よく遊んでた○○○
しばらくすると、雑賀は諦めたようにした。
「くぅ……。はぁ。仕方ない。キリ、参加する代わりにお前はリクを守ってほしい。ジーダスの話は良いか?」
「リクを……な。まぁいいだろ。ジーダスの話ならもうリクから聞いてる」
なんとか話はまとまってくれたようだ。
あのままだと部屋に冷気が漂っているだけじゃなくて銃撃と雷が飛び交っていたかもしれなかった。
「では、これからジーダスを潰すための人数を集める。まずいるのは俺、妃鈴、ソウナ、リク、キリだな。ここには居ないが彰楼グレン、ガルム、そしてデルタだ。デルタは戦えはしないからオペレーターだ」
「それだといくらなんでも少なすぎやしないか?」
頷いて同意する雑賀。
「妃鈴。他に集まりそうな者は?」
「いません。どの者も本部に忠実です。……どうしますか?」
「……そうだな。俺とガルムの部下にはもちろん動いて貰うから……」
「本部は強者揃いだと聞きます。大丈夫ですか?」
「そんなことを言ったら妃鈴。おまえも俺の部下だ」
「入社当初に【鉄の盾】に誓い、天童さんをお守りするのが私の役目です。ついて行くのは当然です」
「……悪いな。いつもいつも。だが安心しろ。まだ猶予は三ヶ月ある。それまでに力を増大させる。主に技術的にだ。魔術では勝てそうもないからな」
妃鈴の態度は秘書としてなのだろうかとも思ったが、なんとなくボクは違うなと思う。ボクは、雑賀と妃鈴の関係は、何か別の硬い物で繋がれているのではないかと思った。
決して壊れることのない……。
こうしてジーダス攻略メンバーが決まったところで――ピンポーン。
玄関からインターホンのチャイムが鳴る。
今はまだ夕食前だから来てもおかしくない時間だが、雑賀が席を立ち、玄関の方に向かって言った。
すると……。
「カナちゃん!? ……と先生!?」
「やっほ~♪ ちょっと真陽ちゃんが用事があるって言ったから戻ってきたよ~♪」
「悪いねぇ雑賀ぁ。こんな夜遅くにぃ」
「い、いえ! そんなことより用事……とは?」
母さんが戻ってくる意味なんて無いんじゃ……?
「まぁそうせかすなよぉ」
「そうですね。どうぞ上がってください」
そう言って部屋の中へと誘導した雑賀。
入ってきたのは母さんと真陽と……マナ!?
「あれ? マナちゃん? どうしたの?」
当のマナはよくわからないと言った風な顔でキョロキョロと周りを見回している。
真陽は雑賀さんに用事だろうと思うからわかるが、そこにマナが居ることに疑問を感じる。
「ところでリクちゃん」
「えっと……何? かなり顔が近いんだけど……」
ボク、何かしただろうか?
「どうしてマナちゃんが居ることを私に報告してくれないのよ~♪」
「え!? 母さんに言う必要はないと思いますけど!?」
母さんはボクの友達を全員知らないと気が済まないのだろうか……?
それだけ言うと今度は真陽の元に走って言った。
部屋の中なのだから歩きなさいと思うのだが……。
するとマナがボクに気づいて、近づいてきた。
「リクちゃん。あの人……誰? なんとなくリクちゃんに似てるんだけど……あれが妹?」
正体を知りたいマナ。それにボクは苦笑いしかすることができなくて、キリがボクの代わりに言ってくれた。
「リクの母だとよ」
「……え? ギャグ?」
目を真ん丸にするマナ。そしてここで苦笑いから治ったボクがしっかりと言っておいた。
「マナちゃん。キリさんの言うとおりです。あれがボクの母、赤砂カナです」
「……え?」
昼同様、またもショートしてしまったマナ。
考えがまとまらないらしい。仕方がない。
ボクもあんな子供のような母親のおかげで三姉妹と間違われる始末なのだから。
そこで母さんがこちらに気づいたのか、早足で戻ってきた。
「さっきはまだ挨拶してなかったけど久しぶりね♪ マナちゃん♪」
「久しぶり……?」
え? 母さんとマナは昔にあったことがあるの……?
「ええ、そうよ? 昔にあってたわよ~?」
今、ボク言葉に出してたかな……?
「なんだぃ? マナもリクも憶えていないのかぃ?」
今度は真陽が近寄ってきた。
「え? どういうことですか?」
説明を求めます。全く話についていけません。
「まぁ無理もないねぇ。小学生の時に何日か会ったぐらいだしねぇ。いや、毎日のように遊んでいたかなぁ?」
「毎日よ♪ リクちゃんが小学生の時によく遊んでいたのを覚えているわ~♪」
「……しょ、う……が……くせ……い?」
「ホントに憶えていないんだねぇ。隣同士の家で遊んでいたじゃないかぁ」
「リクちゃんが忘れることは仕方ないわ♪ だって記憶、マナちゃん自身が消して言っちゃったもの♪」
「つまり……マナちゃんが言ってた昔の幼馴染って……」
「リクの事か?」
キリさんと顔を見合わせる。マナはと言うと……。
「…………」
ボフッ
マナの顔が一瞬にして髪と同じぐらい赤くなった。
「あの話はなかったことにしてぇぇぇぇぇ!!」
マナ……暴走しました。絶叫が部屋中に響いて思わず耳をふさぐ。
雑賀と妃鈴とソウナは話についていけず。
キリさんは――カチッ。
『私の大切な人に似ているようなき――』
片手にボイスレコーダーらしき物を持っていてボタンを押していた。
「ちょ、何やってんのよ!? 今すぐ消せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
マナがキリにとびかかる。
キリはそれを難なく避けてマナを抑え込んだ。
ものの数瞬にして、マナの敗北。早いね……。
勝敗は完全なる体格の差だろう。
さすがにかわいそうと思ったのか、ただに気まぐれか、ボイスレコーダーを止めて懐にしまった。
だがそれと同時にマナに対する弱点を堂々と持ち歩いていますということになる。
マナがかわいそうだと思ったけど僕はなにもできない。
母さんと真陽さんはそんなことを放置で、楽しく笑い合っている。
……ホント、母さんと真陽さんってどんな関係?
隣の家同士だっただけとは言い難い雰囲気に、つい質問してみたくなった。
「あの……真陽さん」
「ん? なんだぃ?」
「ウチの母さんと、どういう関係ですか?」
真陽さんは思い出したように手をポムッとたたく
「ああ。まだあんたには言ってなかったねぇ。カナちゃんとは昔からの親友でねぇ。戦友でもあったんだよぉ。年は私のほうが上のはずなのに主導権はいつもカナちゃんだよぉ……」
「逆に聞きたいです。母さんから主導権を握れる人が今までいましたか?」
「だよねぇ……。リクはよく母さんのことわかってるじゃないかぁ」
「ちょっと~♪ 私が目の前にいるじゃない♪ これでも私から主導権を握られた人がいたのよ~♪」
え? いるの?
「リクちゃんがひどい~。む~~~~」
頬を膨らませる母さん。こういう仕草をするからよく近所に3人姉妹とか言われてたんだよね……。
しかもなぜかボクが長女という認識でした。
理由は……一番大人びていたからだそうです。
そのたびにボクは男の子ですし、この人は母さんですって言ったか計り知れない。
それでも近所の人は「それでもねぇ」と言っていたのを思い出す。
それにしても母さんと真陽が親友だったなんて思いもよらなかった。
これでボクを知っていることにも合点がいった。
彼女は昔からボクのことを知っていたのだから。
ボクの無茶苦茶な理由で魔法とかを教えてくれると承諾してくれたのはこのためだったのかな?
正確にはまだ承諾していないが……。
承諾するかどうかで剣を出してきたときにマナ入ってきたし。
「さてカナちゃん」
「ん♪ なぁに♪」
「リクをちょっくら借りてくよぉ」
「あら♪ 用事ってそのことだったのね♪」
「頼まれたからんねぇ。昔のカナちゃんみたいに」
ボク……そんなに似てましたか?
そして母さんも誰かに教わったのか……。
母さん、自由だし……独学でそこまで強くなったと思いましたよ……。
「あたりまえじゃない♪」
母さんは意味もなく奥に歩いていて勢いよく振り向いた後、自信満々に声を放った。
「私の娘だもの♪」
「ボクは息子です!!」
どんな時でも、母さんは母さんだった。
余談
妃鈴さんが娘じゃないのですか? と聞いてきたのでボクは説明をしてあげた後、大変ですね……。と哀れみの目で見てきた。
助けては……くれないんですね……。
サブタイトルの○○○には幼馴染と入りますよぉ。




