勘違いエピローグ 2
ドアが完全に開いたその奥は、少しだけ輝いて見えた。別に部屋が明るいわけでもないけれど。でもそれが何故なのか考えてみれば、芸能人だから、なんて理由しか思いつかなかった。
きっと、芸能人の華。みたいな奴だろうか。
その花々しい人が、一斉にこちらを見遣って、それから言葉は止んだ。芸能人だと分かっていても、誰が誰だかは分からない。中には昔居た人も居るみたいで、年をとっても綺麗だなぁ、なんて思ってみる。
みんな綺麗で、格好良くて。
俺なんて到底及ばないんじゃないだろうか。
「監督、こちら、市川有紗先生です。先生、監督の野中さんです」
「あ、……初めまして、市川です。今回は本当に、ありがとうございます」
ドラマにしてくれたお礼を、今、ここで。
「野中です。こちらこそ、良い作品になりそうだ」
堅物そうな人相だなぁ、なんて考えて、でも根は優しい感じがする。
「初めまして、市川先生。私、脚本の杉谷です」
次から次へと自己紹介ラッシュだな、なんて心の中で思ってみたり。
「初めまして。……あの、もう一人脚本居るって…?」
たしかドラマ資料では2人くらい居たはずだった。脚本が今、ここにいるのなら、もう一人もいるんじゃないんだろうか。
「あぁ……彼ですか。サボリ魔なんです」
苦笑いをして、そう言う。要は、『いない』って事なんだろうな。
「先生、時間がないから、早めに自己紹介済ませちゃいましょう?」
編集がそんな事を言うので、そうですねと返した。
「牧ちゃん」
まきちゃん?
「あれ? いない?」
「……ぃます…ここに」
牧ちゃんと呼ばれた女の子は、気づかれないと思ったのか、自分の名前を呼んだ相手の裾をクイっと引っ張った。その華奢な手から順に、顔までを目で追っていく。凛々しいような、可愛いような、そんななんとも言えない顔をした、綺麗な子。
「仁川有役の、……藤原、牧です…、よろしくお願い、します」
この子を見て、一瞬で分かった。この子はきっと、俺の出来なかった事を、演技って中でも、成し遂げてくれるんじゃないだろうか。
「市川有紗です。よろしくお願いします」
握手を求めて差し出した手は、少しだけ震えた手で包まれた。
「先生! 初めまして! 西島凛子役の、的場 叶です! よろしくお願いします!」
逆転。牧ちゃんから一変、こちらはなんとも元気な子だな、なんて思った。役とも100%マッチしていて、何か凄い。
「よろしくお願いします」
それから、一通り挨拶を済ませた時に、ふと疑問が浮かんだ。まだ、一番重要な人物がいないんじゃないのか、なぁんて。