表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Warmth Melt  作者: みゅうじん。
夏、再会~
28/74

帰国から 3

「はい。春樹役に凄いピッタリなんですよ。ここまでピッタリと合ったのは、ごく珍しい事ですね」

「へぇ、それは一度お会いしたいですね」

 そんな筈無い、なんて思った。だって、これは俺の昔の話をすっごい脚色して出来たものだから。男を女にして、別れを一生つないで、……だから、春樹は棗だ。

 だからこの役は多分、絶対に『竹中 棗』にしか合わない。

「記者会見の時に会えますよ。ドラマ発表と同時に『市川有紗』の紹介ですから。出演者の皆さんいらっしゃいます」

「そうですか、楽しみです」

「さて、じゃあそろそろホテルに行きましょうか」

「はい」

 会計は経理に落として貰えるようにしてあるんで、私が払います、と担当の人が言ったので、お金は別にかからなかった。

 店から出て、また編集の車に乗り込む。外の空気はやっぱりあっちとは違って、懐かしいけれど、まだそわそわした。風景もアメリカとは違うし、当たり前だけれども、見つける外人は日本人に比べると凄く少ない。

「そういえば、日本語は全然ペラペラですね。あっちに長くいたのなら忘れてる単語もあるんじゃないんですか? 私、観光でしか行ったことなくて、5、6年も住んでいた事無いものですから、疑問で」

「外では勿論英語ですけど、家の中ではほとんどが日本語だったので、忘れてる言葉はあまりないですね」

「いいなぁ、日本語も英語もしゃべれるなんて。他に喋れる言語はあるんですか?」

「大学でスペインとフランス語を少し。だけどちょっとカジった程度なんで、喋れるのは日本語と英語だけです」

 その言葉に、明が俺を流し目で見る。

『お前のフランス語はちょっと以上だろ』

 なんて言うような目だったので、足を軽く蹴ってやった。

 それから30分程高速道路で移動を続け、大きな大きなホテルにたどり着く。

「さて、つきました。市川先生、今日はこの後部屋で少しだけ明日のミーティングをして、後はゆっくりしていてくれて構いませんので」

「はい、ありがとうございます」

 記者会見を行うにはあまりにも豪華すぎるホテルだと思った。『市川有紗』の発表も兼ねていると言っていたから、半分パーティみたいなものなのだろうか。……でも、それにしても豪華すぎて感嘆した。

 シャンデリアが頭の天辺でキラキラと光る。

「明、俺なんか、凄い一歩踏み出してる気がする」

「当たり前だろ」

 隣に立つ明が大きな手で俺の頭を撫でる。明を見ると、俺を見て笑って、そうして呟いた。

「『お前』なんだから、当たり前だ」

「過大評価しすぎだよ」

「なんだってな、それくらいが一番良いんだよ」

「そうか?」

 少し考えて、それからやっぱりおかしくて笑った。

「そうだ明、お前ホテルの部屋どうすんだよ?」

「へ?」

「きっと俺の分しか取ってくれてねぇぞ、部屋」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ