表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Warmth Melt  作者: みゅうじん。
夏、再会~
11/74

プロローグ11

 次の日。眠気覚ましにニュースを付けていると、やっぱり今日も気象予報は暑いらしい。今日は少し話しがあるからと、朝早くの涼しい時間帯に起こされた。ニュースを見ながらのんびり水を飲んで居ると、さっさとしろとザキさんに叩かれ、しぶしぶ事務所へと向かった。

「昨日山崎から言われて分かったと思うけど、恋愛ドラマ。原作読んだ?」

「いや……」

「読んでないのね」

 立派な絵画や装飾植物。色々部屋や人物を見立てる為に置かれただけの装飾品が、社長椅子に座るコイツを立派に見立てている。

「社長からもなんか言ってやってくださいよ。コイツ台本以外の文章全然読まなくて…」

 呆れた声で少し後ろからザキさんの声が聞こえた。でもそれはいつもの事だし、俺は黙って椅子に座るそいつを見ていた。

「台本は? 叶にはもう渡ってんだろ」

「あら、もう知ってんの」

「昨日会ったからな」

 ふーんと、頬杖を付きながら嘆息した。それからこれまた立派な机の引き出しから、叶と同じ、紙の束を取り出した。一番上の紙には、やっぱり『I love you』の文字。

 俺は顔を顰めた。

「嫌そうな顔ね」

「恋愛モノがな。何で通すかね、お前もザキさんも」

「仕事だからでしょ。他に何があるのよ」

「……」

 そりゃそうだと、俺は溜息を吐いた。俺もコイツも、根っこで思っている事は同じ。

「まぁでも、原作はちゃんと読んどいた方があんたの為かもしれないよ」

「社長直々に……ご苦労さま」

「ちゃんと聞きなさい。これはあんたにとって、チャンスなのよ」

 なんのチャンス何だと、俺は目の前のそいつを凝視した。

「私があんたにあげる、最後のチャンスよ」

 その言葉が、妙に頭に残った。

 それはもしかして、この仕事が出来なければ芸能界を引退させられるとか、そういう事なのだろうか。……自分から俺をこの世界に監禁させておいて?

「芸能界とか、そういう話しじゃなくて――」

「……?」

「昔の賭け勝負の、続き」

「賭け……?」

 一体何のことだろうか。頭を巡らせて思い出しては見るが、思い当たるふしは多々ある。

「あんたの分からない事をいちいち教えてる程暇じゃないの。原作はそのヒント。同時にあんたの演技の為にもなるわ」

 曖昧な発言。意味不明なコイツは、そういえば元からそんな感じだった。俺より何倍も賢くて、頭が良く回る。

 昔からだ。

 頭の良い奴の考えていることは良く分からない。

(なずな)……」

「早く行きなさい。今日も、みっちり仕事あるんだから」

 その時、薺が苦しそうに笑ったその意図は、分からない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ