表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Warmth Melt  作者: みゅうじん。
夏、再会~
15/74

決着 1

 少しの確率で良いのです。

 いつしかこれを手に取る時を信じて。

「出版は来月3日の予定です」

 いつものやりとりメール。いつどの角度からその文を見たって、いよいよだった。

 それでも緊張での胸の高鳴りなんかあの日から1回も無く。

「ありがとうございます……っと」

 まさか、こんな事になるとは思わなかった。あの文は100%、人の明るみに出ないままいつか削除すると思っていたし、それが本来なら当然の事なのだろう。そんなクリック1回で消してしまえる文が、クリック1回では消せなくなる。怖いような、嬉しいような。

 それでも、そんな些細なモノが人に見てもらえるのなら、俺はそんな幸福を多いに喜ぶべきだと思う。

 後悔しないように、精一杯書いてやろう。

「でもあれはやりすぎたかなー……」

 後悔しないようにと言っておきながら、早々と後悔してみた。大きなため息を吐き、机につっぷする。まぁでも、こんな後悔だって後の祭り。今日はもう今月の末で、後4,5日すれば来月の3日がやってくる。出版予定がそれなのだから、もう印刷だって全て終わっているのだろう。『やっぱり変えたい』なんて、そんなわがまま言えないし、……後悔したからといってそんな事言うつもりもない。

 ただ少し。

「ブリ返すだけ……?」

 あの日の『決着』を付ける為に書いただけの事。約束か、願いか。あいつはあの時自分から俺に言った事を、俺の事を、もう忘れていると思う。ちゃんとした彼女がいるのかもしれない。幸せな家庭を築いているのかもしれない。

 それでいい。振り替えらなくていい。少し、ただ少しだけコレ見て思い出す程度。悪い思い出で良い。あれ? なんて疑問に思う程度でも良い。

 ちゃんと、あの日と『お別れ』出来ればそれでいい。それだけだ。だって、中途半端は俺の辞書には反している。何事にもきっちりとやるのが俺の理で。

 せっかく明からもらったチャンスなんだ。自分の努力で道を切り開いて見たんだ。目の前にあるチャンス。上手く使わなくちゃ大損だ。

 顔も合わさない。言葉も交わさない。もしかしてあいつはこんなモノ読まないのかもしれない。確率は低い。それでもいい。俺の中で決着を付けれれば、いつかは俺の知らない間に、静かに消滅してくれるだろう。

 その時を待って。

 そうすれば俺は、あいつの事だって、エマの事だって。きっと忘れられる。

 前に向かって、進んで、進んで。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ