第九話 彼女の家
前回、家を出て、楠木家に飛び込んできた主人公、
今回は彼女の家を一通り見回して、バイトの件も話します。
「じゃあ、どうぞ」
楠木さんは僕を部屋に通して、部屋を案内する。
「ごめんね、こんな夜遅くに、親にいわれていてもたっても居られなくて」
今から考えると、夜中に傘も差さずに家を出たのはバカだったな、っと後悔している。
「私、ここで一人暮らしなんで、別に迷惑してませんけど・・じゃ、この部屋で良いですか?」
僕は、厨房のすぐ後ろにあった小さな部屋に案内された。
「いいの?こんな良い部屋使っちゃって?」
「私はリビングを使ってますから」
楠木さんは僕が持ってきた生活用品を見た後、手伝います、と言って
部屋にその品々を置き始めた。
「一人暮らし、つらくない?」
「中学生の時は辛い時もありましたけど、私には勉強がありますから」
「勉強熱心なんだね」
「でも、先輩だって、私を説得出来たじゃないですか」彼女は少し悲しい顔をして続けた。
「勉強なんてものは、世の中では三分の一くらいしか役に立ちません。重要なのは蓄えた知識をどう使っていくかです」
確かにそうだ、そうでないと自己満足で留まってしまう。
「だって人間ってそんなに完璧じゃあないだろう、役立たずでも、いいじゃないか」
「よし、これで最後」
最後の荷物を置いて、リビングに向かう。
リビングは結構広かったが、本や資料、パソコンのCDやフロッピーで埋まっていた。
床はフローリングで、カーペットが敷かれていた。
「さすが研究者だね」
「ほとんど父のです。今はあの事件で、海外に出かけて研究していますが、いつでも作業出来る様にそのまま置いてます」
「そういえば、なんでここがレストランになっているの?」
「ここは、元々、母がこの店を経営してましたから」
へぇ、と思いながら部屋を見回す。すると、白くて丸いものが服の上に乗っかっていた。
「人骨じゃん!!」
「レプリカですよ、レプリカ」
彼女は笑う、結構びっくりした。
もう、研究者の部屋と言うべきなのか、魔女の部屋なのか分からなくなってきた。
彼女は厨房でコーヒーと、軽食のサンドウィッチを作って持ってきてくれた。
「ありがとう」
暖かいコーヒーを啜りながら、ゆっくりと今日、父と話した出来事を話す。
「それで、バイトしなくちゃならないんだ」
「先輩のお父さんも頑固ですね。じゃあ、私が何か、紹介しましょうか?同級生でバイトやっている子、多いし」
僕は、同級生という言葉に引っかかった。
「そういえば、真由って子と、怜って子に会ったよ」
「そうですか、でもなんで?」
君の事で殴られたとは、言い出せないので、僕が君の彼氏だって知っていたから。と言う。
「真由は図書館のバイトやってますけど、どうですか?」
「えっ、そんな柄じゃなかったよ、もっとこう活発な」
「静かで、本とか運んだりする力仕事、好みらしいので」
それも良いな、と思いつつコーヒーをまた啜る。
飲食店でせかせか働くのよりは楽そうだし、力仕事にはある程度自信がある。
「じゃあ、明日真由と話すから、休み時間、図書室集合って言っといて」
「わかりました、じゃあ、私はお風呂に入ってくるんで」
あとは、彼女の次にお風呂に入って寝るだけだ。
この同居生活、上手くいきそうだ。
今回、主人公は真由がやっているバイトに興味を持って、
積極的にバイトをやろうか考えました。
感想、アドバイス等があれば、送ってきてください。