英名
――私の名前は嘩来って言うの♪ 漢字で書くとよく間違われるからひらがなでいいよ♪ これからよろしくね♪ 真陽ちゃん♪
不意に昔の記憶が奥底から這い上がってくる。
それは自分が初めて彼女と出会ったときだった。
初対面の人をまるで何年も付き合っていた人のように扱っていた。
そしていつも元気だった。
名前のとおり、騒がしい未来をいつも作っていた彼女。
しかし、その未来は決して嫌なものではなかった。
そして彼女は弱音を吐いたことが無いし、怒った時もないし、悲しい涙も流さなかった。
少なくとも見たことはない。
二つを除いて……。
――私……約束……守れなかった……だから……お願いします。私を鍛えてください! どうしても助けたいんです! そしてこれから絶対に守れるようになるために!
それは約束した守ることができずに簡単に友達を、ある組織につれて行かれたときだ。
その時は当時、無敵とまで言われた【理不尽な鉄則】と言う二つ名の男に自分と二人で志願した。
当時の年齢は一六歳。彼女は一二歳。どちらも彼からしてみれば少女と言われる年齢だ。男にはもちろん断られた。
しかし彼女の瞳を見て考えが変わった。
その瞳は……、ある少年(姿は少女だが)と同じ、まっすぐで、感情がこもった強い意志の瞳だったのかもしれない。
自分はさっきの少年から感じた。
あの瞳は一番強く感情がこもっていて、それでいて伝わりやすい。
そしてなにより……その瞳を出した人間は、決して考えを変えない。
融通が利かなくなる。
男はそのことを知っていたのだろう。
接点のなかった彼も、きっと昔に懇願したのではないかと、結論付けた。
じゃなかったら簡単に折れないだろう。
実際、彼は丁寧に魔法を教えてくれた。
彼女は男に頼んだときに涙目だった。目は赤く染まっていた。
そう考えると今のリクとは状況が全く違うのだが。
「なつかしいな……」
魔法を覚え始めて一年。過酷な修行をおえた。
もはや師匠である【理不尽な鉄則】をも超えるほどの力を手に入れた。
彼女は【自由な白銀】と呼ばれ、自由という言葉をそのままにした人と噂だっていた。
私は【黒き舞姫】と呼ばれ、彼女の黒刀からは逃げられないと言われていた。
呼ばれるようになって、初めて二人は行動に出た。
友人を奪っていった、その時代、最強と言われた組織を――
――最終的にたった二人で向かい、一夜で潰した。
その組織は半壊。
組織にいた人は出会った者はすべて殺した。
本来の目的、友達を助けに来たのだがすでに時遅く。
そこには友の亡骸。
体には無数の傷跡があり、そこから大量の血が出ていた。
いや……血が広がっていたと言ったほうが正しかった。
とても長い時間。殺されて放置されていたのだろう。
しかし、体は腐っていなかったので、その死体に魔法か何かを使ったのだろう。
そして、その周りに魔法陣があり解読したところ、それは――
――魔力を奪うための陣だった。
それを見たとき、私はともかく、彼女が激昂したのは驚いた。
このときに二回目。彼女が怒りを表したのは……。
助けられなかった。一年という修行はあまりにも長かった。
しかし、それくらいしなければここまで強くなって助けに行けなかっただろう。
そして組織を全壊。
組織を隅々まで周り、組織に所属していたすべての人を殺しつくした。
最後に建物を範囲魔法で跡形もなく消し飛ばした。
そして歴史から一つの組織をたった二人で潰した。
それからだ。いろんな組織からのスカウトが鬱陶しいほどきた。
すべて断ったが……。
それから数十年。
彼女は今回、不可能とまで言われた呪いを解くというらしい。
おそらく、今回は成功するだろう。前のような失敗はしない。
そのために力を手に入れたのだから。すべてを守れるようになるために。
「まったく……。変わっていないんだから嘩来ちゃんは」
満足げに笑いながら校長席に座り、魔法でいれたコーヒーを飲みながら、仕事を始めるのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ん~♪」
背伸びをする少女。
童顔で白銀の髪はロングでウェーブがかかっていて、服はワンピース型で清楚な白色の服を着ている。
ついでに言うとリボンと鍔のついた麦わら帽子もかぶっている。
そんな彼女は浜辺でビーチベットを出してその上に寝転がっている。
まわりからはとても浮いている存在だ。
第一、その髪が目立っていて興味本位でちらちらとみてくる人がたくさんいた。
右手にはブルーハワイのジュース|(ストロー付き)を持っていて、左手には携帯電話を持っている。
おそらくさっきまで電話をしていたのだろう。
そう、背伸びをしても小学生ぐらいにしか見えない容姿をしている彼女こそが真陽の古くからの親友である自由な白銀こと嘩来である。
ちなみに真陽の二つ名【黒き舞姫】など、二つ名に、英名が付いているのは特例中の特例だ。
普通、英名は使われない。
なぜなら昔、差別の言葉として呼ばれていたが、彼女や真陽たちが組織を二人で潰したためにそれはくつがえされた。
彼女らの二つ名は英名持ち……その二人が組織を潰したために英名がある、二つ名の魔力保持者はそれゆえに――
――最強の称号となった
今では、最強の基準は単独で組織を潰せるほどの力の持ち主。
ジーダスほどの組織ならば二人で潰せるほどの力の持ち主に英名がつけられる。
ここで、最強の称号を持って「はぁ……風が気持ち~♪」紹介しよう。
まず、頂点に君臨するのは【終焉「ん~♪ おいし~♪」である。
彼は多くのひ「うみ、きれい~♪」ている。
次「なんだか暇ね~♪ 面白い事……さっき真陽ちゃんが言ってたことぐらいしかないか~♪」であり、次に【黒き舞姫】で「海、気持ちよさそ~♪ 入ったら服が濡れちゃうか……ま♪ いいかな♪」です……ってちょっとぉ!?
作者のナレーションの言葉消さないでくれる!?
「なんで~♪」
いや……って言うかどうやって言葉消してるの!?
「そんなの魔法で簡単よ?」
お願いだから消さないで!!
「だって長いんだもん♪」
そんな理由で!? 自分勝手すぎるだろ!?
「私は自由な白銀よ♪」
いま関係……ってそこまで自由か!?
「私に不可能はないわ♪」
なさ過ぎるわ!! 限度というものを覚えろ!!
「限度を考えてしまうと、そこでその人の成長は止まってしまうわ♪」
あぁ……なぜこんな性格にしてしまったんだろ……。
「そろそろ話進めてよ~♪」
あんたが邪魔しなかったら進んでたよ!!
見苦しいところ見せてすみません。
話し続けます。え~と……話を邪魔する前まで戻すの面倒なので……
最後に彼女【自由な白銀】
彼女の知名度は――
――ほぼ無いに等しい
なぜかって?
彼女の事は都市伝説程度にしか知らされていない。
その理由が彼女の自由に関係している。
自由に遊び、舞い、戦う。神出鬼没だからだ。
しかし、英名持ちは全員知っている。
彼女は自由の象徴として。
彼女のわがままは英名持ちの中で、知らないやつはいない。
しかも、それを実現させられる魔力を持っている。
それは英名持ちでも厳しく、まず不可能と言われている事ばかりを彼女は平気でする。
英名持ちで戦ったら一番強いのはだれか? と聞かれて彼女の事を事実上知っていると、とても悩むだろう。
「さてと……」
立ち上がり、ついた砂を落とす。
「帰りますか♪」
大きな声を出して、そばにいた黒い服の女に荷物を渡し、キビキビと歩き出していった。
「あ♪ 寄り道もしていかなきゃね♪」
妖艶な笑みに隣にいる黒い服をした女に冷や汗が滴る。
彼女が実家に帰るのはまだまだ遅くなりそうだ……。