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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第二章 ヒスティマと言う世界
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リクの女になった理由



 場所は車(ワゴン車)の中……運転しているのはグレン。

 その隣には雑賀。

 一番後ろの席にはリクが横にされて寝かされていて、ソウナがその隣にいる。

 一つ後ろの席にはユウが目を瞑っていて、その隣にガルムがいる。


「ねぇ。雑賀」

「ん? なんだ?」


 声のするほうを見る雑賀。ソウナ、ガルムも見る。

 そこにはユウが薄目を開けていた。


「少し、約束をしてほしい事がある」


 目を雑賀へ向ける。


「約束……か。内容によっては無理だが……。例えば今からジーダスに行けとかね」

「ジーダス――あんたらの組織の事を教えてあげるから約束を守ってほしい。見たところ、あんたの欲しい情報ってそれっぽいから」

「え!? ユウちゃん知ってるの!?」

「何……?」


 ソウナと雑賀はそれぞれ訝しげにユウを見る。


「……聞こう」

「一つ目の約束だけど、ユウは仕事に行かなくてはいけない。お兄ちゃんが外にいる時に来た電話は仕事の内容だった。だからお兄ちゃんと一緒にいてほしい」

「それくらいならば良いだろう。……一つ目と言ったな。他にはなんだ?」

「一緒にいる間、お兄ちゃんに何かあったら……殺す」


 ゾクッ!


「「「「!!」」」」


 殺気が車内を覆う。

 その殺気はとても濃密でねっとりしている。

 とても一般家庭で暮らしていた者が出せるとは思えないほどの強い殺気。

 個々はそれぞれユウという一人の少女に恐怖を感じた蛇に睨まれた蛙のごとく。

 一般人がこれほどの殺気にあてられるとたちまち倒れていくだろう。


「なんなのこの子……」


 思わず口に出すソウナ。

 その表情は少し青くなっている。

 しかし青くなっているのはソウナだけではなかった。

 グレンもまた青くなり、ガルムもよくよく見ると少し青くなっている。

 それだけの事が起こったことで、この空間はユウが独占したものと同じようになった。

 ユウは殺気を納め、雑賀の言葉を待った。

 幸い雑賀はそこまで動じなかったためすぐに発することができた。


「その二つの約束はわかった。だが、その前に一ついいかい? 君は何者だ? ジーダスの裏を知っているがジーダスの者ではない。だからと言って一般人じゃない」

「……答える義務はない。よってあんたの質問には答えない」

「じゃあ言い方を変えよう。魔法は誰に教わった? ジーダスの裏から裏に関するヒントに格下げしてもいいから」


 少しの沈黙。……そしてゆっくりと口を開くユウ。


「魔法は……自分で覚えた」

「……わかった」


 嘘だろうと雑賀は心の中で思う。

 それでもわかったと答えたのはユウが答えたくなかったためだが。


「さて、まだ約束があるような様子だったね。後はなんだ?」

「お兄ちゃんにヒスティマの事を全て教えてほしい」

「全て? 彼は何も知らないのか?」


 頷くユウ。


「何も知らないのに魔力保持者……。いや、何も教えなかったと言う方が正しいのかな?」

「そうだね。確かにユウや母さんはお兄ちゃんに何も教えなかった。だって、こう言う状況になったのは想像できなかったから」

「なるほどな……。だが俺は全てを教えることができないかもしれないぞ? まだ二十一だし。ちなみに一番年をとっているのはガルムで三十四な」

「今は関係ないだろ!?」


 突っかかるガルムを華麗にスルー。雑賀にとっても今は関係ないもので、興味がなかったからだ。

 ならなぜ言ったのか……。という疑問が残るが気にしないでほしい。

 なんとなく付け足したかっただけだからだ。


「雑賀のそばに置いといてもいい……」

「わかった。全てを教えるまで側に置いておこう」

「「絶対に教えない気だろ!!」」

「冗談だ」

「「おまえ(先輩)の場合は冗談にきこえない(ません)!!」」


 ガルムとグレンの言葉が見事にかぶる。

 ガルムの隣でソウナが、


「ああ。そう思ったの私だけじゃないんだ……よかった……」


 と、言い。安堵している。

 周りの人は気づいて無いが。

 ユウは雑賀の反応に呆れ気味になる。

 なんだか雑賀と話していると調子が狂う、とでも言いたそうにしている。


「あとね? 魔法に関する事も全てお兄ちゃんに教えてあげて。お兄ちゃんは魔法の事も何も知らないから。さっき家で使った魔力解放は無意識で放ったもの。だから本人は何も知らない」


 口調が少し戻る。


「ふむ……。今さっき本部から、ソウナの逃走を手伝っている銀髪の少年がいると連絡があった。だからかなりリスクがあるのだが……。そこは何か妥協策があるのか?」


 ユウがうつむき少しの合間を開ける。

 そして何かを決めたように顔を上げると。


「なら……女の子なら見つからないね」

「そういうことなら協力しよう」

「「即答!? 本人一番気にしているんじゃないの(か)!?」」


 たまらずツッコム、ジーダスの二人組。

 ソウナは顔をそむけ、「ツッコンだら負け……」をくり返しながらリクの顔を見ている。


「私の右ポケットに指輪がある。それは性転換魔法がかけてある魔法の指輪。これを使って。使用方法はわかる?」

「身につけるだけでいいのか?」

「うん。でもつけたまま指輪が壊れると性転換したままになっちゃうから、そこのとこ気をつけて」

「わかった」

「「わかったじゃないよ!?」」


 はぁ~、とため息をつき、雑賀は真剣な顔で宣言した。


「男に!! 二言はないっっ!!」

「「ここで使うな!!」」


 二人に怒られた雑賀。

 そんなコントをしている三人をソウナは呆れ顔で見ながら質問した。


「あなた達、こんな人がグループにいてリーダー的だと大変じゃない?」

「うぅ……。確かに大変です。だって町で情報集めしようと話を聞きまわっていたんですけど雑賀先輩だけ若い女の子ばかりに話しかけ、メアドとか聞いてたし、今暇かい? とか言ってナンパしてたし……とにかくまともな情報が無かったです……」


 涙目なグレン。いろんな事(雑賀の数々のナンパ)を思い出しているのだろう。

 その肩はガックリとうなだれ、ユウと戦っていたときみたいな迫力が無い。


「まぁいいではないか。過去のことをグダグダ言うのはよくないぞ? さて、ジーダスの裏のヒントの事を聞こうか」


 黙る二人。

 そしてユウに目を向ける。(リクとグレン以外)

 ユウはため息をつき静かな声で言った。


「それは……ジーダスの仕事の卒業仕事は受けたら最後――



 ――その人とは二度と会えない」



「どういうことだ……?」


 首をかしげるソウナ以外の一同。

 ユウはそれ以上何もいわず、ただボーっと外の流れる景色を見ていた。


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