第二十三話 クールダウン
昨日、麻衣が言った通りに、僕は久々に休暇を取る事にした。今日は土曜日、図書館のバイトがあったので、休みにして貰い、僕ら二人は久々に外に私用で外を出た。
「どこにいく?」
麻衣は子供のように無邪気な笑顔を見せる。
「麻衣の好きなところでいいよ」
「じゃあ、海が見えるところが良いかな」
「わかった」
海が見えるところというと、此処、東京の外れからは結構遠くなる。どこに行こうか、お金は十分にある。
「なるべくなら、人が少ないところが良いかな」
厄介なことに彼女は注文をもう一つ追加した。
「少し、遠いけど良いかな」
「いいよ」
彼女に許可を貰って、僕は俄然やる気が出てきた。地元の駅のベンチにて十分以上計画を練り、そこから電車を数本乗り継ぎ、三回バスに乗って、やっと工程の三分の二を終え、僕たちは近くにあった食堂で昼食を取ることにした。
「疲れた?」
「うん・・まさか先輩がこんなにアクティブな人だったなんて」
麻衣と僕は一緒に昼食の取る。麻衣は定食についているサラダを食べ、僕は焼き魚の骨と格闘していた。視線を彼女のほうに向けるとガラスの洒落た容器に入った青いサラダを彼女が上機嫌に食らっている、僕は絵描きではないけれど、絵になるなと思い焼き魚を忘れて彼女の姿に見とれてしまう。
昼食を取った後、僕らはまた電車に乗る。周りをみれば、冬の濃い緑色をした山々が連なっていた。
僕らはあの山々を越え、「海が見える場所」に向かう。寒空のもとあの山々が僕ら二人の疲労や心の汚れを寒さと共に消しているような気がする。