食堂にて
食堂に着くと、昨日マナちゃんが頼んだらしき所に行くと何にするかお婆ちゃんに聞かれたので、ご飯と味噌汁とスクランブルエッグを頼んだ。
一旦、奥に引っ込むとすぐに持ってきてくれた。
できるの……早いんですね……。
ご飯はホカホカで味噌汁からは湯気がたち上っている。
「ありがとうございます。……予想してましたか?」
「そんなことできやしないよう。ここでは奥まで注文が届くように風系統の魔法で聞こえるだけさ。あとは、どれだけ早くできるか……だね」
と、お婆ちゃんはにやりと口をほころばせた。
ボクは苦笑しながら受け取ってどこの席に座るか辺りを確認すると、数人の女の子たちの中に、藍色の髪の子を見つけた。
昨日はすぐ帰っちゃったから今日もすぐ帰ってしまうのだろうか?
ちゃんとしたお礼もまだ出し……。
ボクはその団体に近づいて行って声をかけようとしたところで――。
「あ! そこのあなた!! 天童リクちゃんだよね!?」
「へ? あ、はい。そうですけど……」
その団体の一人、栗色の髪のショートヘアに大きな眼鏡をかけた女の子がボクに気づいた。
「あら? ごきげんよう。リクさん」
「お、おはようございます。レナさん」
次にレナが挨拶してきて他の二人が……。
「その子がレナちゃんの言ってた子なのね!? かわいいのね!!」
「……かわいい。……百聞は一見に如かず」
挨拶というよりもボクの事を素直に評価していた。っていうかなんでボクの事知ってるの?
ボク……昨日、初なんですけど……この学校来たの……。
とりあえず、立ったまま、というのもなんなので、彼女らに許可をもらう。
「御一緒してもいいですか? ボク、今から朝食で……」
「いいよ! リクちゃんには聞きたいことがたくさん!! っていうかここで取材して来週のスクープにするわ!!」
え?
スクープ?
「噂のあの子を喋れるなら全然オッケーなのね!」
え?
噂のって、なんですか?
「……いい。……この二人が変な行動をとったら私に言って。……守るから」
え!?
変な行動ってなんですか!?
あと、守るってだれからです!?
「少々、小うるさい人……うるさい人が二名ほどいますが、気にしないでほしいですわ」
「なんで言い直すの!?」
「しかも悪くなってるなのね!?」
「どうぞ」
某二人をレナは華麗にスルーしながらイスを引いてくれた。
「ありがとうございます」
ボクはレナの引いてくれたイスに座った。
するとどうだろうか?
スクープとか言ってた眼鏡の人がボクを軸としたレナさんと対照的な魔所に移動してきて、噂のとか言ってた元気な人がボクの向かいに座り、守るって言ってた物静かな人がその人の隣に、つまりボクから斜め右前に座った。
これでボクの右にレナ。
左に眼鏡の人。
前に元気な人。
右斜め前に物静かな子という形になった。
「えっと、みなさん……。移動する必要があったのですか……?」
「だって話しにくいもん」「なのね!!」「…………(コクコク)」
即答だった。
女の人ってみんなこうなのかな……?
「さて、質問タイムといかせてもらうわ!」
え……?
もう……ですか?
「えっと……。食事しながらでいいですか?」
「全然オッケーだね! 代わりに写真撮らせてね!?」
なぜ眼鏡じゃない、元気なあなたが答えるのですか?
「かまいませんけど……。変な写真とかとらないでくださいね?」
「え……」
心底意外と言うような顔をしてきて驚いた。
「撮ろうとしてたんですか!?」
「だって目ぼしい情報が無くて暇なんだよ!」
開き直るな!!
「暇だからとかなおさらダメです!!」
「む~……。しかたないなぁ」
手に持っていたカメラを下ろす元気な人。
絶対言わなかったら撮ってた反応だよ……。
言ってよかった……。
ボクは安堵した後で、食べ始める。
そして眼鏡の人が叫んだ。
「さ~て! まず一つ目の質問!!」
今思ったのだけど、この人たちの名前知らない……。
質問される前に聞いておこ。
口の中に運んでいた食べ物を一度、全部喉を通す。
そして名前をボクは聞いた。
質問をされる前に……です。
「あの。ボクまだあなた達の名前を知らないのですが……」
「あ! そうだった! あたしの名前は武藤秋! アキって呼んでくれていいよ! 二つ名は【情報師】ね! 情報をいろんな人に伝わらせるのが私の仕事なの! クラスはイクウェンメント組!」
元気な栗色の髪の眼鏡をかけた彼女が言った。
二つ名が【情報師】か……。
さっきからスクープとか取材とか言ってるぐらいだからそんな気がしてたんだよね。
クラスは装備のクラスなんだ。
続いて……。
「私は鏡芝葉菜! ハナって呼んでいいのね! 二つ名は【緋色の花】なのね! よく二つ名はあってるのに名前と性格が全然違うって言われるのね! クラスはネイチャー組なのね!」
と、語尾に「~のね、~なのね」を付ける元気な子が出てきた……。
なるほど。
ハナって名前はおとなしそうな人につきそうなものですね。
【緋色の花】っていうと……アマリリスかな?
そういえばアマリリスは花言葉がおしゃべりだったような気がした。
薄い赤色の髪でこちらもショートヘア……って、あれ?
武藤と鏡芝って似ているような気が……。
あとで聞いてみよ。
クラスは自然型のクラスっと。
「……口無白夜。……白夜でいい。……二つ名は【影の守り人】。……クラスはアキと同じ」
ロングのストレートな黒髪の物静かな彼女が言った。
とても静かな人だけど、優しい声で、なんだか引かれそうだった。
二つ名が【影の守り人】ってどういう意味なんだろ……?
クラスは、アキさんと同じだから……装備型のクラスですね。
「わたくしは昨日紹介したとおり、レナ・ルクセルですわ」
一通り回ったね。
じゃあボクも自己紹介しなきゃ。
「はい。レナさんにむと――」
「ストップ!」
「はい?」
いきなり武藤に止められた。
何だろうと思っていると……。
「あたしたちの事は名前でいいって言ったわ!」
「そうそう! レナちゃんだけ名前ってずるいと思うのね!」
「……レナだけ……。……不公平」
口々に言ってきた。
まぁそれでいいならそうします。
「わかりました。レナさん。アキさん。ハナさん。白夜さん。ボクの名前は天童リク。まだ二つ名はありませんけど……。よろしくお願いしますね」
そうするとみんなはよろしくと言ってくれた。
基本いい人たちなんだなと思いました。
約二名ほど勢いが凄い人がいますけどね……。
でも母さん程じゃないからまだ楽ですね。
そしてボクはまだ食べ終えていない食事をとった。
お婆ちゃん。ここの料理、何食べてもおいしいですね。
こんど教えてもらおうかな?
そう思っていると、アキが身を乗り出す。
「そういえば二つ名持っていないんだね? どう? 今付けちゃわない?」
「え? そういうのって勝手に付けちゃっていいんですか?」
朝食を食べ終えたので、食器をお婆ちゃんに渡した後、この話に急にとんだ。
「うん。私たちだって自分で決めたのね!」
「うんうん。でも、あたしの【情報師】は人に認識されたからなんだけど」
「当たり前ですわ。情報ばかりを集めているアキにはうってつけですわ」
「……アキから情報をとったら何も残らない」
「そんな!? 酷いよみんな!! グレてやる~」
拗ねるアキにみんなは笑みをこぼす。
今の言葉も面白半分に言ってそうだったからだろう、見えていない所ではみんな笑っているように思える。




