして……。
ズドォォォォォンッ!!
「!?」
激し音が鳴ったと同時、私の中に流れ込んでくる温かい魔力。そして、目の前にいたはずの男がいつの間にか消えていた……。




