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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第五章 自由という名の者による襲来
29/96

桜のバッチ



 キーンコーンカーンコーン


 場所を戻って桜花魔法学校。

 さっきのチャイムは帰りの(ショート)(ホーム)(ルーム)が終わった合図。

 つまり下校時間。

 一斉に学生が帰る時間――のはずだった。


「天童さん! 一緒に帰りませんか?」

「ボク……北に行きますよ?」


 ボクは即答する。

 そして、この言葉を使えば帰る方角が違えば、諦めるだろうと思っていた時期がボクにもありました……。


「かまいません!」

「俺、方向逆だけど一緒に帰りませんか!?」

「送らせてください!」

「はい!? あなたたち本気ですか!? わざわざ遠回りするんですよ!?」


 予想を(くつがえ)されました。

 まさかわざわざ家から遠くなるようなところについてくる人がいるとは……。


「はいは~い。リクちゃんはウチと一緒に帰るんだよ~」


 とボクの腕をとらえてさっそうとその場を去――れなかった。


「そうはさせないぞマナ!」

「リクちゃんとは俺が一緒に帰るんだ!」

「何を言うか! 俺だ!」


 またかと思い今朝の騒ぎを止めてくれたレナの机がある方を見るが、もぬけの殻。

 誰もいなかった。

 どうしよ……どうやってぬけようか……。


 マナに視線を送るがマナは男子と言葉の格闘中。もうすでに試合は始まっているらしい。気づくはずもなかった。

 ボクが途方に暮れていた時、助けてくれたのはとてつもなく意外な人物だった。


「おい。このクラスに天童リクは今いるか?」

「え?」


 一人の男子がそちらを向く。

 その男子は見るからにどんどん顔を真っ青にしていった。


「あ……ああ、あそこの、ひ、人だかりです……はい……」

「あ、そう。じゃあどけ」


 それだけ言うと、言われた男子は情けない声を出してこの教室から出て行ってしまった。

 更に人だかりに近づく。


「おまえら、邪魔。どけ」

「は? なに言……ッ!?」


 ササッと避ける。

 次にいる奴の肩をたたいた。


「? なん……ッ!?」


 またもササッと避ける。

 さすがに異変に気がついたのかほとんどの人がその男を見る。



「「「「「「「「――ッ!?」」」」」」」」



 ザザッと人だかりがその空域から遠ざかる。

 もうおわかりだろう。

 その男こと【一匹狼】が乗り込んで来たのだ。

 彼の事をよく知らない人は遠ざかるにきまってる。


「あの……どうかしたんですか?」


 ボクが彼に質問すると、他のところから声がとんできた。


「リクちゃん! そいつは仙道桐といって――」


 その説明はもうしたので省かせていただきました。


「お、おまえ! 我らの女神に変なことしたら許さねえぞ!?」


 机に隠れながら言う台詞じゃないだろう。


 ――って言うか我らの女神ってなに?


 ボクはそんなのになった覚えはないんだけど……。


「私の妹にふれないでよね!」


 机には隠れていないけどさっきの人より遠いし、あなたの妹でもありません。

 キリはハッと鼻で笑って口元を緩ませた。


「おまえ。いつもこうなのか?」

「むこうのほうが、まだよかったです……」


 もう諦めたようにした。

 マナはそのキリの横に出てくる。


「あんた。よくここに入ってこれるね。ウチなら無理だね~」

「クハハッ! 俺は一匹狼だ。そんなこと関係ねぇ。それより渡すもんがある」


 渡すもの? とボクは首をかしげる。

 さっき話す事はすべて話して、その後も時間があったはずだ。

 今になって?

 何か忘れていたことがあっただろうか?


「あぁ。勝負の決着ついちゃったもんね~。リクちゃんの勝ちで」


 と、マナは納得したようで何度もうなずいている。

 周りの反応はまたボクたちとは違う反応だった。


「一匹狼がプレゼントだと!?」

「我らの女神は凶暴な狼でさえも手懐けたのか?」

「さすがだ! 我らの女神!」


 と、訳のわからんことを言う男たち。女子たちは……。


「私の妹にプレゼントなんて! だめよそんなの!!」

「リクちゃん! 受け取っちゃダメよ!?」

「私の妹を汚さないで!」


 キリがどれだけ悪評価も持っているのかよくわかりました。

 あとあなた達の妹でもないです。

 なんでみんな外見で、人の許可をするんだろ?

 外見よりも中身なのに……。

 今はそんなことよりも渡すものとやらのほうが大事だが……。


「手ぇ出せ」


 言われたままに手を出すと周囲からヤジがとんできたが、キリは気にしていない風だった。


「ほらよ」


 手を重ねてきたと思ったら何かを渡された。

 キリが握っていたのでちょっと生温かかった、金属だった。

 そしてそれは、安全ピンのついたバッチであったことが分かり、桜色の花びらが綺麗に描かれていた。


 ――とそこで……。


『はぁ!!!!????』


 周囲のヤジがとばなくなると同時に驚いたとばかりに声を出し、体が硬直したクラスメートたち。


「え? なに?」


 ボクはその反応についていけず、全くよくわからなかった。

 まだ、一日目だしね。

 普通は一日目にこんなにハプニングは起こらないだろう。

 なんでボクばっかこんな目に会うんだろ……。

 向こうの世界でも一日が長かったのをよく覚えている。

 現実逃避していると、マナがそのバッチの説明をしてくれた。


「リクちゃん。そのバッチはね? この学年で一番強いですよ~って証なの」

「ふ~ん。そうなんですか」


 そんなバッチがこの学校にはあるんだ……。

 そこでふと疑問が浮かぶ。


「……ん? ……へ!?」


 つまり……。


「ボクが一学年で一番強いってこと!?」

「うん。やったね」


 親指を立てて、グットをするマナ。

 周りの空気はそれを合図にはじけ飛んだ。


「我らの女神が一匹狼を倒した!?」

「おい! 酒を持ってこいーー!!」

「祝杯だー!! 今日は寝ねーぞ!!」

「「「「おお――――――!!」」」」


 いきなり盛大な大歓声を上げるクラスメイト。


「ちょ、ちょっと待ってよ! たしかにボクはキリさんに勝ったけど、たまたまだよ!! っていうかお酒は二十歳になってからです!!」


 必死に弁護や注意をするがただの一人の声に対し、何十人の声が上がっているのが聞こえるはずもない。

 そんな中。キリがボクにさらに近づいてきて囁いた。


「今の内に出るぞ。困っていたんだろ」


 ボクは不本意ながらも、その指示に従った。マナの手を引っ張ると、マナは頷き、一緒に外に出た。

 廊下にはそんなに人はおらず、学校の外にスムーズに出ることができました。


(キリさんがいたって事もあるけどね。きっと……)



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ここまでくれば大丈夫だろ」

「た……たしかに……。ここなら……はぁはぁ……魔法使えば……はぁはぁ……逃げれるもんね……」

「あの……大丈夫ですか? マナちゃん、息があがってますけど……」


 マナが息があがっている反面、ボクとキリは息一つもあげていない。

 いつも家に帰った後、ジョギングしていたし、体力作りはいつもしていたため、体力はとてもある方だ。


(やりはじめた理由が筋肉がほしかったからなんて言えないもんね……)


 やりはじめて数ヵ月、筋肉がついてきたと思えず、やりはじめる前と同じ体系だった。

 ……同じ体系だったけど、ちょっと肌が柔らかくなったような気もするし、友人が前にもっちりとするようになったと言われた気がする……。

 力もちょっと強くなったけど、体系が変わっていなければ意味がないということで、何個かやめたけど、いま だに、ジョギングと腕立て、腹筋はかかさずやっている。

 汗かいたりすると、ユウや母さんに「いい匂~い♪」とか言われたり、体格に変化がなくて萎えるけどね……。

 ――閑話休題。


「…………」


 不思議がるをボクみてマナが、なんでそんなに体力あるの? というような目で見てきた。

 さっき説明したので省かせてもらえます。

 それに逆にマナは体力無さ過ぎじゃないですか? と答えそうになった。


「さて……帰りましょうか。二人とも、方角はどっちですか? 北だったら町案内ついでに一緒に帰ってほしいのですが……」


 まだこの街の右も左も分からないからね、と付け足しておく。


「ウチは大丈夫だよ~。帰る方向も一緒だしね~」

「俺もついて行ってやるよ。帰る方向は北だしな」

「え? 確かあんたの家ってみな……」

「おまえら二人だと人攫(ひとさら)いにあいそうだしな!!」


 え……いるの? 白昼堂々と……

 焦りながら言うキリをマナがニヤニヤしながら見ている。

 なんだろ……?


「キリぃ。あんたってまさか~」

「違う!! 誰が男なんかに!!」

「男? 誰もそんなこと言ってないよ~?」

「黙ってろ!!」


 あの……話が見えません。

 マナは更にキリに向かってニヤニヤしていた。


「へ~い。そういうことにしといてあげる~。でもとりあえず。人攫いなんて、私が倒しちゃうもんね」

「俺にも負ける奴が何言ってやがる。むしろリクに守られんじゃね?」

「そんなことないもん!! 絶対に守れるもん!!」

「ハッ。ザコはザコなりに黙ってろよ」

「誰がザコよ!? 私はザコじゃないもん!!」

「弱い奴ほどよく吠えるってな」

「むっか~~~~!!」

「えっと……二人ともやめようよ。ケンカはよくないよ?」


 はぁ~。これからこの二人のケンカを止めるの、ボクの役目かな~。


「リクちゃん! こいつはリクちゃんも可愛いから攫われる対象になるって言ってるんだよ!?」

「はい!? ボクは可愛くないです! っていうかそれ言われて嬉しくありません!!」

「おい。テメェが可愛いなんて一言も言ってねぇよ」

「ウチは誰からどう見ても可愛いもん」


 マナは自信満々にというように()を張る。


「「…………」」

「何その目!? リクちゃんまで!?」


 胸を張るということはつまり、胸を強調するということで……。


「えっと……ごめん」

「あ~。さっさと帰るか……」

「リクちゃん!? 謝らないでよ!! おまえも無視するなああああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


 どんどん歩を進めるキリを追うようにしてボクとマナも歩いて行った。

 マナの目尻が少し潤っていました。


 ちなみにその後、マナの視線をしばらくの間、感じていました。

 特に胸のあたり。

 ボク、男の子なんだけど……。今は女の子だけど。


マナの胸のサイズはえふごふぅ!(ドサッ

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