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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第七章 ジーダス攻略戦・前半
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作戦開始



 結局、ウチたちは作戦を説明されてからも『彼女』のことは知らされなかった。しかもそれだけでなく、最悪な状況に陥った。

 リクの妹、ユウがジーダスの副幹部長の手によって捕まったと情報が入った。これでどちらも助けなければ行けなくなった。ユウの事は、聞く限りではかなりの戦力になるらしいから、一刻も早く助けて、戦力増強を狙っているらしい。と言ってもやはり先に助けるのはソウナらしいが。

 場所はユウが捕まる直前に見ていたらしく、付きとめているので大丈夫だ。


「たく……なんだよ。少しは教えてくれたっていいじゃねぇか」

「しょうがないよ。でも、助かるってカナさんが言ったんだからきっと助かるよね?」


 ウチはちょっとした不安を言葉にしてみんなに同意を求める。

 これでもウチはカナのことを少しは信用している。

 リクとユウの母親だもん。あの人が見捨てるわけがない。

 どんな状況でも命の危険ならばきっと助けてくれると思う。

 あくまで予想だが。


「妾はそう思いたいのう。じゃなければホントに妾は呪われておらぬか分からぬからのう」

「わたくしはそれとは別に、カナ様は、自分の子供のことを本気で信頼していると思われますの? わたくだったら、心配で心配で、横につきっきりになりそうですもの……」


 今ウチが信頼していると脳内で言ってましたよ~。


「……呪いのことを知ってての反応だった。……だったら私達が反論できるはずもない」

「なぁ。カナってどこまで知ってんだ? あいつは何一つ話しゃしねぇし、すべて正しいことしかいわねぇって感じでもなさそうだしよぉ。なんだかんだ言って、全くわからねぇやつだよ。って言ってることが自分で言ってて意味わかんなくなってきた……」


 ウチも途中から何を言ってるか分かんなくなってきた。

 とりあえず助かるってみんな思ってるってことだよね?

 ウチはそう思わずにはいられなかった。

 そう、いくら目の前にいる人が本人であったとしても。


「何してるのみんな~♪ そろそろ作戦開始時間よ~♪」


 今話をしていた元凶のカナの声にウチたちは互いに頷きあい、彼女に追従する。

 どうして彼女がここにいるかと言うと、カナは職場で指示を出した後、ジーダス本部におばあちゃんと一緒に二人で襲撃するつもりだったらしい。

 そして襲撃する直前に、ウチたちと合流したってことだ。

 どうしてここにいるのか聞きたそうな目をしていたが、なんとなく予想が付いたのか、何も言わかなった。

 ウチたちの作戦を聞くと、カナとおばあちゃんは納得し、ウチたちの方の戦力になってくれた。英名持ちが二人もいるとかなり心強い。


 そしてこうしている間にも作戦開始時間――ズドォォォォォン!!

 少し離れたところで爆発をしたような音が聞こえる。


「おい! なんだ!?」

「わからん! とにかく行くぞ!!」


 ジーダスの衛兵だろう。

 何人かが出てきて音のした方に走って行く。


「今よ」


 コクン。


 カナの合図にウチたちは衛兵が出てきた裏口から中に侵入する。

 ジーダス攻略、開始……。

 ここで作戦を説明しておこう。

 一つ目は囮作戦。

 先ほどの音が雑賀たちの囮チームの戦闘開始合図だ。

 それによって出てきた衛兵たちを確認し、もう扉から出てこないと気配で感じたところでウチたちは中に侵入する。


 つまり部隊(チーム)は二つ。

 元ジーダス部隊(チーム)とウチたち学生+英名持ち部隊(チーム)だ。

 そしてもう一つ、単独として雁也がいる。


 これが二つ目の作戦だ。

 彼は元々スパイ関連がかなり得意な人間だったので、本部にあらかじめいて、中から秘密裏に動いてデルタに情報、その他諸々渡す役割、かなり重要な部分をしてもらっている。

 彼も、その性分があっているらしい。本来の姿はジーダスに知られてしまったため、魔法を使って、バレないように行動しているとのこと。


 そして三つ目の作戦。

 ウチたち救出部隊がそれぞれユウ、ソウナを救出をする。

 なるべくバレないようにかつ迅速に。

 そして最後の作戦がジーダスのボスを倒すこと。

 なるべく捕まえてとカナに言われたがそれはとてつもなく難しいことだと思う。

 何はともあれ、ウチたちはジーダスに侵入成功。


 一つ目のミッションはクリアー。

 さて次は……。


「おい。目の前からジーダスの幹部二人がなぜかここを襲ってるみたいだぞ!?」

「ああ。確か【疾風の英知】(雑賀)と【地獄の番犬】(ガルム)だろ?」

「なんでこんなとこ襲うんだろうな? 明らかな裏切りだぜ」

「あと【鉄の盾】(妃鈴)と【業火】(グレン)もいるみたいだぞ!?」

「うわ、よりによって一番同時に敵に回したくない相手四人組じゃねぇか。多分【情報の城】(デルタ)もいるよな? どうしたって裏切りなんかを起こしたんだ?」

「それより早く止めないと。じゃないとボスに儀式の餌食にされるぞ!」

「「「お、おう!」」」


 雑賀の家を幹部長が襲ったことをまだ衛兵たちは知らないのだろうか?

 なにはともあれ、ウチたちは息を潜めて前で話していた六人を見送って先に進む。

 そして今の儀式の餌食という言葉を聞いて、少なくともここに居る奴らは儀式の事を知っているらしいことも確認する。


「ちゃんと混乱しているみてぇだな」

「うん。でもそれも時間の問題かも」

「早く救出しなければなりませんものね」

「……五分後ぐらいには二人共助け出していたい」


 白夜さんが五分という短い時間を指定して助け出したいというが、


『おいおい無茶言うなよ』


 耳からそれを否定する声がする。


『嬢さんたちが入った裏口から二人を救出したとしても、最低でも十五分は必要だ。それに混乱の中でも徘徊している衛兵もいると来たもんだ。せめて三十分は必要だな。すべて雁也が送ってきた資料から計算したやつだからこれは絶対だぜ?』

「……長い。……もうちょっと短くして」

『厳しいな~。白夜嬢ちゃんは。じゃあ二十分でどうだい?』


 短くなるじゃないですか。

 少し白夜は考え込む仕草をすると、小さく頷いた。


「……でも、二手に分かれて一緒に救出したらどう?」

「わざわざ分けるの? 私は別にいいわよ♪ ……? ……真陽ちゃん……」

「……まさかこんな時にねぇ……」

「?」


 カナとおばあちゃんが気になることを言ってるが、他の人には聞こえていなかったようでデルタの言葉を待っていた。


『二手に別れれば……十分だ。どうだ?』


 コクンと白夜さんは小さく頷く。


「じゃあメンバーはレナちゃんと白夜ちゃんでソウナちゃん救出隊ね♪ マナちゃんとキリちゃんとルナちゃんでユウちゃん救出隊ね♪」

「? お前ら英名持ち二人はどうするんだよ」


 おばあちゃん?

 どうしたんだろ?

 さっきから後ろばっか見て……。

 何気なくウチはおばあちゃんの見ている方向を見る。

 別段誰もいるようには見え……!?


 違う! 誰かいる!?

 誰かわからないが、おばあちゃんの目線の先には二十代ぐらいの男がじっと見据えながら佇んでいた。

 その男は真紅の髪の色で、ポケットの多い、黒のロングコートを着ていてる。

 耳には色のないシンプルなピアス、首には色のない宝玉の付けられた首飾りをつけていた。

 全く気づかなかった……。気づいた今も気を抜けばまた探さなければいけないぐらい気配が消えている。


「私たちはこの人を足止めしなくちゃね~♪」

「言っておくが、私たち二人でもこいつに勝てるかどうかぁ(、、、、、、、)

「え? おばあちゃん、それってどういう――」


 ウチは聞いてみたけどそれはキリの言葉に遮られた。


「はぁ? こいつ? ――ッ!? いつの間にこいついたんだ!?」

「いつからここにいたんですの!?」

「……言われてなければ気がつかなかった……」


 ウチたちはいち早く戦闘体形を取るが、それはカナに止められた。


「いいからすぐに行きなさい」


 いつもの声音とは違う。

 笑顔で言ってるはずなのに全く声は柔らかくない。

 ウチたちはその尋常ならざる状況に、ただ素直に従うだけだった。


「分かりました。カナ様、また後ほど」

「……他のみんなも」

「ああ。集合場所は社長室前だ」

「そなたら、死ぬるでないぞ?」

「みんな、頑張って」


 ウチはこういう状況では流石に余裕を持てず、真剣な言葉で返す。

 ウチたちはそこで分かれる。

 カナとおばあちゃんを置いて、二人を先に救出するために、ウチ達は走った。


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