第十八話 澄み切った空、遠ざかる二人
遅刻しそうになった僕らは、慌てて家を出る。
「麻衣、遅刻するから早く」
「わかった」麻衣は家の鍵を慌てて閉める。慌てて閉めた後、あっ、と呟いて、「忘れ物しちゃった、先、行ってて」と言って、もう一回家の鍵を開け始めた。「じゃあ、先に行ってるよ」と言って僕は一人学校に向かう。
***
昼休み僕は、久しぶりに僕は退屈になったので(麻衣の事や自分の事で悩み、図書室とかに籠もっていた)
あの日を境に行かなくなった、屋上に行ってみることにした。ここは校則で入っていけない事になっているが、僕はこっそりと、誰も見ていないことを確認して屋上に行き、孤独と青く澄んだ地元の空と景色を楽しむのが日課だった。僕は暗い屋上へ続く階段を足音を立てぬよう上り、重い金属製のドアを開ける。
外に出て当たりを見回すと既に先客がいた。遠くて誰だかわからないが女子ということぐらいは分かる。彼女は突っ立って景色を眺めている。僕は彼女に後ろから近づく。
「しゃがんだ方がいい」
僕は小声で彼女にアドバイスをする。
「えっ、誰ですか」
彼女は後ろを振り返る。宮木さんだ。夕暮れの帰り道、真由が僕に襲いかかってきた時に止めてくれた子。
「久しぶり、とにかくしゃがんで。ここからだと屋上に居るってバレちゃう」
「ありがとうございます」といって彼女はしゃがむ。
そうして少し、しゃがんだ後、僕達は二人して屋上で寝っころがってひなたぼっこをする。
「どうして、こんな所に?」
「何だか、教室が息苦しくなって、気付いたらここにいました」
「まさか、君が校則違反するとはね」
「私だって、不良になることあるんですよ」
宮木さんと僕は笑う。そんな話をした後、僕らは無言で冬の澄み切った青空を眺める。
「麻衣とはどうなんですか」
彼女は目を青空に向けながらそっと呟く。
「深谷さんと同じ事聞くんだね。まあ、いい感じだよ」
「そうですか」
彼女の表情が曇る。
「麻衣となにかあったの?」
「いや、先輩と麻衣、この頃仲良いから、真由と私から麻衣が遠のいているような気がして」
「そうなんだ、ごめんね」
「別に謝ることじゃないですよ、麻衣が幸せならそれでいいんです」
僕らはそれから休み時間が終わるまで空を眺め続けた。
久々に怜が登場しました。ですが、彼女と麻衣と主人公の間には距離がついてしまっていて、彼女は二人を羨ましがること、麻衣の幸せを願うことくらいしかできません。