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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第三章 桜花魔法学校
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魔法の型でしたね。



「うぅん……な、なんか首痛い……」

「リクちゃん!!」


 ガバッと彼女を抱く。ギュッとする。


「マナちゃん!? どうしたの!? 痛いから離して……」

「やだ……離さない……ウチを心配させた罪は重いぞ~」

「うわ~……なんか嫌な法ですね。それに心配してくれたのはありがたいけど心配しないでって……」

「そういう人ほど心配したほうがいいの。知らないの?」


 だって無理ばかりする人だから。

 短い付き合いだけど彼女は初恋の人と同じ性格のような気がするから。


「知らない。どんな法則?」

「いいでしょ、なんでも~」


 そう言って彼女に異常がない事を確認するといつもと同じ話し方になっていた。


「よかった。救護師を呼ぶ必要はありませんね。何があったのです?」

「ハンクさん。魔法の型でしたね」

「いえ……だから目を瞑っていたとき……」

「魔法の型でしたね」

「あの……」

「魔法の型でしたね」

「…………」


 ふられたくないのだろう。笑顔でハンクを見ながら話している。

 ちょっと怖い。あれかな? 女独特の笑顔で話して相手を怖がらせようという……。

 ウチはできそうもないけどね。


「え、ええ。そうでしたね。何か掴んだのですか?」


 あ! 負けたね。

 まぁ、男は勝てないっていうからしょうがないよね。


「出てきて。ルナ(、、)


 ルナ?


 リクちゃんから光が出てきて、その光が形を作る。

 その形は人型になり、光がおさまってきた。

 その全貌(ぜんぼう)があらわになる。

 その容姿は人形のようだった。

 綺麗な金色の髪に金色の瞳。

 鈍色のワンピース姿だった。

 身長は小学生ぐらいかな? リクちゃんのちょっと下ぐらい。

 あ! 目がつり目だ。

 ちょっといいとこのお嬢様のみたい。


 でもなんかおかしい……。


「なるほど……精霊使いですか……って、ん?」


 ハンクさんも気づいたようだ。


「リクちゃん……いま……どうやって呼んだの……?」


 そう。彼女はいま、呪文を唱えていない。

 一言、彼女の名前を呼んだ、それだけだった。

 ありえない。不可能だ。

 呪文を唱えなければ精霊は答えない。


 つまりこの精霊は特別な精霊なのだろうか? 


 それに人型だし、目に見えてるし……。普通、他の人には精霊というのは見えないはず。

 だとしたら召喚? 精霊じゃなくただの人外なだけ? 吸血鬼(ヴァンパイア)とか人型だけど……。

 首を振って否定する。召喚なら門が出てくる。光の門が出てくるはず。闇属性だけ闇の門だけど。

 それでもやっぱり召喚にも呪文は必須。

 ルナという人型が出てきたのはリクの体から、光となって出てきた。

 悩めば悩むほど嫌になってきたので……うん。放置しよ。

 これはいくらなんでもおかしすぎる。

 専門の人呼んで~。


「どうしたのじゃ? そなたら二人してボケ~としよって」


 お宅のことで悩んでいたんですよ……。


「えっと……いちお精霊扱いでいいです」

「そ……そうですか……では名簿には精霊使いと書いておきましょう。クラスはスペィレイトハンドゥ組です」

「……長いですね……」

「みんなは略してスペ組って呼んでるよ~」


 長いからね。短くするのは仕方ないよ。


「ではボクもそう呼びます。毎回長いので呼ぶのはなんかめんどくさいですしね」

「意外とめんどくさがり屋なんだ……」


 つくづく似ている。

 あの人もめんどくさがり屋だったし……。

 それでもしっかりとやることはやっていたから、しっかり者の称号があったような気がするけど。


「? なにか言ったの?」

「ううん。なんでも」


 良かった……聞こえてなかったみたいだ。

 ちょっと失礼だしね。

 失礼と分かっていても言ってしまうのは意外だったからだ。


「さて……魔法の型もわかったことですし……よしっと……この名簿持ってスペ組の担任の先生……えっと……」

「勝也先生でしょ?」

「そうだった、そうだった。勝也先生に提出してきてね」


 そう言って名簿を渡す。


「マナ。職員室に一緒に行ってあげなさい」

「うん。じゃあ行こ」


 リクちゃんの手を引く。


「そういえばマナちゃんはどこのクラスなの?」

「ウチ? ウチはね~」


 意味もなく合間を作ってみる。

 まぁ、そこまで重要ではないので素直に言っておこ~。



「ウチはスペィレイトハンドゥ組 14番 篠桜マナだよ!」



 笑顔で言う。

 このときなんとなく。

 彼女(リク)とは長い付き合いになるような、そんな気がしたんだ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「――――」


 教室の扉の前。

 中からは様々な人の声が聞こえてくる。


「今から俺が先に入るから、俺が入ってこいと言ったら入ってこい。わかったか?」


 目の前の男性……鈴木勝也先生と言うらしい。

 なんか普通。もっと意外な苗字かと思った。

 え? 外見ですか? すごく普通すぎて紹介するのが難しいです。

 もう……普通って言葉でそろえた人じゃないですか?


「わかりました」


 肯定の意思を示して教室に入っていく先生を見送る。


「お~い。おまえら席つけ~」


 ガララと音がするので皆さん席に着いたのだろう。

 そういえばなんか下がスースーすると思っていたらボク……いま女の子だった……。


 つまり、世間一般から見てみれば女の子扱いか……泣けてくる……。

 いつも女の子みたいと言われ続けて16年。

 まさかの本物の女の子になるなんて……。

 未来はわからない物だとボクはしみじみと感じた。

 とりあえず、暴走しないように注意しなきゃ……主に暴力方面で。

 雑賀みたいな性格はおそらくいないと思うから、と言うかいてほしくない。

 後心配なのは……髪、かな。

 みんなはどう思うんだろ……。やっぱり白銀は珍しいって言うのかな……。


「早速だが転入生を紹介するぞ。入ってこい」


 先生の声がボクを呼ぶ。

 ボクは潔く「よし!」と意を決し、教室に踏み込んでいった。


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