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Warmth Melt  作者: みゅうじん。
夏、再会~
14/74

イチカワ アリサ

「そーと決まれば、作者名だなー」

「あぁ……それ、担当さんにも言われた」

 作者名でも、別に本名を名乗っても大丈夫なんじゃないかと心の奥底で思ったんだが、そういうのはあまり良い事でもないらしい。自然に、且つ印象に残るような。そんな条件を叩きつけられて、俺はそこでもう挫けてしまいそうだった。

「ストロングマンとかどう? 強くね?」

 ネーミングセンスの無さに愕然とした。

「そのまんまじゃねぇか」

「インパクトあったほうが覚えてもらえない?」

「それじゃありすぎてドン引きされるって。日本の昭和の戦隊モノってそんな感じだったよなー」

「あー分かるかもしんねぇそれっ! 懐かしいなー。…え、てかそうかなー。俺は良いと思うんですけど」

「お前がよくても、そりゃダメじゃねぇの」

 ていうか書いた話しの内容は恋愛モノだってのに、作者の名前がストロングマンじゃ買ってくれる人もきっとスルーしてしまうだろう。じゃあ、どんな名前がいいんだろうか。

 よく苗字の部分が平仮名で下の名前が漢字ってのもあるけれど、俺はあまり好きじゃなかった。作者名としては凄くそれっぽいのだが、いまいちピンと来ない。

「あ、良い事思いついた!」

「んー?」

 ネーミングセンスの無さはストロングマンで充分に理解した。良い事思いついたと言う言葉に軽く返事をして、俺は天井を覗いていた。

「女みたいな名前にしちゃえば?」

「ん?」

「んー……例えば、『有沢 壱』だから、壱子とか」

 イチコ……?

「俺は明だから、明子とか」

 アキコ?

「よくね?」

 女の子みたいな名前にしてしまうって言う案は凄く良いと思ったのだが、……壱子とか、明子って、それは捻りが普通すぎるような気もそうでもないような感じも…。

「あ、じゃあ。『有沢』だから、『ありさ』とか」

「ありさ、…かぁ」

 なんか、普通に可愛いし良いような気もしてきた。自然な名前。……印象はあまり残せないかもしれないけれど、それは俺の書く話しの内容で変えていけばいい。

 恋愛モノを書いた。読者層は女性の、10代から20代前半くらいだろうか。そんな人達が気軽に本を手に取れるような名前。

「良いなー」

 心の底から気に入っていた。

「苗字はどうすんの? つける?」

「んー…付けなくても良いような気もするけど、……つけた方が綺麗に纏まった感じしない?」

 そういう所ホント真面目だなーと、クスクス笑われた。

「当たり前だろー」

 そう、当たり前。昔からそれが俺の普通だったから、そこはもう変わらない。

「苗字の部分に名前使ったから、逆に名前の部分苗字にしよーぜ」

 何か楽しそうに明が笑った。

「『イチノセ』とかどうよ?」

「んー…なんかありきたりな気がしてきた。かっこいーんだけどさ。もっとこう……一般市民にもちょくちょく付きそーな…」

「いち……いちー。イチサワ…なんか微妙……あ! …『イチカワ』! 俺が日本に居た時、小学校の同じクラスにイチカワっていた!」

 イチカワ アリサ。

「なんか、…よくね?」

「だろ?」

 ストロングマンより10倍マシだとそう明が言ったので、俺はその横顔を見て笑ってやった。

「100倍マシだって」

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