三者三様
四千文字超えちゃった……。
ボクはそれらを思い浮かべ、ハッとして頭を振る。
とにかくここはのりきらないと!
「雑賀さんが外しちゃダメだって……」
「今さっきまで気づかなかった人が言える台詞じゃないよ、リクちゃん!!」
くッ! またしても痛いところを突いてくる!
「妾も見てみたいぞ。主の本来の姿」
ルナまで!?
「な、なに言ってるの二人とも……ボクはこの姿が本当の姿だよ?」
「嘘だね!」
「嘘じゃな」
ルナまで~~~~っ!
どうしよ……!
このままじゃ……バレちゃう!!
「さぁ!」
「隠し事とは、男らしくないぞ? リク」
くッ! 男らしくないなんて!
ボクだって男だ!
やってやろうじゃないか!
ハイ。後悔しました。公開しただけに。
うん。つまんないね。ごめんなさい。
そしてルナは答えるごとにニコニコしていたのですが……。絶対確信犯ですよね!!
「わかりましたよ! とりますよ? どうなるか知らないけど」
そして指輪を勢いよく取り外す。
外した指輪から、眩い光が飛び出した。
「うわ!」「きゃあ」「む……」「へ~」
とっさに目を隠す四人。
光がおさまったので、少しずつ目を開ける。
「い、いったいなにが……?」
周りを見渡すが特になにも変化していない。
「う……もう大丈夫?」
「さすがの妾も眩しかったぞ」
目を開ける二人。
そしてそこで見たのは――
「リ、リクちゃんの髪が短くなってる!?」
「ふむ……体格はそんなに変わっておらぬが胸が無くなっておるな……」
「あ~。確かに。だがそんなに違和感ねぇな」
「へ?」
自分の体をペタペタとさわる。
肌の弾力はそこまで変わってないがさっきよりは少々堅い。
胸の凹凸もないし、髪もマナの言うとりに肩くらいまでに短くなってる。
……ということは……戻ってる!?
やったーと両手を上げて喜びたい半分。
ヤバッってすぐにここから逃げたくなる半分が、ごちゃ混ぜになって頭をぐるぐる回す。
右往左往中です。
あぁ……ボクがなんでこんな目に……。
男に戻ったボクの外見はショートヘアで、胸もなくて……だけど桜花魔法学校の女子高生姿だったため。
どこからどう見ても女の子にしか見えなかった。
「それにしてもあんまり変わらないね~。もうちょっと筋肉質になってるのかと思った~」
「確かに変わってねぇな。けっ。つまんねぇの」
「元々素材がいいからあんな美少女に……? ホントに男の子なの? そしたら女の子にケンカ売ってる?」
「う……さっきのは……そう! 髪を伸ばしたり、胸を大きくしたりするものだから……もとから女だよ!」
言葉を詰まらせながら答える。
男のプライド、ズタズタです……。
なんで男に戻ってるのに女って言わなきゃ……。
そしてマナ。ケンカを売ってはいません。ボクだってなりたくてなったわけじゃないです。
「ならば体の隅々まで調べさせてもらおうか。女同士ならば問題ないじゃろ」
「大問題ですよ!?」
「リクちゃんに一票~」
「おまえ、ホントに精霊か?」
「なんと!? マナが寝返ったぞ!」
「いや……ルナ……もう少し自重しよ?」
「ふむ。冗談は置いといてじゃ」
あなたの場合。冗談には聞こえないんですが……。
ルナが真剣な顔をして話し始める。
「真面目に答えよ。妾はリクが男でもそう咎めまい。女となったのは何か重大な問題があるからじゃろ? マナもそれだけでは嫌ったりせんじゃろ」
話をマナにふる。
マナはそれを見越していたようにルナの言葉を継いで話し始める。
「ウチはむしろ助けたいよ……。だって……その……リクちゃん。ウチの幼馴染に似てるし……」
「ほぅ。その幼馴染ってどんな名前の奴なんだ?」
「えっと……その……小学生のときだったから……わす……?」
「「?」」
三人して今のマナに質問した人をみる。
意外な人物がそこにいた。
「い、いつからそこに!?」
「なんじゃおぬし! もう動けるのか!?」
「クハハハ! 今気づいたのかよ、てめぇら」
そこにいた人は黒髪黒瞳で今さっき一学年最強と言われた人がまさかの戦い初心者のボクに負けたという伝説を作った【一匹狼】こと仙道キリだった。
「おい。いま失礼なこと考えなかったか?」
あなたまでボクの思考が読めるのですか?
そして失礼って言葉知ってたんですね。
「たくッ。人がせっかく質問の答えを言ってやろうかと思ってたのによ」
姿は痛々しく、血が流れていて、フラフラで、立っているのが不思議なくらいだ。
しかも普通に話しているし……。生命力(っていうのかな?)がとてもキリさんはあると思う。
そして……質問の答え……言いたいのだろうか?
仕方がない。
背が彼のほうが高いので首を上げようとしたらいまだに体が悲鳴をあげる。
仕方がないのであまり首をあげないようにして目だけを上げる。
「えっと……いつからここにいるんですか? 傷……大丈夫ですか?」
「「!?」」
鼻を押さえて、フラリと倒れそうになるマナ。
キリは後ろを向いて手で顔をおおっている。
「? あの……どうしたのですか?」
不思議に思い、二人をみる。そしたらルナが言いずらそうに聞いてきた。
「あー……リク? その……ワザと狙っておるのか?」
「え? 何を?」
(主って天然なのじゃろうか? 背の低い主が自分より20cmほど背の高いキリを上目使いになるじゃろうし……。悩殺じゃな。キリが後ろ向くのは当然じゃな。男なら。マナは……可愛いとか思ったのじゃろ)
首を傾けているリクを見ながらそんなことを思うルナ。
「あの……質問は? 答えてくれないのですか?」
「教える! 教えるからちょっと待ってろ!!」
あ! 待ったくらいました。
どうしたんだろ……?
ボク……何かしたかな?
普通に聞いただけなのに……。
「ウチ……一匹狼のこと、ちょっと怖いって思ってたけど……そんなに怖くないかも……」
「あぁ?」
「やっぱ怖い……」
マナ。早くも撃沈。
「よし! いいぞ。答えはな……」
ここまでくるに長かったね……。
なんでこんなに長かったんだろ?
「まず、いつからだが天童リクが――」
「ボクの事はリクでいいです。みんなそう呼んでますし」
「あ……、そう。で、リクが指輪を外すちょっと前からだよ。傷は大丈夫だ。戦闘すればこれくらい、いつもだっつぅの。いちいち敵だった俺の心配してんなよ。身がもたねぇぞ?」
「う、うん……。ありがと……」
身が持たないと忠告する彼にお礼を言っておく。
彼……実は優しいんだろうか?
こんなに心配してくれて。
もしかして世話好き?
とりあえず。この人はホントは怖くない人だって、ボクの中では決まっしまった。
もう怖くない。
「で? どうなのよ? その昔の幼馴染ってやつの名前は?」
「う……それは……」
「まぁ、いいや。興味ねぇし」
《ガーン》とマナの背中に青い空気が舞い降りる。
「リク。おまえ指輪つけておいた方がいいんじゃね?」
「え? どうして……?」
ここにいる人は半ばボクのことバレちゃってるし。
はめる必要無いと思うのだけど……。
「ここは森の近くだから平原に誰もいないとわかってても森から見られてるかもしんねぇからだよ。そんなこともしらねぇのかよ。天童のくせに」
む……。なんでこの人はこんなケンカ腰なんだろ……。
それに天童のくせにって……。
ボクは義妹って設定だ。あくまで設定です。そこのところをよく知っておいてください。
学校で教わり始めただけで、まだ序の口なのだ。
でもとりあえず。指輪をはめておく。
彼の言うことは正しいと思ったからだ。
カッと光を放つと次のときには女になっていた。
「クハハ! やっぱしその方が可愛いな」
「はい!? 何言ってるんですか!? 全く嬉しくないです!!」
「気にすんな。ただの世辞だよ」
「ウチ……その言葉を自分から言う人初めて見た……。って言うかなんでリクちゃん顔赤くしてるの?」
「うぇ!? 赤くしてないですよ!?」
「妾はそろそろ本題に入りたいんじゃが……」
不服そうに話すルナ。
たしかに。そろそろ本題に入らなければ……。
「しょうがねぇな。ほら。言えよリク」
「いきなりリクちゃんを呼び捨て!?」
「マ、マナちゃん。いいから、それくらい」
しかしそんなことを言うならなぜさっき言わなかったのだろうか?
「おぬしら……いつまで脱線するつもりじゃ!!」
ルナが痺れを切らして怒鳴ってきた。
いつもはそんなに怒りそうな性格じゃなさそうなのに……。
マナはうなだれているが早くも立ち直り、ボクに視線を送ってくる。
キリは舌打ちをしつつも静かにしてその場に座る。
……と思ったが血が無くて体が持たなかったのか、その場に寝転んだ。
それでも話には興味があるのか、目をこちらに向けている。
「リク。正直に答えよ。男なのじゃろ?」
ルナ。それもう決めつけてるよね……?
さて……ホントの事を言うか嘘を言うか……言わないか……。
ルナは信用できる。
マナもあんなに慕ってくれるのだから信用できる。
だが、今度の問題はキリだ。
興味本位で聞いてきているので口告げをしないとは限らない。
……でも。話してみてわかった事がある。
彼はホントは友達がほしいのではないかな?
ほしくなかったら敗北した後、わざわざボクたちに話しかけに来たりしないだろう。
みんなして彼を怖がっているけど、そのせいで彼には友達がいないって感じがする。
話してみたら口こそ悪いものの、見方を変えて聞くと、積極性のある発言って感じだし……。
ならば少し釘を刺すぐらいでいいだろう。
結論が出る。
ボクは、この人たちを信じて……。
話すことを決心する。
「これを聞くともう後戻りできませんよ? 聞けば、あなたたちの人生をぐちゃぐちゃにしてしまうんです。他の人に話してもいけません。とても危険な事で、一つの企業を敵に回すようなものだから……友達に……迷惑をあまりかけたくないです」
これだけ言えば、離れる人は離れてくれるだろう。
ボクはそう考えて言っておく。
彼らの人生の責任はとれないと……。
今ならばまだ引き返せると……。
そう伝える。
しかし、彼らの言葉はボクが期待していた通りの言葉だった。
「妾はもとより主に仕える契約神霊じゃ。最後まで付き合うのは道理と言うものじゃ。リク、妾を使いこなせると、期待しておるぞ?」
とルナ。
最後まで付き合うと言ってくれた。
「後戻りだぁ? クハハッ! 俺の辞書にそんな言葉は載ってねぇなぁ。まず、必要ねぇからなぁ。俺は先しか見ねぇンだよ」
とキリ。
まるで後戻りなどという言葉は邪魔な存在でしかないと。
「ウチの人生は、おばあちゃんという、最強の称号である英名持ちの家族がいる時点でもとから最低だよ。まわりからよくどやされてね~。だから、これ以上落ちることは無いから大丈夫。気にしない、気にしな~い」
とマナ。
これ以上はぐちゃぐちゃにならないと。
三者三様に返してくれた言葉に、淀んでいたボクの胸の内が晴れた。
「ありがと……みんな」
素直に礼を言う。
マナは笑うような顔でボクを見てくれる。
キリは照れくさそうに横を向いた。
ルナはボクを見上げながら、笑みを返してくれた。
こう言う反応を見ていると、やっぱりキリは悪い人じゃない。
信頼できる。
「それじゃあ、ボクがここに来るまでの経緯を話すよ」
「この精霊のことも教えろよ」
「この精霊とはなんじゃ。この精霊とは」
「うん。最後らへんに紹介するよ」
こうして、ボクの一昨日の夜の話が始まった。
第四章までやっと掲示できた……。
……今日はここまでにしておこう。




