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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第五章 自由という名の者による襲来
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生きる都市伝説



 遡ること数時間。場所は俺が指揮を執る事務所。


「よし、終わった!」


 そこで、背伸びをして、次に固まった筋肉をほぐす。


「お疲れ様です。天童幹部。丁度事業時間が終わった時間です」

「嘘だ!!」

「嘘です」


 …………冗談きついぞ、妃鈴……。


「休憩した効果があったようですね。あれから数時間しか経っていません」


 時間を確認する。


「そうか……こんな時間か、そろそろ学校も終わる時間だ。一緒に帰らないか? 願い事もあるからな」

「そうしましょう。あとでガルムさんに言っておきます」


 そうして妃鈴は俺の書いた書類を丁寧にかたずけ、腕に抱える。


「ありがたい。では支度をするので先にホームに行って待っていてくれ」

「わかりました。失礼いたします」


 そうして妃鈴は一礼して出て行った。


「ふぅ……」


 一旦イスに座る。

 コーヒーが注ぎ直されていたのでそれを飲み干した。

 数時間前だったので、冷めていた。そのため、大変飲みやすかった。


(さて……荷物を片付けるか……)


 イスから立って荷物をまとめて鞄に放り込む。

 そして夏では暑そうな枯れ葉色のコートを羽織る。

 風魔法を使って、コートの内側だけにそよ風を吹かせているので、暑くは無い。

 このコートは俺の象徴(シンボル)のようなもので、どの時期も外すことはできない。

 準備完了。ホームに向かうか。

 俺はその場を後にした。


 ホームに着くと、そこではポニーテールの髪型に、Tシャツとジーパンというシンプルかつボーイッシュなスタイルの彼女が待っていた。


「早いな」

「天童さんに先に待っていてくれと言われたので」

「ふむ。すまない」

「いえ。いつものことですから。待つのは慣れています」

「そういってくれるとありがたい。さぁ、行こうか」

「はい」


 ホームを出て事務所を出る。

 街は下校ラッシュで学生が多く行きかっている。

 学生ということで、ふと先生(真陽)の例の言葉を思い出す。


「そういえば妃鈴」


 歩きながら話し始めた。


「なんです?」

「【自由な白銀(フリーダムシルバー)】を知っているか?」

「ええ」

「ホントか!?」


 まさか知ってるとは思わなかった……。

 言ってみるもんだ。


「ですが、あまり詳しい事は知りませんよ?」

「教えてもらえないだろうか?」


 今は少しでも【自由な白銀(フリーダムシルバー)】に関する情報が欲しい。


「かまいませんが……」


 言葉を濁す妃鈴。どうしたと聞くと、


「自由な白銀とは都市伝説と、同じようなものですよ?」


 どういうことだ?


「いるかどうかわからない人なのです。もっと言うなら、神話のような人なのです」


 ますます意味がわからん。

 いない可能性があるってことなのか?


 しかし、先生は逆らうなって言っていた。

 少なくとも実在はしている人、ということはわかる。


「聞きますか?」

「もちろんだ」

「では……」


 彼女は一度、息をのむと、話し始めた。


「彼女の姿を新明に見た人はいません。見ていてもそれが彼女の姿だとは思いません」


 彼女……ということは女性ということはわかっているのか。

 ……うむ。

 胸がでかくて、美人ならば絶対に俺は逆らわないだろう。


「天童さん。私の最大火力魔法。喰らってみますか? 結構痛いと思いますよ?」

「やめようか……痛いでは済まされない。あきらかにミンチになる」


 俺は彼女の魔法を知っている。

 それも最悪な形で俺は喰らったことがあり、入院生活一週間というかなり酷い目にあった事がある。その時、部下にかなり心配された物だ。

 ちなみに彼女の言う『火力』と言うのは間違っていない。

 普通は最大魔法で良いのだが、彼女の場合はそこに火力が入る。


「はぁ……続けますよ? 見ていてもそれが彼女だと思えない理由の一つとして、それは姿が小学生と同じで、無邪気な少女としか感じないからです」

「なるほど……つまり写真受けはするな……」

「天童さん。上へ飛ばしましょうか?」

「まて! 早まるな!! 君が言っている上とは天国の事だろう!? まだ死にたくはない!!」

「わかっているならしっかり聞いていてください。いつも元気で白銀の髪をはねさせたりしていて『遊び』をこよなく愛する人です。それゆえ仕事はほとんどせず。だけど英名持ちの【終焉を知らせる者(ラグナロク)】にも匹敵する力を持っているそうです。全て噂ですが」

「なッ!?」


 【終焉を知らせる者(ラグナロク)】に匹敵するだと!?

 英名持ちの中でも一番強いと言われているのがラグナロクだぞ!?

 しかもラグナロクが使う魔法の属性が太陽属性という噂。

 すべてを跡形もなく消しさる、炎系統の最終属性。

 扱うことができる奴はたいてい英名持ち。

 まれに英名じゃなくとも使える奴はいるが太陽属性に耐えることができなくて自滅する。


「しかし、彼女の性格ゆえ、遊んでばかりだから知らない人は多いはずです。かつて最強と言われていたかの有名な例の組織が潰れたのは、あの【黒き舞姫(ブラックダンサー)】だけでなく、【自由な白銀(フリーダムシルバー)】も一枚噛んでいるそうです。その時から二人は英名持ちですから、英名持ちが最強の称号になったのです」


 ……おそろしいな。彼女は……。

 そうか。例の組織を潰す前から自由な白銀とは一緒にいたから彼女の事をよく知っているんだ……先生は。

 玩具……確か先生はそう言っていた。

 本当にされるかもしれないな……文字通りに。


「というか、詳しいな。妃鈴。あまり知らないと言ったじゃないか」

「そ、そうでしたっけ? まぁ女の人なら気になる都市伝説だからじゃないでしょうか?」


 そうなのか? そういえば前にデートした女の子も都市伝説とやらが好きだったな。何人かそういうのがいたら知っていたのだろうか……?


「ところで天童さん。なぜこのような質問をしたのか、聞かせて貰ってもよろしいでしょうか?」

「あぁ。先せ……桜花魔法学校の校長、【黒き舞姫(ブラックダンサー)】に義妹を送った後に話をしたんだ。そしたらこう言われた。【自由な白銀(フリーダムシルバー)】の敵に回るな、と」


 指を顎につける妃鈴。


「なるほど……名案ですね。その言葉は。そしてその言葉は彼女が存在すると言っているようなものですね。そして天童さんの義妹さんと関係していると……そこまで考えられますね」


 ああ。と、一言だけ言った。

 しばらく歩くと家が見えてきた。

 そこにはリクと男――、


(なんだと!?)

「雑賀さん?」


 ご、ゴホン。黒い車とその車に寄り添っている黒いスーツ姿の女性がいた。

 ふむ。立派な胸だ。


「天童さん」


 ……じゃないな……。

 どうしてこの状況になったのか気になったのでとりあえずリクに声をかけてみるか。

 決して妃鈴が声をかけてきたからではない。


「お~い。リク~」


 リクはこちらの声が聞こえたらしく、まっすぐこちらを見てきた。

 幸い、周りには誰もおらず、動物の(、、、)一匹もいなかった(、、、、、、、、)

 だから大声でリクを呼んだのだ。


 そこでリクの影から一人の少女がリクの腕の中から覗いてきた。

 その姿は白銀の髪を風で揺らしている。

 小学生ぐらいの背の高さ。


 …………?


 …………小学生?


「な――ッ!?」


 気づいた。

 小学生ぐらいの背の高さで、白銀の髪で無邪気そうな顔が浮かんでいる彼女は……。

 妃鈴も気づいたのだろうか。驚きを隠せていない。

 普段、彼女は冷静なのだが……。

 俺はゆっくりとした足取りでリクの前に立つと、少女に聞いた。


「お……おまえ……まさか……」


 恐る恐る、二つ名を口にしてみる。


「じ、じじ自由な白銀……。ふ、フリーダムシルバー……か?」

「「え?」」


 リクと男が声を漏らした。

 あたってほしくないと心のどこかで考えていた。


 しかし、そんな考えとは裏腹に、少女は楽しそうに返してくれた。


「今は都市伝説程度にしか覚えられて無いはずなのにな~♪ 正解♪ 私は赤砂嘩来(かな)♪ リクちゃんと、ユウちゃんの母親で♪ 二つ名、自由な白銀で♪ 英名だとフリーダムシルバーなカナちゃんです♪」


 堂々と楽しく自己紹介した少女……いや、彼女の言葉に、しばらく固まっている事しかできなかった。


事務所の事業終了時刻は23時です。

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