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第二十四話 本当の恋人

いよいよ、物語は終盤に入っていきます。

「着いたよ」

僕は疲れ切っていた彼女に声を掛ける。

「綺麗だね・・」

 僕らの眼前に広がっていたのは、地平線に果てしなく広がり夕日を浴びて輝く海だった。

ここは、神奈川県の山中にある、とある公園。僕は何度かこの場所に行った事があり、彼女の注文に合うと思い、この場所に行く事を決めたのだ。

 僕らは疲れてがたがたになった足で展望台のベンチに座り、この景色をじっと眺める。

「ねえ、どうして私を選んでくれたの?」麻衣は僕にそっと喋りかける。

「どういう意味?」

「どうして私を生存競争のパートナーに選んでくれたの?」

「景色に似合わない話だね、僕は君のことが好だからだよ。弥生は自分の遺伝子の優位性を謳って僕に近づいたけど、それだけでは、人間には不十分だと思って、僕は断った。君はあの日の後日、僕の事を好きだといって泣いてくれた。あれから結構経つけれど、忘れていないよ」

「もしも弥生があの時、好きだと言っていたら?」

「君の事を振っていた。あの時はまだこの出会いが、君にとって迷惑だと思っていたから」

また僕らは、夕日を浴びて輝く海原をじっと見つめる。今度は僕が彼女に喋りかけた。

「あの夕日を浴びて輝いている海の波は今は特別な存在だけど、日が沈めば周りの波と同じになる。だからもう、この話は今日、この夕日が沈むまでにしよう。日が沈んだら、本当の恋人だ」

アハハ、と彼女は声を上げて笑う。

「先輩がこんなロマンチストなんて・・知らなかった」

「わ、笑うなよ」

と少し反論しながら麻衣の顔を見ると、彼女は大声で笑いながら涙を垂らしていた。もちろん、笑い転げている訳ではなさそうだが・・そっと僕のハンカチを渡す。「でも、嬉しかった」と彼女は涙を拭いて笑顔を見せる。

「じゃあ、約束」

彼女は華奢な小指を僕の前に出した。

「何の約束?」

「日が沈んだら、恋人になるって約束」

僕は彼女の華奢な小指に僕の少し太い小指を重ねる。彼女は僕の小指を優しく握り指きりをした。

 日は落ちていく、じりじりと僕らの思いを乗せて。

「先輩、約束守ってくださいよ」

「うん、必ず守るよ」

日が落ちると共に、気温も低下していく、いつの間にか麻衣は僕に寄り添っていた。僕も彼女の体温を感じつつ日が落ちるのを待った。麓の町の夜景がくっきりと見え始め、ついに日は沈んだ。

「麻衣、沈んだよ」

僕は彼女にそう喋り掛けたが彼女はもう僕の傍で可愛らしい寝息を立てて眠っていた。

「まったく」といって僕は一つため息を着く。着いたため息は公園の電灯を受け、真っ白に輝いていた。












 

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