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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第七章 ジーダス攻略戦・前半
65/96

白銀の世界は幻想的で



 【霧雨兄弟】。

 幹部の中でコンビネーションが一番高く、それを利用した戦闘をする野郎だ。

 しかも霧で視界を悪くさせる魔法を好むため、どう考えても命中率が悪くなる。


(なんでこのタイミングで出てきたんだ!?)


 これで分が悪くなった。

 衛兵の逃げ腰がなくなり、士気も上がった今、形勢が一気に逆転した。


「ヤバイな……」

「雑賀。いい案はないか?」

「さすがに【霧雨兄弟】じゃ、まともに戦えるのはガルムさんと雑賀先輩ぐらいじゃないと……」

「グレンさん。あなたには聞いていませんよ? あと戦えないのはグレンさんぐらいです」


 グレンはおそらく混乱の中だろう。俺もそうだ。

 なぜならこいつら【霧雨兄弟】は普段から組織の会社にいる時を見かけないのだから。

 普段から仕事をしていて、外で頻繁に合うこいつらが、俺たちは誰もがこいつらがここに居るなんて思っていなかったのだ。


「仕方ないですね。兄弟は天童さんと私で隔離しましょう。ガルムさん。グレンさん。外は任せました」

「え?」

「妃鈴正気か?」


 いきなり妃鈴が言った。

 グレンとガルムが訳が分からず首をかしげる。

 俺も初めは何を言っているか全くわからなかったが、彼女が盾を構えたことにより、意図がわかった。

 そして一言。


「〈城塞闘技場フォートレスコロセウム〉発動」


 空間が割れ、俺、妃鈴、そして【霧雨兄弟】だけが取り残され、城壁が形成されていく。


「なんだ?」

「これ、フィールド魔法だ!」


 焦りを感じる二人だがもう遅い。

 フィールド魔法は完成され俺たちは今……、


「ようこそ、私の城塞へ。ここは死闘を繰り広げる闘技場(コロセウム)


 城塞の中にいる。


 ――城塞闘技場フォートレスコロセウム


 それは妃鈴の作った弾幕が飛び交う地獄への招待。優秀な妃鈴の最高の魔法。

 俺と妃鈴がこのフィールドにいる時点で、負けることは許されない。


「天童さん。難易度はいかがいたします?」

「もちろんエキサイト……と言いたいところだが、早く決着をつけて向こうに戻らないとな。ヘルでいこう」

「了解です。では、楽しんで死闘を繰り広げましょう【霧雨兄弟】さん」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ボクはよく見えない相手と話してた。

 頭に直接話しかけてくるのだ。

 時間は短かったり長かったり、朝だったり、夜だったり……。

 そしてそれは何も冬だけじゃない。


 春も……、


 夏も……、


 秋も……、


 全部の季節で話してた。

 でも誰も信じてくれなかった。

 母さんとユウは信じてくれたけど、ほかの人たちは誰も信じれくれなかったんだ。神様だから……。

 だからボクはそのことを忘れようとしてもう話さないと心に決めた。

 だけど結局、相手が話しかけてくるとボクは自然と話してしまっていた。

 みんなにバレなければいいやと思い、それからは普通に話すようになっていったのが赤砂学園小等部に入ってからだ。

 だが、小等部の高学年になってくると次第と声が聞こえなくなった。


(あれ? 今にして思えばなんでその時、不思議に思わなかったんだろう?)


 ボクは聞こえなくなっていった原因を探らなかった。

 いつの間にか話さなくなったのにボクはそれに気づいていなかった。

 気づけなかった。


 それはつまり、魔法で気づかないようにしたというわけだ。

 何のために? どうして今になって思い出したんだろ? 魔法が弱まった?

 きっと違う。何が違うかはわからないけど多分そうじゃないと思う。

 とにかく今は……。


『あと『二分』。おもいだした?』

「少し……ね……」

『がんばって。おもいだしてもわたしの『名』をあてないとかいほうされない』


 そう……彼女の名前を当てないといけない。

 どうしても彼女の名前を思い出せない。

 話していたことも思い出せない。

 雪が降っている日。

 それだけしか思い出せない。

 声しか聞こえなかったのだ。

 姿も見えていたら……見えて……いたら……?


 …………あれ?

 見たことが……あ……る……?


『あと……『一分』』

「!?」


 もうそんな時間!?

 とにかく、今はそのことよりも早く名前当てないと!!

 早くしないと、早くしないと……!

 彼女の名前……彼女の名前……!


「――ッ」


 頬から一筋の光が流れている彼女の姿……。

 どこかで見たことのある、大切な……なくしてはいけない記憶――、

 光が包み込んだ吹雪の中で、彼女は確か――。



――りく。ありがとう。つぎにはなせるのはきっとむこうのせかいにいったとき――


――向こうの世界……?――


――そう。そしてそこでわたしのなまえをあてないといけないの――


――どうして?――


――それがわたしを『目覚めさせる鍵』。『魔法』で『記憶』はきえてしまうけど、『無垢』でいるあなたならきっと――


――どこか行っちゃうの?――


――おぼえていて、わたしのなまえは――



 彼女の名前は……。











「冬を司る女神、〝白姫(しらひめ)〟……」











『え――』


 パリィィン



 雪が舞った。





 場所はどこかわからないが雪が降り続いていて、白銀が広がっている。

 空間は割れ、そこから出てきた景色だ。

 闇を全部追い払ったその景色は幻想的な世界で、現実じゃないことを感じさせる。

 目の前には目から涙を流している少女。

 とても驚いた顔でこちらを見ている。


「わたしの……『名前』……おもいだしてくれたの……?」

「うん。確か、白姫さんと分かれてしまった時も同じ涙を流していたように感じて……」

「あ……。わたし……『泣いて』たんだ……」


 顔を手で覆い隠す白姫。


「やっと……やっと、わたしはかいほうされた……。ながいねんげつのなかで『幾人』ものひとをころしてしまっていたの……。もう……わたしの『魔力』で『死』ななくていい……」


 きっと彼女はその手の内で泣いているだろう。

 まるで人間のような泣き方にボクは心が晴れたような感じがした。

 まず、一人……助けれたんだって……。


「ありがと……『リク』……ううん。『リク様』」

「そ、そんな! ただ、暗いところから助け出したいって思っただけで……」

「でも……『リク様』はわたしをたすけてくれた……」

「ええっと……とりあえずボクのことはリクでいいです」


 笑顔で自分の呼び方を訂正させる。いくらなんでもリク様なんて恥ずかしい。

 白姫はこくんと頷き、涙でぬれていたけれど、笑顔で返してくれた。

 ボクはその笑顔を見て、助けてやれてよかったなって思う。白姫も助かったし、ルナもこれで助かったはずである。これは呪いじゃないってルナに伝えよう。と思ったところでボクはこんなことをしてる場合じゃないと思い出す。


「あの……。悪いって思うけど……今から力を貸してくれませんか?」

「?」


 彼女は涙を手で拭き取り、風景を眺めていた顔をこちらに顔を向ける。

 それを確認して、ボクは真剣になって言う。


「今、ボクたちの大切な人が捕まってるんです。多分、ほかの人たちはもう行ったと思うんです。ボクも行かなきゃいけない。だから一緒に助けに行ってくれませんか?」


 ボクは解放したばっかの彼女に悪いけどお願いをする。

 まだ彼女は解放されたばかりなので魔力が安定していないだろう。

 でも彼女はその無理な願いにこくんと頷いた。


「『リク』のねがいなら、わたしはよろこんでききいれる。わたしはもうすでにあなたのもの。すきなようにつかって、『リク』」

「ありがと、白姫さん」


 そう言うと彼女は首を振った。


「?」

「わたしのことはよびすてでいい。じゃなければわたしを『シラ』とよんで。そっちのほうがしたしくおもえないかな?」

「そうですね。じゃあシラって呼びます」


 ボクは神様相手だけどこれからはずっといるのだ。

 こう言う人間みたいな事をしてもバチは当たらないだろう。それともう一つ。


「そういえばパレスチナって何ですか? 道行きながらでも教えてもらえたら……」

「『バレスチナ』は『パレスチナ』」


 道行きながらではなくなりそうだ。

 時間短縮ができると思ってたのに……。


「でもりく。おぼえておいて。『パレスチナ』とはわたしがかってによんでるだけで、ほんとうは『聖地(、、)』という」


 ふ~ん。聖地か~。

 聖地…………。



 聖地!?

 どどどどいういうこと!?


「と、とりあえずこの世界から出してくれないかな? 道行きながら聞きたいんだけど……。かなりいろいろと……」


 なんとか聞きたいことを道行にするために今は我慢する。

 じゃなければ時間ロスが激しいだけだ。

 するとシラは思い出したように手をポンと叩き、


「あ。いってなかった。この『世界』からでるには『リク』がわたしをつかわないとでれない」


 そして彼女はボクに近づいてくる。

 彼女はボクにここから出る方法を答えた。

 とても驚きの……脱出方法……。


「『契約の儀』するのわすれてた。『リク』。わたしに『キス』して。そうすればあなたの『聖地』により、わたしははれて『完全』に『リク』のものとなる」






 ………………………………………………………………………え?


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