学校探検
「丁度いいねぇ。マナ、自己紹介しなぁ」
突然入ってきた謎の少女の行動を利用して、彼女に自己紹介させる。
「え? ……いいの?」
「はやくしなぁ。話が進まないんだよぉ」
「わ、わかた……」
スーハーと深呼吸した後、こちら(リクと雑賀のいるほう)に向くと頭を下げた。
「初めまして! ウチは篠桜マナと申しましゅっ!」
あ、かんだ……。
「か、かんじゃった。……うぅ」
あの……涙目なんですが……。
「いちいち泣くんじゃないよぅ」
「でもまさか自己紹介にかむなんて……」
「はいはい。よしよしぃ」
あ、頭なでてる……。子供扱いってさすがに怒るんじゃ――
「ふにゃ~……ハッ! やめてよおばあちゃん! 私子供じゃないよ!?」
――どうやら嬉しいようだ。愛玩動物みたい。
と、そんなことしてる場合じゃない。
相手が自子紹介したんだからボクもしなきゃ。
「えっとボクの名前はあ……天童リクと言います。よろしくお願いしますね」
まだ名字はなれないね。
間違えて赤砂って言いそうになっちゃった。
そして笑顔で手を差し出すと、マナもその意味がわかったようで手をさしのべ、手を握――
「マクド○ールド♪」
まさかのスルー!?
マナは手を握る寸前に『m』の字を作って握手を回避。
……硬直。
質問です。握手をする気満々だったこの手は、どうしたらいいのでしょうか?
真陽は、「まったくこの子わぁ」と頭を抱え込んでいる。
当の本人はしてやったりという顔で、腕を腰にあてて「エッヘン!」としている。
胸がないので凹凸があまり出ていないが……。
雑賀は口を押さえて爆笑しているので真陽やマナに見えないように雑賀の足の脛を蹴っておく。
「……ッ!」
膝を抱えてうずくまる雑賀さん。
ふん。笑うからだ。
裏でそんなことをしているのでもちろん目の前の二人には何が起きているのか分からないから頭の上にハテナが浮かんでいる。
なんだかさっきまでの空気がひび割れて真剣な話からガラリと変わってしまった。
真陽もなんだか疲れたようにしている。
校長席に座り、これからの行動をつたえる。
「マナぁ。これから校舎を案内してあげなぁ」
「ウ、ウチ?」
自分に指をさす。
その顔はよくわかっていない表情で、目を丸くしている。
「私や雑賀は忙しいんだよぉ。案内が終わったら第一決闘場に来てくれよぉ? そこでリクちゃんが何の部類に入るか調べるからぁ」
「うぅ。わかったよ~。それじゃあリクちゃん……だったよね?」
確認するマナ。
ボクはその言葉にうなずいて肯定すると。
「学校の案内するからついてきてね~」
そう言って校長室を出る。ボクは慌てて、それを追いかけた。
「失礼しました」
いちお、礼儀なので挨拶をしておいた。
ボクはなるべく礼儀を欠かさないようにしていた。
よく母さんが礼儀を忘れると祟りがあるぞ~♪ とか言ってボクは初めそれに対して、んな馬鹿な。と思っていたのだが。
夕食の挨拶をしなかった夜。
布団に入ってさぁ寝ようかと思った矢先に体が硬直し、動けなくなった。
何事かと思って目を開けるとそこには……。
鬼の顔のあれがいた……。
「悪い子はいねがー!」
今ならあれはどんなのかわかる。
角の二つはえた赤い鬼の顔で、藁のような衣服を着ていて、片手に出刃包丁を持っている。
皆さんもおわかりだろう。
答えは――
――なまはげ。
怠け者を見つけて大暴れする妖怪で、あの時にボクのところに現われたのは礼儀を怠けたためだろう。
だとしても季節は夏。あきらかに季節はずれである。
今思えばあの衣装はかなり暑そう……中にいた人は大変だ。
母さんの悪戯に付き合わされて。
もちろん、まだその時の年齢が幼かったため、ボクは……、
「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
と、目をつむり、体をバタバタと動かし(このときなんで硬直が解けていたのだろう?)
女の子のような声で絶叫したのだった。
つい、そのなまはげを足蹴にし窓の外に押し出してしまってそのまま落ちて行ったのを知らず、目を開けた時に誰もいなかったので首をかしげて頭の上にハテナを浮かべたのをよく覚えている。
「リクちゃん! リクちゃん!」
ボクの名を呼ぶ声の主に振り向く。
「どしたの? さっきからぼうっとして……頭打った?」
いやいや。君ずっとボクと一緒にいたでしょ?
しかも校長室でてからそんなにたってないのにどこに頭をぶつける時間があったの? ん? 校長室……?
「そういえばマナさん」
「ウチの事はマナでいいよ~」
そっけなく答えるマナに対してボクは素直に受け取る。
「じゃあマナちゃん。真陽さんのことおばあちゃんと呼んでいたのはどうして?」
「うん? そりゃあ。ウチの祖母だからだよ? 名字同じだったじゃん。自己紹介聞いてた? もっかい言う?」
「いえ……いいです」
ちょっとへこみましたよ?
今の発言はちょっとへこみましたよ?
うぅ。まるでボクが聞いてなかったみたいじゃないか。
ちゃんと聞いてたし、しっかりと聞いたうえで確認しただけなのに……。
この子、祖母の前だけいい子ぶってるのかな……。言い方悪いけど。
「今ウチのことおばあちゃんの前だけいい子ぶってるとか思っているでしょ?」
まったくそのとおりです。
ナゼバレタ……。
「ウチのことをほとんどの人がそう思っているから。予想なんて簡単簡単♪」
そっか……。
とくにエスパーとかユウの使っているアレではないんだね……。
「まぁ。リクちゃんの顔はとてもわかりやすい顔だったから、というのもあるよ?」
そんなにわかりやすい顔ですか……ボクって。
地味に落ち込む。
まるでボクが正直者の顔しているみたいじゃないか……って悪い事はなにもないか。
たぶん。
そうこう学校の案内をしてもらいながらほぼ全部の学校を回った。
回った順番はこうだ
最初に職員室。
先生たちは笑顔で「ようこそ桜花魔学へ」って言ってくれた。ここはまたあとで来るそうなので他の場所に先に行くこととした。
次に実験室。
人はいなくて中にも入れなかったので外から見ることしかできなかったが実験室は普通の教室が三個ぐらいは入りそうだった。
何人で実験の授業を受けるつもりですか?
次に防音室。
なぜ防音室? と気にしてはいけない。
ボク的にも音楽室でいいと思いました。広さは実験室と同じくらい。ピアノがあり、木琴があり、琴があり、バイオリンがあり、ギターがあり……多種多様に楽器が存在した。
音楽に使いそうもないものもあったので説明は省かせていただきました。
次に武器庫。
……って、はぁ!?
学生に何やらせる気だよ!!
そんなに広くないけど武器が出てくる出てくる。
次になんかよくわからない魔法陣的なものが書かれてある部屋。
マナが言うにはここは召喚室らしい。なるほど……。
言われてみれば。部屋の大きさは教室六個ぐらい?
どれだけ大きいのを出したらいいのやら……。
次にベクサリア平原。
もうツッコムのはよそう。ここは異世界だから仕方がないと決めつける。
異世界の学校は平原まで普通にあるのですか……。
マナの話によるとここはいろんな場面で使うことがあるらしい。
午後の授業はこの平原ですごし、仲を深めたり、自分の魔法を使い熟練度を上げたり、ネイチャー組なら空気の流れを読んだり、スペィイトハンドゥ組なら精霊と話して高感度をアップさせるとか……。
すみません何話しているかさっぱりわかりません。
ボク、よくわからないんだけど……なに?
ネイチャーやらスペ……なんたらとか。
そんなことをマナに話してみると、目を丸くして口を開けたままポカーンとしている。
……ようやくその言葉を理解するとマナは呆れたように質問を返してきた。
「知らないの?」
「うん。知らない」
素直に言っておこう。
おそらくこの言葉は知ることが必要だと本能が悟っている。
「てっきり知っているものとばかり……」
やれやれと、手を額につけて首を小さくふるっている。
そしてマナの説明が始まった。