表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第六章 襲撃と呪われし姫君
61/96

呪われし姫君


「これは呪いって言ってるけどそれはちょっとした説明を簡単にした呼び方と聞きました。ルナさんは少し誤解しています」


 先ほどの台詞の後、正確には呪いでは無いと言う雁也。

 それにルナは訝しげに雁也を見る。


「妾が? 何を間違っておるのじゃ?」

「よくわかりませんが……。とにかく〝ヘカテ〟さんが責任を負うことは無いと言うことです。これは『彼女』がリクさんに魔力を押しつけているだけであって、ルナさんとは全く別の『彼女』が動いているのですから……」


 さっきから何を言っているんだ?

 まるで中にもう一人いるようなことを……。


「『彼女』とは誰のことですか?」


 レナがいいタイミングで聞く。

 だがその質問に雁也は迷惑そうな顔をしただけであって、そのまま作戦を説明しただけだった。

 ただ一つ、わかったことは、カナの事が全く分からないと言うことだ。

 どこが見えていて、どこが見えていないのか……。逆に、謎が多すぎるカナを完全に信用することはできない。

 いくらカナの言うことが、一つ一つが正解であっても、不正解でも……だ……。


「しかし困りました……。リク様が倒れてしまっては、リク様が治るのを待つしか……」

「それじゃあ遅ぇンじゃねぇのか? ソウナをいつまでも生かしておくメリットはあいつらにはねぇはずだ。それを言ったら俺達も同じだがよぉ」

「雁也さんが来てくれたおかげでウチらはこうやって生きてるわけだし……」

「幹部長が必ず半殺しで済ましてくれる必要は無かったハズですからね。おそらく、あそこで全員を殺していても文句は言わなかったはずですから」


 約束は守ると言ってもこれっぽっちも信用ならねぇ。ソウナの見えねぇところで俺達を殺すつもりだったんだろうよ。


「お主ら。戦力が足らぬのか?」


 リクの隣にいたルナが俺達の会話に混ざる。隣にいても何もできないとわかったのだろうか、それとも……。


「ええ。つまりはそういうことですね。リク様は戦闘経験が浅いとはいえ、十分な戦力でした。(かなめ)と言っても過言ではありませんでしたね」


 リクが神使いだって事をこいつは知ってんのか? じゃなかったら十分な戦力だなんて絶対に思えなかっただろうよ。

 ルナはそれを聞くと、黙ったまま、リクの隣から立ちあがる。


「ならば妾が戦力となろう。異論はあるまい?」

「え!? ルナさんが!? 契約者から離れていいなんて聞いたことが……」


 いや、むしろありえねぇだろ。契約者から離れていい精霊や召喚獣はいねぇ。てっきり神霊も同じようだと思ったんだが……。神霊は違うのか?

 心の中の疑問はさておき、俺はルナなら十分戦力になると思う。神霊なのだ。神の断片だと聞いたが、異様な魔法をよく使うこの神霊ならば多分俺達よりも強いんじゃないかと思われる。


「うん。ルナさんなら十分戦力になるかもしれないけど……大丈夫なの? 契約者から離れても」

「少しのペナルティがあるでけで特に問題は無い」

「なら……お願いしようかな」


 こうしてジーダス攻略戦のメンバーが決まった。決行は今すぐ。作戦も聞いた、戦力もコレで把握できた。

 後は……攻撃に出るだけだ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「うわぁ。雁也は一体何をやってんのよ。ソウナさんが捕まってんじゃない」


 物陰に隠れながら歩かされているソウナを見て悪態をつく。

 ユウは耳のインカムをトントンと二回叩く。


「ちょっと雁也? 聞こえてる?」

『あ、はい! 何でしょうか?』

「どうしてソウナさんが捕まってんのよ。そっちは大丈夫でしょうね?」

『なんとか。私が付く前に襲撃を受けたそうで。幹部長に襲撃されたので反撃する暇のなかったらしいです』

「お兄ちゃんは大丈夫なの……?」

『それが……』


 雁也の報告を聞く。

 お兄ちゃんは幹部長の手によって頬を薄く斬られたらしい。それ以外は特に外傷ができる前に助けることができたと言うことだった。


「へぇ……。お兄ちゃんに……ねぇ」


 ユウは一緒に歩いている仮面の男(?)を見る。


「あいつ……か」


 ユウの殺人リストに載せようか。どうしようか。

 ユウのお兄ちゃんを少しでもキズ物にしたんだから殺されて当然だよね……。そうだよね? アハハハ♪


『ユウ。どうしたのだ……? とても怖いのだが……』


 全くエンは何を考えているんだろうね♪ ユウが怖いだなんて普通は思わないよ~♪

 お兄ちゃんをキズ物にしたのは幹部長。お兄ちゃんをキズ物にしたのは幹部長お兄ちゃんを…………。

 そうやって考えていたからこそ、後ろから来る気配に気づかなかったのは最大の失態だ。


「ここで何をしている」

「――ッ!?」


 全く気づかなかった……。そのおかげで大鎌を首を掻き斬るような感じに構えられてしまった。このまま引かれるとユウは死ぬだろう。

 迂闊なマネはできない。今のところまだバレてはいないだろうから……。


「え、えっとぉ。ちょっと散歩してたら表から誰か入ってくるからさ? 誰かなって見てただけだって……」

「別に見る必要は……。そうか、貴様、あの時『開かずの扉』の前に居た新兵だな?」


 ……へ? どうしてそのことを知って……ってまさか! 今ユウの後ろに居るのって副幹部長!? 大鎌なんて使ってんの!?

 これはまずい……絶対にバレる!?


「そういえば貴様。知っているか?」

「な、何をでしょ~?」

「最近、スパイが入り込んでいるとの情報が入った」

「へ、へぇ。そうなんですかぁ」


 絶対怪しまれてるぅぅううぅぅっっ!!


「しかもそのスパイ。かなりの使い手であってな、我々でも手に負えないのだ」


 ……ん? なんかおかしくない?

 どうしてそんなことをユウに?

 そうしていると、ユウの首にあてられていた大鎌を引いて行く。


「貴様、悠里と言ったか」

「は、はい!」

「俺から見ても貴様はかなりの手だれと見える手伝え」

「はい……って、え?」


 まさか気づかれていないのだろうか……?


「どうした? 副幹部長よりも大切な命令でも出ているのか?」

「い、いえ! こんな新参者なんかにそんな大役任せてしまってもよろしいのでしょうか……?」

「新参者であり、俺の目から見て手だれだと感じたからこそ命令している。良いな?」

「り、了解!」


 ジーダス特有の敬礼をして、とりあえずその場を離れようとした瞬間だった。


「そのスパイだが……」


 ガツンッ。


「い、た……」

「銀髪の少女と行動を共にしていたそうだ」


 やっぱりバレバレだったか……。そしてそのままバレていないと安心してしまっていた自分に腹が立ったが、後頭部に鈍器を――おそらく大鎌だろう――打ちつけられたユウは、そのまま地面に意識ごと、崩れ落ちて行くのだった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ここはどこだろう?

 暗闇に閉ざされた世界。

 目を開けていると認識していても何も見えない聞こえない暗闇……。


 母さん?

 キリさん?

 マナちゃん?

 みんなどこ?


『ここにはみんなはいない』


 え?

 だれ?

 姿は見えない。

 ボクは聞く。

 誰かわからないけどボクに声をかけてくる少女の声にボクは耳を傾ける。


『ずっとまっていた。『赤砂リク』』


 待っていた……? どういうこと?


『ずっと……十六年間、この『生命の無世界』で。この『零の世界』で、ずっと待っていた。ほかにもいろいろとよびかたがあるけど、わたしは『パレスチナ』ってよぶこともある』

「パレスチナ? あ……。声が出る……」

『こえがでるようになったのはわたしがそうしたため』


 そういえば……この子は誰なんだろう?


「あなたは……誰ですか? どうして僕はこんなところにいるのですか? できれば姿を見せてもらえると……」


 そう言うと、少女は目の前に現れた。

 白くて日焼けなど皆無のような肌に綺麗な白銀の髪。

 服は肩が露出している水色のワンピースに背中には六本の氷が浮いている。

 頭の上には宝玉がはめ込まれている氷のティアラがかぶせられている。


『とうとつでもうしわけないけど、わたしの『名』をよんで。じゃなければあなたはここで『死んでしまう』』


 え……? それはどういうこと?


 ボクは戸惑う。

 少女は名前を当てろと言っている。

 でもボクは彼女には初めてあったから彼女の名前を知る(よし)もない。

 だから普通に考えてボクが彼女の名前を当てれるはずがないのだ。


 だが、ボクは彼女に以前。

 どこかであったような錯覚があったのはどういうこと?

 寒くて、白くて、雪のような少女で……。

 それでいてあどけない少女で、小さな少女で、寂しそうな少女で……。


「あなたは……いえ。あなたとボクは……どこかであったことが……?」


『ある。そして『名』もちゃんとなのってる。いまここでいわなければ『契約の元』。あなたはとうしで『死んでしまう』。わたしもこれいじょう、ひとを『殺したくない』の。おねがい。わたしの『名』をよんで、かいほうして。そうすればあなたも、『ヘカテ』もたすかる。あなたはわたしが『司る世界』をじざいにつかい、じざいにつくり、じざいにけすこともできる』


 少女は真剣に問う。名前を当てて欲しいと。

 そしてそれを当てなければボクは死んでしまうことも知った。

 ソウナがまだ助けれてないからここで死ぬわけにはいかない。


『わたしは『呪縛』に『縛られた』、『呪われし姫君』。この『試練』をこえなければあなたはしんでしまう。おねがい。この『呪縛』から……たすけて……』


 こんな狭くて、暗くて、お互いの声と姿しか見聞きできない世界なんて……とても孤独で辛い場所……。

 このような場所に一人でいたのだろうか?

 こんな場所でボクを十六年間……待っていたのだろうか……? ボクが産まれてからずっと?

 そして彼女の名を呼ばなければ、この場所から出られないのならば……。

 違う。ボクが出たいから彼女の名を呼ぶ訳じゃない。ボクが……。ボクが心の底で思っているのは……、




 ――助けたいって思っているんだ。




 ならばボクはすぐに名を呼び、そしてソウナを助けに行く。

 これが最善だと心の中で思った。


今回で第六章が終了いたしました。


次回からジーダス攻略戦、突入でございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ