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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第六章 襲撃と呪われし姫君
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天敵



「――という訳で私がカナちゃんです♪」

「待ってください! 母さん! いきなり『――という訳』と言われてもわかりませんよ!」


 みなさん勘違いしないでください!

 母さんは何も言っていません!

 説明も何もしていません!


「なるほど」

「つまりあなたがあの都市伝説の……」

「この後俺とメアド交換しませんか!?」

「さすがカナ様ですわ!」

「……カナって呼んでいい?」

「あれ!? なんでみんな知った風な顔なの!?」


 ガルム、グレン、デルタ、レナ、白夜はまるで知ったように答えた。

 もう一度言うが、母さんは何も言っていない。


「いえ、ここはこう言った方が、いいと思いまして」

「……同じく」


 あ……。

 適当なのですね。


「雑賀につれてこられた俺たちは先に聞いていた」

「そうですね。まさか小学生ぐらいにしか見えない子が雑賀先輩から聞いた都市伝説の子だなんて……」

「これこそ合法ロリだ! カナちゃん! メアド交換したら次に写真撮影をしないか!?」


 ジトー……。

 冷えた目でデルタを見る。


「え!? なに!? その目は!? めちゃくちゃ嬉しいんだけど!!」


「うわぁ……」「誰だよこいつ連れてきたやつ」「さすがに引くね~……」「こんな殿方がいるのですね……」「いえ。ここまでの変態はそうは居ないわ」「……超ド級変態(笑)(かっこわらい)


「すみません。これがデルタ・インフォルダさんなので……。正直、私も苦手です。仕事中、セクハラとかするので、今度やったら射殺するつもりです」


 順番はボクがデルタを見ながら引いて、

 キリが雑賀を横目で見ながら引いて、

 マナがもうそのまんま引いて、

 レナがこんな男が世の中いることに引いて、

 ソウナがレナの言葉に特殊性を付けさせて、

 白夜は思いっきり罵倒して、

 妃鈴がみんなに謝罪をしていた。


 おそらく自分の上司だからだろう。

 聞いたかぎりじゃこの中で一番低い地位にいるのがグレンだけど、その次に妃鈴が低いようだ。

 ジーダスを潰すのだから身分なんてもうどうでもいいと思うのだが。


 デルタは危険人物と全員が思ったところで母さんがみんなでやる人生ゲームなる物を取り出していた。

 どこにそんなものをしまってあったのか、その謎は誰にもわからない。

 ちなみに先ほど、言ってなかったのだが、雑賀だけはデルタの言葉に思いっきり頷いていたので妃鈴さんが思いっきり短銃で撃っていた。

 血が出てるけどおそらく大丈夫だろう。


 そして母さんがやっと準備が終わったのか……って、


「これ大きくないですか!?」


 普通の奴よりも数十倍大きい。

 机の上からはみ出している……。これで出来るのだろうか?


「まぁ。これは人生ゲームですわね? わたしくは青が……」

「……久しぶり。……私は黒」

「ウチは赤にしよっかな~」

「よし! 俺らもやるか! 緑」

「じゃあ俺は黄色な!」

「私は夕食の買い出しに行ってこようかねぇ」

「真陽さん。私も手伝います」

「あ、それだったら僕もそちらを手伝おうかな」

「そうだな。俺も真陽さんを手伝おう。女二人ででは少々重いだろう」

「ふふ♪ じゃあ四人ともよろしく♪ 私はもちろん白銀色~♪」

「リク君は色どうするの? 私は蒼色にするけど……」


 ……この大きさがヒスティマでは普通なのだろうか……?

 とにかく買い出しは真陽と妃鈴とグレンとガルムで決まったようだ。


「ボクはみなさん来たし、紅茶かコーヒーとかでも注いできますね?」

「そう? それまで待ってるけど……」

「いえ。初めてて良いですよ」


 待たせるのも悪いからね。

 そしてまだ後から来た人に用意していなかった紅茶かコーヒーを入れるべくその場を立った。

 ついでに淹れてきてあっても注ぎたそうとしてみんなのコップも持っていく。

 そこで居間でみなかった人物と遭遇した。


「おい、リク」

「?」


 台所に着くと後ろから、キリ(未だに女の子のまま)がキッチンで隠れるようにしながら、顔を少しだし、ヒソヒソ声で話しかけてきた。


(キリさんはここにいたんだ……通りで人生ゲームを取り出した辺りから居間に姿が見えないはずです)

「…………今変なこと考えなかったか?」


 しょうがないです。だって思ったのは事実ですから。

 しかも思いっきり隠れてましたオーラが出てますもん。


「まぁいい。ちょっくら指輪貸せ」

「指輪? これのこと?」


 そう言って嵌めてある赤い宝玉の指輪を見せる。


「ああ。そうすれば俺もお前も男に戻れるだろ?」


 なるほど。

 この指輪には性転換魔法がかかっているんだった。

 キリとしては早く男の子に戻りたいし、ボクにしても好都合だから。


 つまりここは渡すに限る。

 ということで指輪をはず――


「リクちゃん♪ キリちゃん♪」

「「!?」」

「何してるの♪」


 突如現れる神出鬼没な天然トラブルメーカー。又は自由人。

 その顔は、いつもどおりに笑顔だが、今は凍りついているようにしかみえない。


「まさか~♪ 元に戻ろうとしていたなんて言わないわよね♪」

「か、母さん!? 人生ゲームをしてたんじゃ……」


 キリは母さんに向き合っているが、後ろから見ると冷や汗が目につく。

 かくいうボクも、同じような感じになっているが……。

 特にボクなんて何回もやられたことがあるから、キリより冷や汗をたらしていると思う。

 非常にマズイ。この状況は……。


「言うのね~♪ そういう悪い子には……お仕置きしなくちゃね♪」


 そう言って後ろに隠していたつもりらしい、普通の日常生活ではまず着ないとある制服を前に出してくる。

 隠していたつもり、というのは母さんの体では服二つなど、隠しきれないからだ。


「ハ、ハハ……ハハハ……」


 キリはカラ笑いをし、ボクはそれを聞いていることしかできなかった。

 そしてボクは心の中で、指輪を外すのは、母さんが必ずいないだろう場所にしようと心で決めた。

 先ほどの安易な考え方は一切しないと決めた。


「さ~て♪ 始めましょうか♪」


 イタズラを思いついた子供のように、満面の笑顔で言い放った。


「始めさせてたま――ッ!?」

「ひゃッ!?」


 母さんは素早く、ボクとキリさんの服を、下着以外、すべて剥いだ。


「な、な…………」


 ボムッという音を立てて、キリは頭が爆発し、意識が飛ぶ。

 そのまま崩れ、床に寝転ぶ。

 ボクはそんなキリを見ないようにし、自分の体を隠すようにしながら母さんに怒鳴った。


「なんてことするんですか! 母さん!」

「お着替えするなら、まず脱がなきゃ♪」


 ボクがキリさんを見ないようにしたのは、キリさんは元々女性用の下着を着けていなかった。

 つまり……上半身裸。


「しませんって何回言ったらわかるんですか!?」

「まだ一回も言ってなかったわよ? 今一回ね♪」

「屁理屈言わないでくださいよ!!」


 母さんはボクの言葉を無視して意識がないキリの下着を脱がし始めた。


「って何やっているんですか!?」

「? だってこれ男性用でしょ?」

「え!? ……ま、まさか……」

「じゃじゃ~ん♪ ブラもショーツもあるわ♪」

「!? た、高く上げないでくださいよ!!」


 顔を赤くするボク。

 胸を支えるためのブ、ブ……と、とにかくそれがかなり大きくて、下の方の下着もあって、しかも二つとも黒色で統一されていた。


「あら~? リクちゃんどうしたの? そんな顔赤くして♪」

「お、男の子なら誰だって赤くなりますって!」

「そうかな~? 雑賀ちゃんとデルタちゃんはむしろ喜びそうじゃない♪」

「あの人たちは変態だからです!」

「りくちゃん、純情(じゅんじょう)ね~♪ キリちゃんもだけど♪ あ♪ 黒色の下着はやっぱりエロいわね~♪ キリちゃんせくしぃ♪ 森で眠る美女って感じ?」


 と、母さんが言葉にツッコミを入れているうちにキリさんの体に上下黒色で統一された女性用の下着をつけられていた。

 ボクは、キリさんにごめんと心の中で謝って自分だけは逃げようと母さんがどこかに隠した自分の制服と取ろうとして、あたりを見回していると不意に目の前に人影が現れた。


「?」


 その人物は、物静かに台所の入口に立っている。

 この場面を見てその人物はどういうふうに感じたんだろうか?


「あら? どうしたの?」

「……カナ。……何してるの?」

「お着替え♪」


 ボクは必死に助けを求める。

 いま、助けてくれる人はこの人しかいないと感じ、目線で訴え、心の中で必死に助けを求めた。


 そして、その人物は静かに口を開いた。






「……私も手伝う」






 ……へ?

 思考が固まるボク。

 一瞬何を言ったのか理解できなかったが、すぐに理解し、寝返った理由を考えてみたが思いつかない。

 とりあえず、わかったことは……。


「ホント♪ じゃあリクちゃんお願い♪」

「…………(コクコク)」


 その人物は――


「……リクちゃん」


 【影の守り人】の名を持つ――


「……お着替え」


 ボクにとっての――


「……しよっか」


 天敵ということだけだった……。


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