魔法の型
「まずこの学校はその人の魔法の型によってクラスが決まる」
「魔法の型?」
「うん。魔法には型が存在するの」
そう言い、人差し指を天に向ける。
そして得意げに話し始めた。
「まず、装備。これは自分が顕現した武器に魔力を伝わらせ魔法を使う型。一番平均型で、近距離、遠距離どちらも使えるオールラウンド。多種多様な魔法がつかえる。でもその代わり一撃の力が強くない。まぁ、使う人によるけどね」
なるほど。
つまりゲームのステータスポイントがすべて平均みたいなかんじかな?
マナが二本目の指を天に向ける。
「次に、補助。武器は無し。攻撃や防御や速度を上げたり、傷口を完治できる回復魔法が使える根っからの後方支援タイプ。この型は根っからの後方支援タイプなためか、攻撃魔法はいっさい無いの。だからと言って戦えない訳じゃないけどなるべく戦わない方がいいね」
目をつむりながら喋っている彼女は博識に見える。
三本目の指を天に向ける。
「次は、召喚。人外を、魔法陣を組み立てて召喚して契約。召喚して契約できる人外は一体のみ。人外の望んでいる事をすれば、下僕になってくれる」
なるほど。魔法使いの使い魔のようなものか。
「でも呼び出した人外が倒されて強制送還すると呼び出した本人の魔力をごっそりと持っていかれるかた要注意」
なるほど……。
つまり召喚と戦うときはその使い魔を倒せばいいのか。
指の四本目を天に向ける。
「次は、自然。自然は周りの環境とかによって自分が使う属性ごとに強さが変わってしまうの。水のあるところでは炎属性はあまり使えない……みたいな感じだね」
う~ん。
腕を組み考える。それってつまり……。
「水属性の魔法で周りを水びだしにしたら炎属性は簡単に弱くなって不利になるよ? それじゃ、使えなくなるんじゃ?」
環境を変えてしまったら簡単に弱くなってしまうことではないだろうか……?
しかし、首を振り、こちらを見、マナが放った言葉は否定だった。
「魔法で作った環境は効果がないの。自然にできた環境だから効果があるの」
つまり自然が絡んだ環境じゃなければ効果はないということか。
マナが指をおろし、こちらをみる。
魔法の型はこのくらいなのだろうか?
マナは言葉を続けた。
「基本はこの四種類しかないんだけどね」
そんなことを言っているが、さっきのスペィ……なんたらが気になった。
一度もそんな言葉が出てきていなかった。
「気になる?」
不意にそんな声を聞き、頭を上げる。
「教えてください。全部知っておきたいですから」
キッパリと言い放つ。
ボクはまだ魔法に関して初心者中の初心者だ。まだなり立て。
どんなのが危険なのかよくわからない。
だから安全な今のうちに聞けることならすべてを聞きたい。
「そんなキッパリと言わなくたって教えるよ。当たり前だよ? だっておばあちゃんがちゃんと教えろって言ってたしね。知らない事に関することは。じゃあまず精霊使いからね」
そして「ちょっと時間があるから」と近くの白の洋風をイメージしたテーブルに着く。
どこから取り出したのか、紅茶のセットを出してきた。
コップは二つあって、どちらも紅茶を注ぐと片方を渡してきた。
ボクは椅子に座り、「いただきます」と言ってから紅茶を受け取り
少し飲んだ。味から察するにアップルティーだった。
話を続ける。
「精霊使いは、精霊をパートナーとすることで、魔法を使う型なんだよ~。しかも、型の中で一番強い型でこれ以上の型はいっさい無い……って言われてる」
言われてる?
どういうことだろ……?
「なんでそんな曖昧なんですか?」
「それは……わかんない」
「へ?」
わからない?
それってつまりなんとなく答えただけですか?
マナは紅茶をすする。
一息して、そして、「だって……」とつなげる。
「おばあちゃんがそう言えって。精霊使いが必ず強いということじゃないって言ってたから。だから理由はわかんないの」
真陽さんが?
でも納得かも。
だってあの人いろんなこと知ってそうだし。説得力がある。
紅茶を一口。ほろ苦い甘さが舌を潤す。
今の話にはうってつけだ。
マナがわからないなら聞いても仕方がないゆえに続きを聞いた。
「えっと……。弱点としては、肉体は弱いから近距離攻撃や物理攻撃にとても弱いの」
なるほど……。
マナが言うには精神力で精霊との話をするため。どうしても肉体が弱くなっていまい、肉体的な取っ組み合いは、ほとんど負けるそうだ。
だからと言ってむやみに近づこうとすると魔法で片付けられるので近づく時は用心しなさいだって。
「次だけど。次は型の中で力が一番強いって言われていて、精霊使いと対照的な位置にいる型が武装。魔法を鎧にするみたいな感じ。自分自身をパワーアップさせるの」
ボクの脳裏に鎧で完璧におおわれた鎧武者が出てきた。
だってそんなイメージなんだもん……。
そしてここでも『言われている』なのか……。
「熟練者は一部を変換させて、魔力消費を抑えるみたいだよ? あと武装は近距離攻撃しか出来なくて、しかも魔力の燃費が悪いの。まぁ、燃費が悪いのは精霊使いも一緒だけど」
話しているマナはとても軽く話しているような気がする。
まぁ、魔力保持者にとってこの事は常識なのだろう。
ボクはまだ初心者だからよくわからないが……。
とりあえず、少しずつでも覚えていこうと思った。
そして、残った紅茶を飲みほし、マナに「ありがとう」と言って席を立った。
そして一緒に第一決闘場に向かったのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「失礼いたしました」
バタンと校長室のドアが閉じられる。
今の言葉はリクが言った言葉であり、今の時間はマナとリクがまだ校長室を出た時間だった。
「先生。知っていたんですか?」
「んん? 何をだぃ?」
にやりと笑う真陽。
「リクのことです。関わりがあったのですか? 過去に」
「さぁ? どうだろうねぇ」
「はぐらかさないで下さいよ。それにさっき魔力を放ったとき本気で傷つけるつもりでしたよね」
「どうかなぁ。それよりも雑賀ぁ。仕事のほうは大丈夫なのかぃ?」
「え?」
雑賀は腕に巻きついている時計を確認する。
そこには短い針がⅦの数字のちょっと前を指し。長い針がⅥの数字を指している。
雑賀の仕事の始まりは普段は5時からだが、今日はリクの転入手続きとなつかしき自分の先生に会いに来る予定だったため、三時間遅らせてもらった……。
そこでふと気になった。
三時間?
「ヤバッ!? もうこんな時間!? もうちょっと美しい先生と話がしたかったのですが……」
「ふふ。言うじゃないかぁ。今度来た時はめいっぱい可愛がってあげるよぉ?」
「おお! それは楽しみですね。では近いうちにまた会いましょう。来るときにはメールしますよ」
「その時には仕事が終わって次の日、何もない日にしてくれよぉ?」
「それは……。つまり飲みに行こうと?」
「察しが良くて助かるねぇ。そういうことさぁ」
真陽が立ち上がり、校長室の扉に近づく。
雑賀も自分の荷物が無いか確認し、扉に近づき開ける。
「では、失礼しま……」
「ちょっと待ちなぁ」
「?」
真陽が雑賀を止める。そして真陽は瞳を真剣にして、話した。
「雑賀。【自由な白銀】を知っているか?」