第二十話 約束
パーティーが無事終わり、麻衣と怜の溝も埋まり始めた頃、季節は秋から冬へと変わって計画は最終段階へと向かっていた。
「それで、来週は私のお父さんに来てもらって計画を練って貰う」だから麻衣は僕に事あるごとに計画について話す。
「うん、ありがとう」
だが、校内でも五本の指に入っていそうな彼女が僕のようなしけた男と付き合っていて、毎日のように話すことを許さない男も沢山いる。昨日はすこし不良っぽい先輩に目をつけられ絡まれた。
僕は麻衣としゃべったあと教室に向かう。すると急に数人の不良に一気に絡まれ、引きずらるような格好で校舎裏までつれて行かれた。
「急になんですか、こんなところに連れ込んで」
「改まってんじゃねーよ、なんでてめぇがあんな可愛い子と付き合ってんだよ」
「告白されて付き合いましたが」
今回は麻衣のように言い訳できない。麻衣のこいつらの頭では雲泥の差がある。そんな事を考えているともう一人の不良がこう切り出した。
「おい、さっさとやっちまおうぜ」
僕は抵抗出来ない。後は逃げるぐらいしかないか・・でもどうやって逃げようか?もう完全に逃げ道は塞がれている。
「ちょっといいかな」
校舎裏の出口から女子の声がする、それははっきりと聞き覚えのある声だ。でも、こんなところに居るはずが・・
耳を疑いつつ、僕は囲まれているなかから声のするほうを向く。ちらりと黒い髪が見えた。それはきちんと一つにまとめてあるが狼のように力強くしなやかだ。まるで、鎖をつけられた狼のようにも見える。あれは、弥生だ、間違いない。
「その人、私の友達なんだけど、そこで放してあげてくれないかな」
「てめぇ、二股だったのか!?おい、こいつ二股してんぞ」不良はさらにいきり立つ。
「というか、あいつ他の高校の制服だぞ!」
「今晩のおかずに・・」
数々の情報が不良間で交錯する。だが、一つ誤認していることがある。おかずになるのは彼女じゃない。彼らの方だ。
「早くして!」
彼女は急に怒り始めた。じれったいのが苦手なのだろう。それが逆鱗に触れたのか
「おい、なめてんじゃねーよ」と一人の不良が彼女に殴りかかる。無駄なことを・・
殴りかかる相手の拳を腕で払い、横蹴りを繰り出す。クラヴマガの技を真似ているのだろう、手品のように鮮やかだ。
「わかった?早いところ彼を放して」
不良たちはさっと僕を解放する。弥生は僕の手を握り、その場を立ち去った。
「どうしてここに?」
「約束したでしょう。好きになったら必ず言いに行くって」
「弥生さん・・」