リクの部屋
食器を片づけて、ボクの部屋に集まったのは、ボクと青髪の少女。
ユウは現在洗いあげと何か飲み物を持ってくるそうだ。
「ここがあなたの部屋?」
少女が部屋を見わたす。
「ええ。そうですよ」
ボクはそれに肯定するが、少女はそれを聞かずに言葉を続けた。
「あなたやっぱり女の子じゃないの?」
「え!? どうして!?」
衝撃的な言葉に僕は自分の部屋を見る。
ボクの部屋にはベットに本棚に勉強机に通学用鞄、本棚、そして一つの……枕と、クローゼットとタンスがあるだけだ。
部屋はいつもきれいに掃除してある。
「だって……」
なんか震えてる?
「ふふ……だって……男の子が……ふふ……猫の抱き枕って……。しかも結構かわいい……」
――ボフッ
「ち、ちが……これは……!」
顔が一瞬で赤くなり、弁解しようとするも、うまく言葉が出てこない。
実際にはある友人に貰った物だから残してあるのだ。
「あはははははは!」
口を大きく開けて笑う少女。
「飲み物持ってきたよ~♪ なんか笑い声が聞こえてきたんだけど面白いこと?」
そこに入ってくるユウ。
ユウは楽しい事がうちの天然トラブルメーカー並みに好きだから当然話に混ざってこようとする。
「あ……あなたのお兄さんって……ふふ……ちょっと……変わってるのね……。ふふ……まるで女の子みたいだわ……。いや……それよりも女の子の方が……現実味が……ふふ」
いまだに笑いを止められない少女にユウはなんだそんなことかと言う風に言う。
「あ~。その話? 飽きるほど聞いちゃった~」
「え? そうなの?」
少女はハテナをうかべた顔でボクのほうに顔を向けてきた。
「初めてボクの事を見る人の第一感想が悲しい事にそれだからです……」
思いだすにつれ泣きたくなってきた。
「……えっと……ごめんなさい。あなたのことそんなに知らないのにこんなこと言って……」
「いえ……いいんです。よく言われますから……うぅ」
謝れる方が辛いことをきっと少女は知らないのだろう。だけどさっきは、ボクが少女に普通じゃないっていったからこれでおあいこにしてほしい。
「ほらほら泣きやんでお兄ちゃん♪ アメあげるから♪」
「ボクはそこまで幼くない!」
そこでユウはチッチッチと指を左右に振る。
「アメといってもコーヒー味だよ♪」
「味の問題じゃないよ!?」
「えぇ~」と言うとユウはポケットをまさぐり、一掴みしてボクの前に出す。
「じゃあ~♪ アメをたくさん?」
「とりあえずアメを脳内から消去してよ!」
「つまりアメ以外ってことだね♪」
「そういう意味じゃないよ!?」
そう言うとユウは唸って、「あ!」と思いつくとユウは両手を出した。
「じゃあアメちょうだい♪」
「逆になってどうするの!? って言うか持ってるでしょ!?」
「あなたたち見てると飽きないわね……」
少女からのありがたいお言葉を貰った瞬間だった……。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ボクの名前は赤砂リク。赤砂学園高等部の一年E組の普通(、、)の高校生です」
そう、あくまで普通だ。
それに気づいたユウは苦笑しているが……。
「ぷぷ……あ! えっと、ユウは赤砂ユウだよ♪ 赤砂学園中等部の三年B組だよ♪」
ユウは元気に自己紹介する。
「リク君にユウちゃんね。私はソウナ・E・ハウスニル。学校は通っていないわ。年齢は多分、リク君と一緒ね」
では16歳……と言うことだろう。
だが学校など行っていないのはなぜ……?
日本では義務教育として行かなければならないのに……。って高校生はそうでもなかったか。
「ソウナ……さんですか?」
「そうよ。女っぽい名前じゃなくてがっかりした?」
女っぽい名前で無くとも女の人の名前だと思う。
「いえ。珍しい名前だなって思っていただけです」
「そう? 私はそうは思わないわ」
日本ではなくどっか遠い所から来たのだろうか?
「お兄ちゃん人の名前にケチつけちゃだめなんだぞ~♪」
「つけてないって。ただ、ここら辺の人にそんな名前の人がいなかったから……」
「たしかにいないね~♪ って言うかここら辺だと確かカタカナの名前の人はいなかったはずだよ?」
ちなみにボクの名前の漢字は『麗来』と書く。めんどくさいからリクで通しているのだが……。
母さんは『綺麗な未来を作りますように』と願ってこう言う名前にしたらしい。
綺麗な未来ってどんなの? と聞いたことがあるが、「それくらい自分で考えることね♪」って言われてしまった。
ユウは……とても単純。『遊兎』。それがユウの漢字。
母さんは『毎日遊ぶ兎のように毎日が楽しくなったら良いわ♪』とか言ってこう言う名前にしたらしい。
ユウのは適当ではないのか? と思えなくもない。母曰く、「適当なわけないじゃない♪」だそうだ。
「あなたたちこの町にとても詳しいの?」
首をかしげるソウナ。
当り前か……だって町の人の大半の名前を知っている人なんて普通いないもんね……。
「ボクたちの家族はちょっと特殊で……」
「特殊? まさかまほ――」
「あーーーとっ! そぉだぁ♪ ソウナさん! お菓子たくさん持ってきたからどんどん食べちゃって!!」
ソウナの言葉を途切れさせたユウはソウナにお菓子を進める。
「え……? あ、ええ。いただきます」
あきらかに慌てているとわかるユウに質問する。
「どうしたのユウ? そんな慌てたように……?」
「な、なんでもないよ~♪ あ、あははは♪」
まぁ。そんなに重要なものでもないか。
ユウがいきなり声をあげたので話が途切れてしまったが、そろそろ話していいだろうと思い、話し始めようとすると――ピンポーン
「だ、誰かな~? ちょっと行ってくるね~♪」
「よろしく」
慌てたように廊下をかけていくユウ。
そこでふと初めてソウナさんと会った時のことを思い出した。
「そういえばソウナさんってなんで追われていたんですか?」
「ああ。私が追われていた理由? 簡単よ。私が罪人だからよ。追ってきたあいつらも言って……」
「でもソウナさんが罪人だなんて信じられません。優しそうなのに……。これでも人がどんな人かってよく当たるんです。これは絶対に絶対です。まぁ絶対に絶対はボクのジンクスのような物ですが……」
ボクは苦笑する。
ボクが見ている彼女はあまり犯罪などとは無縁のような人だ。
「…………ありがと」
とそこまで言ったとき。
「ちょ! 変態さん勝手に家に上がらないでよ~!」
「上がらしてもらう。部屋を全部見て、俺の目標がいなかったら出て行こう」
「「!?」」
この声は、さっき逃げて来たときに聞いた声!?
どうやってここがわかったの!?
まさかつけて……。
「今すぐに出てって~!
不法侵入だよ~!
今すぐに警察呼ぶぞ~!
逮捕だぞ~!
罰金がくるんだぞ~!」
ドタドタと下が騒がしくなっている中。
ボクの頭はどんどんと冷めていった。
それはソウナも同じようで……。
「ねぇ……」
「何でしょうか……?」
ボクはソウナの質問の内容がなんとなくわかってしまう。これが以心伝心なのだろうか……?
「ユウちゃんって……」
「言わなくてもわかってます……」
「そう。じゃあ……」
ソウナが哀れむような目で扉の先を見る。
「うん。あれで本気で怒ってます。たぶん……」
そうなのです。
ユウが本気で怒ってもふざけて言っているのかな?
程度にしか聞こえないのだ。たぶん誰も怖がらない。
ボクは正直あれで本気とは思いたくない。ただ、ユウがボクの前では本気では怒らないだけなのかもしれないし。
「ってそんなこと思っている場合じゃない! どっかに隠れなきゃ! 多分ソウナさんを追って……」
「でもこの部屋何もないじゃない」
そうなんだよね~。
ないんだよね~……。
(でも、ちょっとは急ぐ素振りをしてください。ソウナさん……)
どうしよう……このままじゃ見つかっちゃう……。
辺りを見回しても人が隠れるような物はない。
(しかたない、古典的だけど……)
ボクはソウナの腕を掴む。
「こっち!」
「え……! ちょっとま――ッ」
ソウナをある場所に隠した瞬間、リクの部屋のドアが開いた。