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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第三章 桜花魔法学校
14/96

魔法学校、校長室にて



「おはよ~」

「おはよ~」

「おう! 今日も元気か?」

「当たり前だろ? お前こそ……」


 周りを見れば学生。

 こっちにも学生。

 学生だらけですね……。

 つまり学生が通る、学校への通り道。登校中。

 どこの学校だって?

 そんなの決まってるじゃないか。


「どうしたリクちゃん? 立ち止まって……」


 目の前に見える文字。それには――


 『桜花魔法学校』


 ――と日本語で書いてあった。ここでふと、気になることを聞いてみた。


「あの、どうしてここの文字って日本語なんですか? 話している言葉も日本語で……」

「ここ? ああ、ヒスティマの事か……。さぁ? 日本人が多いからじゃないか? それか、この世界を作ったのが日本人だったからなのかもしれないな」

「へぇ。そうなんですか?」

「ほら。行くぞ。俺も早く仕事に行かないとある秘書がえらい不機嫌になるかもだからな」


 ボクの質問をスルーする雑賀はさっさと歩き始めた。

 なにげに歩くスピードが速い。

 ボクは自然と、早歩きになってしまう。とても大変です。


 そこで周りを見てみる。

 門の前で話すボク等を見るたくさんの眼。


「見たことない人だな」

「でも可愛いよな!?」

「転入生?」

「あの子、髪、綺麗~」

「いいな~」

「体細~い」

「胸はあたしのほうが勝ちね!」


 ひそひそと話す声が何となく聞こえる。

 ボクたちはちょっと浮いていると見える。

 あと最後に言った人。ボクはいちお男の子なので比べないでください。

 今は女の子だけど……。

 まさか……その……む、胸……が大きくなったりするのだろうか……。


(それだけは絶対に阻止! 絶対に元に戻る方法を探してやる……)


 握り拳をつくり、手に力を込める。

 そうしなければ体全体がふるえそうだからだ。

 ボクに眼を向けていた男の人が


「おい。あの可愛子ちゃんのいる隣にいる人って……」

「ああ、雑賀先輩だよな?」

「なんで雑賀先輩が?」

「雑賀様……いつ見てもかっこいい……」

「あの人って紳士だもんね~。面白いし。顔もいい……」

「ああ……あの子が羨ましい~」

「あんなに近くにいて……私も近づきたい!」


 雑賀の事を知ってる?

 あとなんだか僕、女の子に羨ましがれてる?

 なんで? この人のどこがいいんだろう?

 変態だし。たしかに黙っていれば顔はいいからもてるだろうけど……黙っていれば。

 ここ重要ですね。黙っていてたらたぶん僕の中ではプラス方向ですね。

 今はマイナスメーター振り切ってますが……。


 まぁでも、ちょっと危ない感じがするので雑賀の手を引き、そうそうに学校に入っていく。


「あー! 雑賀様と手をつないでるー!?」

「……暗殺リストに追加ね……」

「わかりました。私のクラスに来たら……」


 引かなかったほうがいいみたいだった。

 怖い声をなるべくきかずに急ぎ足で校舎に入って行った。

 当人は、


「リクちゃんが俺の手を握ってくれた!? ついにデレ期が!?」


 などどほざいていたので、手を離すと……。


「何がデレ期ですか!!」


 お腹に回し蹴りをかましてあげました。

 周りはとても驚いていたけど気にしない。


「ふぅ。いい汗かいた♪」


 みんながみとれちゃうような笑顔で、手で汗を拭うようなしぐさをした。

 そしてピクリとも動かなくなった雑賀の首の襟首を持って引きずって行きました。





「…………面白そうな奴だな」


 最初から最後まで見ていた一つの眼は誰にでもなく呟いた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 コンコン。


「雑賀です。本日転入予定だったリクを連れてきました」

「は~い。開いているから入っておいでぇ」


 ガチャ。


「失礼します」

「し、失礼します」


 馴れている雑賀の真似をして挨拶をする。

 今入ったココの部屋は校長室。

 どこの学校にもあって、その学校の支配者とでも言っていいようなそんな人がいる部屋だ。

 ちなみに母さんは理事長という身でありながら好き勝手やっている。

 あんた本当に理事長ですか? と疑問に思うことばっかりだ。


 しかし、ルールを守らず、勝手なことをする生徒を平和的解決(本人談。ボクにとって力でねじ伏せるようにしか見えない)をしていて、全体的に赤砂学園は荒れていない。

 まぁ、平和的解決を受けたい人もいて、わざとルールを守らない人が何人かいる。

 その人はおそらくMだろう。

 ――閑話休題。


「いやぁ。久しぶりだねぇ。雑賀ぁ」


 校長席らしき場所には白髪で、にこにこ笑顔で巫子服の下を黒くした服を着ている女性が座っている。

 顔だけみると二十代ぐらいだろうか?

 そして、結構出るとこは出てて、引き締まっているところは引き締まって……。

 いい体系とでも言うんだろうか?

 みたところ武器のようなものは持っておらず、左に書類のような紙。右には羽ペンを持っている。


「ええ。お久しぶりです。何年ぶりでしょうか?」

「二年ぶりだよぉ。忙しくて忘れちゃったのかなぁ?」

「すみません。なにせ仕事がとても忙しく……」

「いいよぉ。それだけ君がうまくやっているということだからねぇ。おまえの話は生徒たちに大人気だぞぉ。二年でジーダス幹部になれたんだからねぇ。おかげでジーダスに入りたいという子がゴロゴロいるんだよぉ?」

「はは。そうですか。ではジーダスに入ってきたら俺のところでいろいろと教えてあげますかね」

「そうだねぇ。そうしてくれるとありがたいよぉ。まぁ、そろそろ本題に入ろうかねぇ」

「はい。そうですね。校長。俺の義妹のリクです」


 雑賀が後ろにいたボクを前にだす。しかし当のボクはと言うと。


「雑賀さんが真面目に話してる……」


 挨拶をそっちのけで雑賀の話し方に疑問を持つ。

 だっていつもお調子ものの雑賀だ。

 こんな真面目に話せる感じがしない。

 もしかして偽物!?


「リクちゃん!? その言葉は気になるけど今は挨拶しなさい!」

「あ! すみません。あか……天童リクと言います。よろしくお願いします」


 うん。あいさつは大事だよね。忘れてたらいけない、いけない。

 とりあえずさっきの事は頭の隅に置いとこう。

 よし、置いた。準備オッケー!


 しかし、リクが頭の中で整理整頓をしている前にいた校長はというと……。

 ポカーンと、口を開けていて、表情が固まっている。

 しかし雑賀もボクも気づかず話を続けた。


「はぁ……まぁいいか。リクちゃん、こちらが桜花魔法学校の校長。名前は篠桜(しのざくら)真陽(まひ)

「よろしくお願いします!」


 頭を下げる。

 しかし返事が無い。

 不思議に思い頭を上げると――


 ――目の前に真陽の顔。


「うわぁ!」


 ビックリして後ろに倒れる。


「先生!? 何しているんですか!?」

「きみぃ。雑賀君の義妹になる前はなんていう名前なんだぃ?」

「へ?」


 唐突な質問。

 質問の意味がわからず聞き返す。

 つまり義妹になる前の名前を言えってこと?

 なんでこの人、探りを入れてくるのぉ!?


「だからぁ。君、それ偽名だよねぇ? 本名って赤砂リクじゃないのかなぁ?」

「「!?」」


 続けられた言葉には確信をつく言葉だった……。

 沈黙が続く。


 なんとか出した声は、か弱く否定するだけだった。


「………ぼ、ボクはそんな名前じゃ……」


 横を向いてしまった。


「嘘だねぇ」

「う、嘘じゃないですよ! 彼女は赤砂なんて名字じゃなかったですよ」


 雑賀がなんとかフォローを入れる。


「じゃあ何だったんだいぃ?」

「えっと……そう! 片倉です! 片倉! な? リク!」


 言葉をはさむ雑賀。話し方からして相当動揺しているだろう。


「え? ……あ! そうです、そう。片倉リクって言うんです!」


 どこの戦国武将だよ!

 本音を言いたかったが言えない。

 というかなんで雑賀は片倉小十郎が出てきたの!?

 もうちょっとマシなのなかったの!?


「ふむ。面白い冗談だねぇ」

「じ、冗談じゃないですよ!?」

「そ、そうそう!」


 あわてる二人。仕方がない。なぜならボクのことを赤砂リクと呼ぶとジーダスがどこからか聞きつけ。ボクを捕まえに来る可能性があるはず。

 そのことは絶対に避けなければいけない。

 魔法も満足に使えない今じゃ簡単に捕まってしまう。


「いろいろ考えているようだけれどぉ、そんなに警戒しなくてもいいよぉ? なにか考えていてもそれを止める気はないしぃ。確認したいだけだからさぁ」

「確認……?」

「私はねぇ。花火(爆弾。ボムともいう)とかいたずら(悪だくみ)とか祭り(戦争)が大好きなんだよぉ。その中でもある友人がいてねぇ」

「友人?」

「まぁいいじゃないかぁ。ジーダスに追われてる少年ってリク、君の事だろうぅ? 私はそれを手伝おうかと思っているだけだよぉ?」

「「!?」」


 どういうこと!? なんでこの人はこんなにも正確にあてることができるの!?

 雑賀を見るが、彼は首を振っている。つまり話してはいないだろう。

 それに今さっきボクと入って来たときに久々に会った様な挨拶の仕方だった。話せる機会など無かったはずだ。


「……」

「どうするぅ?」


 こちらの情報を何らかの手段で持っている。それに比べこちらは何も持っていない。

 ……だったらできる行動は一つ。


「わかりました。正直に言います」

「リクちゃん!?」

「ボクの本名は……真陽さんの言った通りに赤砂リクと言います」


 ボクは正直に真陽さんに告白した。


「ほうぅ。それでぇ?」

「このことを誰にも言わないでください! お願いします!」


 ダメ元で頭を下げる。


「私に利益が無いのによくそんなことが言えるねぇ。大人をなめているのかぃ?」


 顔を上げる。そして真陽を強い感情を持った瞳で見る。


「重々承知です。その上で頼んでいます」

「無茶苦茶だねぇ」

「無茶苦茶でもやらなきゃいけないんです! ボクがここで見つかって捕まったら、雑賀さんやソウナさんに迷惑がかかりますから……。力もつけたい。戦い方もできれば教えてほしいです」


 ジーダスの人たちが来て、自分が簡単に捕まるわけにはいかない。

 だから力もつけたいのだ。


「ほうぅ……」


 真陽が口を動かすと、どこからともなく剣が現れる。

 その刀身は黒く。魔力が真陽さんから流れ出て、この部屋をおおう。

 二回目の長い沈黙。


 雑賀は特に黙っていなくてもいいのだが、雰囲気に負けて微動だにしない。

 微動だにしないのはリクも真陽も同じなのだが…。

 雑賀の場合はおそらく、この学校に通っていただろう時に、この魔力を知っているからだと思われる。

 雑賀は本能的に感じている。――マズイと……。



 その時だった――バタンッ



「おばあちゃん! ウチの事呼んだって職員の先生に聞……いたから……」



 部屋をおおっていた魔力が闖入者によって破れた。

 それは唐突に校長室のドアを開けた元気のよさそうな緋色の少女だった。

 髪は青色のリボンでぴょんとツインテールに縛られ、服はこの桜花魔法学校の制服(当たり前か…)、ほっそりとした体つきで凹凸は特にない(言ったら殺されそうなので心の中でのみ思うこととする)。

 瞳は真紅で綺麗だった。

 身長は僕より大きい。う、羨ましくなんてないんだから!

 まとう雰囲気がどこかで感じたことのある雰囲気だった。


「……ウチ……おじゃまだったかな~?」


 まさしくそのとおりである。いわゆるK・Y(空気読めない)……だね。

 まぁ、助かったけどね。


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