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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第五章 自由という名の者による襲来
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二の太刀



「え……? 精霊ってお腹すくの?」

「少し、主の魔力をもらうが……よいか?」

「これから戦うんだけど……」


 これから戦うのに魔力をとられるのは少し困る。


「はて? 戦闘か? 連戦は面倒じゃのぅ」


 連戦?

 そんなにしただろうか?

 まずはじめにキリ、次に真陽……それくらいじゃない?

 まぁいいか。

 とりあえず、言い訳をしてみる。

 ……言い訳になるのは仕方がないと思ってください。


「しょうがないでしょ? 授業なんだし、テストなんだから……」

「最近は戦うこと以外に呼んではくれぬのか?」

「最近って……ボクら会ったの、昨日だよね!?」

「妾にとっては一年ぐらいだったぞ?」

「一年!? 確かに最初に比べてかなり親しくもなったけど、まだ一年って感じじゃないからね!?」

「間違えた。十六年じゃ」

「それボクが生まれたときからだよ!?」

「妾はその時から知っておったぞ?」

「ボクは知らなかったよ!!」

「あの頃のリクは可愛かったのぅ」

「あの頃って……」


 そんな年よりっぽいことを……。


「ええっと……そろそろ始めたいんだが……」


 先生が申し訳なさそうに聞いてくる。

 遠くでマナとキリは何やってんだかって顔をしている。


「すみません先生! ルナ。あとでクレープおごるから!」

「む。それならば仕方あるまい。絶対じゃぞ? ――χαρι――」


 ふぅ……。

 疲れた。

 なんで戦う前から疲れてるんだろ……ボク。

 こんなんで先生に勝てるかなぁ……。

 ボクたちの話が終わると同時にルナが刀に変わった。

 先生が目を見開いている。まぁ無理もないか。

 刀……だもんね。

 精霊使いが近距離武器を持っているんだもんね。

 ホントは精霊使いじゃないけど。


「行きますよ! 先生。〈スノウ〉」


 なんかボクの戦法ってワンパターンしかないかも……。

 昨日習い始めたばかりなのに手慣れた手つきで魔法を発動させるボクに感心する茄波先生。

 昨日の夜にルナと少しでも練習したのだ。昨日よりは綺麗にできていると思う。余計な魔力を使わずに。


 多少ボクの武器に驚いていたがすぐに攻撃をしてきた。

 ボクはそれを身体強化魔法で軽やかに避ける。空振りした拳は地面に当たり、爆散する。

 昨日のキリほどの速さじゃないから、それに身体強化もしているので避けるのはたやすいものだった。

 けれど、一撃でも当たったら過去、一番の苦痛を味わうだろう。

 それは嫌なので絶対に避ける。


「ふん。〈ロックブレイブ〉!」


 彼はボクめがけて上から下に拳をふるう。


『リク! 奴の後ろに回り込むのじゃ!』


 指示されるままに先生の後ろに移動したと同時に先生が地面に拳を叩きつける。

 するとどうだろうか?

 叩きつけた場所の土が岩になり、その岩が無数に天に向かって突き出してくる。

 先は尖がっていないので殺傷能力は無かった。


『リク』

「? どうしたの?」

『あやつは大地属性っぽいからのぅ。〈鏡花水月〉だけじゃK.Oさせる事が出来そうもないと思うのじゃ』


 ……なんかルナがK.Oとか言うとなんかおかしいと思うのはボクだけかな?


「なんだ? 誰かと話してんのか?」


 あ! 今さっき、声出してたか。

 ボクは先生に聞かれないために頭に中でルナと話す。


(うん。それでそうするの? ボクはこれくらいしか策がないんだけど……)

『二つ。魔法をおしえるぞ? 〈鏡花水月〉からのコンボ技じゃ』


 だからコンボ技って……。


 またボクの頭の中に図式が送られる。


 一つは鏡花水月より簡単で使いやすく、魔力消費量も少ない。

 鏡花水月は水がなくては発動できないが、これはなくても発動することができそうだ。


 もう一つは、とても難しい。

 使う魔力も膨大で、使いどころを考えさせられる魔法だった。


 でもこれを知ることにより、ルナがコンボと言っていた意味がよくわかった。

 〈鏡花水月〉ともう一つの簡単な魔法をあてて、最後の一つ。

 使いどころの考える魔法が容易にあてられそう。

 その分、全てを使うとなるとボクの魔力が空になる可能性がある。

 雑賀がボクの魔力は多すぎると言っていたけどどれだけあるか分からない。

 今ここで使って試すのもありかも知れない。


(えっと……ルナ。先生に使っても死なないよね?)

『安心せい。それぐらいの制御は可能じゃ。思いっきりやってよいぞ?』

(よかった……。そろそろ雪が完全に溶けてきたところだし……いくよ)


 これまで続けてきた先生の攻撃を一度、はじく。

 驚いた顔をしたが瞬時に変え、笑みを浮かべる。


「ふん。何かする気だな! 〈ロックブラスト〉」


 岩石が出現し、爆破して小さくなった岩がたくさん飛んできたがボクはそれを足に力を入れて後ろに跳躍して岩が当たらない距離をとる。

 そして発動。


「〈一の太刀 鏡花水月〉」


 魔力をバラ撒く。


「これは……おもしろい! こい!」


 ボクは走る。

 相手から見れば真正面から。


「〈ロックウォール〉」


 岩の壁が作られる。


 しかし、正面から来るボクは簡単に言えば幻影。

 そんなものはすり抜ける。

 先生はすり抜けたことに驚いたが、すかさず〈ロックウォール〉を解き、ボクの幻影をありったけの力で殴りこむ。

 ボクの幻影は消える。

 ボクの本体はと言うと……。


「そんなところにボクはいませんよ?」

「!?」


 先生の後ろに回っているし、二つ目を発動するだけの魔力も溜めた。

 先生はいまだにボクの姿を探す。

 〈鏡花水月〉は発動されたままだからだ。


 そしてボクは鏡花水月を発動させたまま、もう一つを発動する。

 体の中で、



 ――溜めた魔力を爆発させた。




「舞え! 雪とともに! 〈二の太刀 雪麗(せつれい)〉!!」




 きらめく雪の光が淡くボクの体から漏れ出す。

 そして――パァンッ。

 激しい音とともに先生を思いっきり蹴りあげる。


「グッ! 〈ロックアーマー〉!」


 先生の体が岩石で覆い尽くされる。

 防御に専念するのだろう。ボクとしてはありがたい。

 何も動かないのだから……。


 ヒット率は高くなる!


 ボクは高く蹴りあげた先生にさらに追撃をする。

 一太刀、また一太刀を、一秒の中で、何回も傷つける。

 ただ早く、速く、疾く、刀をふるう。

 その様子をあらわすなら……。



 ――空中乱舞。


「はぁぁぁぁああああああああ!!」

「グウォォオオオオオ!!!!」


 ルナの刀は魔力を切り裂く。

 先生の魔法で防げるはずもなく、徐々に岩の鎧を剥がしていく。

 本気でやっていればおそらく一太刀で全ての魔法を切り裂くだろう。

 徐々に剥がすという絶妙な制御をしているルナはすごいものだと思う。

 おかげで遠慮なく攻撃できる!

 そこで――キィィィン


 ――雪が散る。


 それは〈雪麗〉で使った魔力が切れたということ。

 そして空中乱舞中に溜めていた魔力が次に使う魔法の分、溜まったということでもある。


 しかし、ここでボクは地面に降り、集中させて溜めた魔力を霧散させ、攻撃の手をやめた。

 理由は簡単。

 ……すでに茄波先生の意識が無かったからである。

 意識のない体は地に落ちて、力なく横たわっている。

 息はしていると遠目でもわかる。

 生きていることは理解できたので安心する。


「え……っと……ん?」


 先生たちはいまいち状況が理解できず、生徒たちは目の前の一方的な戦いに何の考えもないまま呆然と見ているだけだった。


「少しは覚悟していたつもりだったけど……」

「さ、さすがに強すぎるような気がするなのね……」

「……ここまでとは思わなかった」

「さ、さすがあの御方の子なだけはありますわね……。魔力も桁外れですわ……」


 アキ、ハナ、白夜の三人は呟きあい、レナは、誰にも聞こえないようにつぶやいた。


「さすがリクちゃん~。ウチのおばあちゃんに一太刀あびせた人~」

「「「「えぇ!?」」」」


 マナの不用意な発言に4人も他の生徒同様に凍りついた。


「まぁ、当然の結果だな。センコーごときがリクに勝てるかよ」

『!?』


 キリの軽薄な発言は先生一同のプライドを傷付ける。

 こんなとこだけ見るとなんてひどい生徒だろうと思うのは仕方がない。

 キリは別に先生を罵倒したわけじゃないのだ。

 当然すぎる結果にただ言葉を漏らしただけだからだ。

 ただの一般の先生が、神に勝てるはずがないと。


 その肝心なボクは、というと。


「えっと……やりすぎ?」

『下級魔法使いでは二の太刀の最後まで意識を保つことができぬのか。かなり弱めたのじゃが……。実質、一割未満じゃ』

「これ以上強くしたら死んじゃうね……」


 ルナと戦闘の振り返りをしていた。

 周りの唖然とした空気など気にせずに……。


今回で第五章は終了でござます。


章の名前は……わかりますよねぇ?

誰をさしているか……。


カナ「ん? 誰なんだろうね♪」


…………ナゼイルシ。


感想や質問はいつでも待ってますよぉ

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