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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第六章 襲撃と呪われし姫君
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神出鬼没



「ごめんなさい、キリさん!! ホントにごめんなさい!!」

「い、いや……別にいい。おかげで頭、冷えたしな」


 帰宅中、ボクがキリを意識失う寸前までに(意識は失わなかったのでホッとしている)してしまってから時間が経ち、現在はそろそろ雑賀の家に着くところだった。

 途中でルナにクレープを買ってあげる事を忘れてはいなかったのでちゃんと買ってあげた。

 現在、ルナは普通にボクたちと一緒に笑顔でクレープを食べながら歩いている。

 頬にクリームをつけたりして微笑ましい光景なのだが、ボクはキリさんにまだ謝っていた。

 混乱中だったとはいえ、キリさんの鳩尾(みぞおち)に思いっきり拳を入れてしまった。

 そのおかげで、キリさんの顔色はまだ悪くて、いつもの迫力がない。


「リクちゃん。謝らなくていいと思うよ? これ言うの五回目だけど~」


 マナちゃんはこう言っているけどボク的には何かしないといけないと思うのだ。


「キリさん。何かさせてください。なんでもしますから……」

「ハァ!?」

「ちょ、リクちゃん本気!?」

「リクさんって積極的なのですわね……」

「はむはむ……。なんじゃリク。将来のムググ……ッ。何をするマナ!」

「……ほっぺにクリームがついてた」

「なんじゃ。そうじゃったか。マナもそういえばよかろうに」


 ? みんなして何を言っているのだろう。

 ボクはただ、なんかをしてわびれればいいのだけど……。


「…………。保留だ保留。その時まで覚えとけよ……」

「わかりました。じゃあその時になったら言ってください」

「保留って言うあたり、男だよね~」

「そうですわね。所詮は野蛮な男ですわ」

「……キリ。……根性なし」

「うむ。妾もそう思う」

「クッ。うっせぇよ!!」


 保留と言う言葉が気になったようだ。

 ボクは先送りにしたとしか思わなかったのだが……。

 何がいけなかったのだろうか?


 そして、そこまで話したところで、雑賀の家に着いた。

 家のインターホンを押すと、中から扉が開いた。


「お帰りなさい、リクく……誰かしら?」


 そういえばソウナにも言ってなかった。


「友達です。助けてもらってお礼をと思いまして……」


 そう言うとソウナは理解したようで簡単な自己紹介をした。


「そう。初めまして。私はソウナ」

「わたくしはレナと申しますわ」

「……白夜」

「レナさんに白夜さんね。入って。何か淹れるから……」

「あ、ソウナさん。ボクが淹れるのでソウナさんは先に居間に案内してもらえないでしょうか?」


 元々ボクが呼んだのだ。これくらいはするのは当然だろう。


「そう。わかったわ。それじゃあ三人とも、入って」


 そうして家の中に入った。

 ルナは少し寝てから色々と話したいことがあると言い、ボクの中に戻っていった。

 話したいことに疑問を持ったが、まずは昨日も使っていた、居間の方ではなく、ボクは台所でコーヒーと紅茶を入れた。

 それからみんなの居る居間へと向かった。

 コーヒーと紅茶をいれた理由は、みんなそれぞれ好みが違ったからだ。

 同じならそれぞれ入れる手間が省けていいのに……って思ったが押さえておくことにした。

 ボクとキリと白夜はコーヒーだったが、マナとレナ、家に居たソウナは紅茶だった。


「そういえばリクさん。お母様はどちらに?」

「母さん? 母さんはよくどこかに出かけるし……。どこに行ったかよくわからないんです」

「カナさんなら朝にまたここに遊びに戻ってくるわって言ってたわ」

(そっか。母さんまた来るのか。仕事……ルーガさんにまかせっきりじゃないだろうな……)


 内心でルーガの心配をするボクはすぐに会話に戻る。


「そうですか……。でも、会えるのですよね?」

「ええ。それは間違いないです。母さん、自由人だから仕事を部下に任せて多分ここに来ると思いますから」


 せめて、その部下がルーガじゃないことを願う。


「……いいお母様なのですわね……」

「そうですか? ボクにとっては自由人なんですけど……。それでも約束は必ず守ってくれますから、そういうところは自慢の母親なんですけど」


 心で答え、その思いにひたっていると……。



「や♪ リクちゃんったら♪ 母さん照れちゃうじゃない♪」

「「「「!?」」」」



 いつの間にか隣にいる母さんに驚く一同。


「かかかかか母さん!? いつからそこに!? って言うか聞いてたんですか!?」

「ん~♪ 初めからいたわね♪ 全部聞いちゃった♪」


 恥ずかしさで顔を真っ赤にする。

 まさかここにいて、聞いているだなんて誰が思うだろうか?

 誰も思うはずがない。

 ちゃんと鍵はボクが持っていたし、家の鍵は閉まっていたし……って母さんは神出鬼没!! どこにいてもおかしくないんだ!!


「すごい……。一応、全域に探知結界をしていたのですが……全くもって気づきませんでしたわ」

「ふふ~ん♪ あの探知結界なら消したわ♪」

「え!? あ……いつの間にか探知結界が解けていますわ!?」

「まだまだね~♪ でも、なかなかの魔法だったわ♪」


 誇らしげに話す母さんに、ここに来るまでに張り巡らせていた探知結界をやすやすと抜けられてしまったレナは驚愕しつつ、感動していた。


「まさか【自由な白銀(フリーダムシルバー)】に憧れてはや数十年で会えるなんて……。このレナ・ルクセルは感激ですわ……」


 もうレナの目には母さんしか映っていないだろう。

 母さんのファンだと聞いたときからそんな気はしていた。

 でも数十年って……六歳ぐらいの頃から?

 でも、今のうちしかそういうことはできないので、そっとしておくことにした。


「そういえばキリちゃん♪」

「あぁ?」


 …………あ。

 もう逃げられない。

 何から逃げれないって?

 母さんが「そういえば……」って言ったら必ず変なことをする。

 絶対に変なトラブルを起こす前兆。

 そして、母さんが「そういえば……」とかの言葉を使うと絶対に逃げられない。

 母さんの「そういえば……」の言葉を中断させて逃げるしかない。

 ということでキリお疲れ様ってこと。


「なってみない?」

「はぁ?」


 訳がわからないというふうに首をかしげるキリだが、次の言葉を聞いた瞬間――。


「だから~♪ キリちゃんが~♪ 女の子――」

「断る!!」


 玄関に向かって走り出した。

 うわ~。なんかこんな場面つい先日にもあったようなきが――。


「ただいま~。リクちゃ~ん。帰ったぞ~」

「おじゃましま~す」

「……おい。なんか騒がしいぞ?」

「天童さんのエ……18禁の本でも見つけたのでしょう」

「雑賀!! 俺の読んでいないやつないか? あったらコレで貸してくれ!!」


 玄関から五人の声がする。

 と言っても昨日、巻き込まれた人達だろう。

 にしても……キリさんも運が無いね~……。


「どけおまえら!!」

「? どうした? 何かあったのか? キ――」

「雑賀ちゃん! キリちゃんを捕まえて♪」

「――よしわかった」

「はぁ!? テメ――ッ!!  離せ!!」


 キリさんはさすがに五人相手では(かな)わなかったのか、捕らえられるのは早かった。


「さてキリちゃん♪ メ~イクアップ♪」

「ゼッテェェするかぁあああああああああああああああああ!!!!」


 キリが声を張り上げるのに、口をふさぐ母さん。

 夜中に、そんな大きな声、出しちゃいけないです……。

 ん? なんで僕が助けないかって?






……今の母さんを止められるわけないじゃん……。


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