食堂
はい、つきました、食堂。
そこに行くまでに何かなかったって?
…………なかったですよ? ホ、ホントですよ?
けして、告白とか妹にしてくださいとか聞いてませんよ?
……さらわれそうに……なってません……よ……?
度々にマナに助けてもらってない……よ?
そ、そんなことはどうでもいいでしょ!?
とりあえずその食堂は喧騒が続いている。
「あ! 席あそこあいてる」
彼女の行動は迅速だった。
席を見つけたと思ったらすでにそこにいて手を振っているのがよくわかる。
「……テレポートでもしましたか……?」
素直にそう思いました。
まわりの視線を気にしながらマナの隣の席に移動する。
なぜまわりの視線を気にするって?
知りませんよ。なんかみんなしてボクのこと見てくるんだもん。
そりゃ気にするって。
廊下の時よりは……な、なんでもない。
昼食に夢中なのかな?
「何食べる? 一通りのメニューはあるよ~」
そんなことも知らずに食べ物を選ぼうとするマナ。
マナはテーブルにあった辞書らしき物をとる。
ん? 辞書?
「あの……なんでこんなところに辞書が?」
「やっぱりそう思うよね。それ、『メニュー』だよ?」
「はい!?」
マナからメニューと言われた辞書のように部厚い物をとる。
中身を調べる。
目次 ページ
・ご飯類 2
・パン類 467
・めん類 721
・デザート類 1280
・飲み物 3997
・お菓子 4122
などなど
(注) などなどのためこの他にもたくさんあります。
ボクはスルーを決めたかった。
でもさすがに決めれなかったんだ……。
「……デザートってこんなに種類あったっけ……?」
デザートだけじゃないけどね……。
1ページに書かれている食品は一つ。
たまに二つでした。
そんなデカデカと食品載せなくていいと思いました。
「日本の料理や中国の料理だったり、地球にある料理はもちろん、ヒスティマのみでとれる食材を使った料理もあるから、ほとんど全種類あるんじゃないかな~? 好きなもの頼んだらいいよ~」
「そうですか……では焼きそばを……」
「何十種類あるけど何味にするの?」
「そんなに!? 一番オススメの料理でいいよ……」
「わかった。フエナルグラム焼きそばだね。じゃあ行ってくるね~」
「フエナルグラムってなに!?」
あぁ……行っちゃった……。
トタトタと足音をたてて注文するだろう場所に行って注文した。と思ったらすぐ帰ってきた。
……早くないですか?
「早くないよ?」
「え!? いま声出してた!?」
「ううん。出してなかったよ。みんなして最初はこう思うかな~と思ったから予想して言ってみただけだから」
「そ、そうですか……」
みんな初めそう思っていたらしい。
なんか驚くのに疲れてきたのでさっさと食事をとりました。
オススメのフエナルグラム焼きそばは、なにが入っているかわからなかったですが意外と美味しかったです。
欲を言えばレピシが欲しいかも……。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
お腹がふくれ、眠くなってきました。
いや、寝ませんよ?
ただね、午後の授業の場所と内容がね……、
場所……ベクサリア平原。
「いまから精霊とのコミュニケーションをとります。自分との精霊と絆を深めてください」
という内容でした。
ね? 眠くなるでしょ?
ポカポカする日の光と、そよ風があってそれが絶妙な吹きかげんで気持いんですよ。
でも内容を忘れてはいけないので先にルナを呼ぼうとしたら――
「リ、リクちゃん! ちょっとまって!」
慌てるマナに止められました。
それなりに大きな声だったのでほとんどの人がそちらを向く。
「どうかしたの?」
マナが近づいてきてボクの腕を掴み――
「じ、じゃあウチらは向こうで一緒に精霊とコミュしようね~!」
などと言ってボクを引きずるようにその場を後にした。
――回想終了
場所は森の近くのベクサリア平原。
……なんで森が? とは思わない。
なんかもうね、異世界だからって言葉で片付けていいような気がするんだ。
さて……さきほどの質問を繰り返そう。
「マナちゃん。人前で堂々と、しかも大声でボクの名前を呼ばないでよ」
「さっきの質問とちがうよね!?」
むぅ……違ったか……。
では、改めて。
「どうしたの?
――そんな世界が終わるような顔して」
「それも違うよね!? どうして慌てているのだよね!?」
そうだっけ?
でもニュアンスではボクのほうもあっていると思う。
「と、とりあえずリクちゃん、あそこで一言呪文でルナを呼ぼうとしなかった!?」
『一言呪文』と言うのは魔力を帯びていない言葉で魔法を使うことで、そんな事が出来るのはごく少数の魔法使いだけだ。
そのなかに精霊使いや武装型はいない。
精霊使いや武装型は必ず呼びかけなければいけないためである。
そのためには必ず魔力を帯びた言葉、すなわち『呪文』を唱える必要がある。
「だって呼ばないとコミュニケーションとれないよ?」
「そ、そうだけど……」
何が言いたいんだろう?
別に問題ないような気がする。
呼ぶだけだもん。
「あのね、普通――」
彼女が真剣に話すときは必ず語尾が伸びないのか。
祖母に似たのかな?
「聞いてる!?」
「聞いてない」
「聞いてよ!!」
むぅ……怒られてしまった……。
素直に答えたのに……。
それがいけないとは思わないでおこう。
「最初から言うね。普通、召喚や精霊を呼ぶのに一言呪文では呼ぶことは不可能なの」
「ふむふむ……それで?」
「リクちゃんはその不可能を可能にしたんだよ?」
「? つまりボクはすごいってこと?」
パシンッ
「いたッ!」
どこから取り出したのか、ハリセンでたたかれた。
紙だったので痛くないとお思いだろう。
ハリセンには微力に魔力が流れていて、痛覚自体にダメージがきました。
地味に痛かったです。
「異能ってこと!! あらためて聞きたいんだけど、リクちゃんの契約したのはホントに精霊なの? 不可能な一言呪文で呼ぶ行為……。都市伝説みたいな自由な白銀じゃああるまいに……」
「自由な白銀?」
「それは今はいいの! いづれ教えてあげるから。 それより、ウチの質問に答えてよ」
「はい……」
押しきられました。最近多い気がする……。
ボクって押しに弱いのかな?
「でも、ボクはまだルナのことよくわからないから本人に聞いてみよっか。ルナ、出てきて」
またボクの中から光が外に出てくる。
その光の玉が人の形をとり、光がおさまるとルナの姿が光の中から出てくる。
「なんじゃリク。おお! 風が気持ちいではないか。心地よいの~」
のんきなルナ。
ポフッと平原で横になり、空を見上げる。
ふぅ……としながらボクも横にな――
「リクちゃん? リクちゃんまで横になろうとしないよね~?」
冷たい笑みで尋ねてきた。
「冗談だよ。寝ようとするわけないじゃないか~。ハハハハ」
「ですよね~。フフフフ」
「お主ら、目が笑っておらぬぞ……」
そういうことを言ってはダメです。ルナ。
ルナからしてみればリクの目はあきらかに怖がっている。
マナの目はあきらかに怖い。あまり見ていたくないものと考えている。
視点戻します。
「さて……本題に入ろうか……。ルナちゃんはホントに精霊?」
「妾か? 妾は精霊ではないぞ?」
「じゃあ何?」
眉を寄せたマナが聞き返した。
「今は神の断片じゃ。神霊ともいう。精霊など妾の足下にも及ばぬわ」
「あ、ルナ」
「…………は?」
遠慮なしに答えたルナにマナは目を丸くした。ボクは心配になって声をかける。
「マ、マナちゃん? 大丈夫?」
心配して目の前で手を振ったりしたけど反応なし。ショートしましたね。




