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第十二話 自然淘汰

今回、彼女の仕事でストーリーが大きく動きます。


 僕は、麻衣が昨日言っていた仕事に付き合う事にした。

「仕事って、どんな仕事なの」

「私の中学時代の先輩に会って色々話すだけなんだけど」

「それと仕事と何の関係が?」

彼女の顔が一瞬曇る。

「あの日の事、まだ覚えてる?突然変異のこと」

「ハッキリと覚えてるよ」

 僕が殺されかけた日、僕に彼女ができた日・・色々な事柄がそこに詰まっている。

その日からというもの、この不幸な呪縛から抜け出せないでいるが、

逆に麻衣や怜、真由に出会うことが出来た。しかも、今はアルバイトまでしている。

まとめてみると僕の人生が180度変わった日だ。

「実はもう一人、殺さなければならない人がいたの」

「えっ、それってどういうこと?」

「つまり、あなたの他にもう一人突然変異者が居るって事」

そうか、突然変異者は日本に僕一人ってわけじゃないのか

「それが、中学校時代の君の先輩だったんだ」

「殺そうとしたのは、あの日の前日」

「えっ、で、どうして止めたの?」

「罪悪感というか、上手く銃が握れなかった。それで、思いっきり銃を取り上げられて、分解された」

「ぶっ、分解って・・」

「彼女、強いから・・確か、親が自衛隊らしくて」

「おい、ま、まさか僕をボディガードに使う気!?」

「そう」

「無茶いうな、帰る!」

「彼女、物分りはいい方だから大丈夫。事前に連絡したし」

家から電車で一駅行った所に彼女の家はあった。

こんな閑静な住宅街でそんなことがあったのだろうか、とても信じられない。

ピンポーンとインターフォンを押して、彼女が出てくるのを待つ。

彼女の先輩、どんな人なのだろう。

「出てこないね・・」

「変な人だからね、自衛隊の親がいて武術ができるって言うのに、趣味はパソコンだから」

「じゃあ入ろうか・・」

 まるで、お化け屋敷にでも入るみたいだ。僕は生唾を飲む。

入ると、そこはとても暗く、湿りきっていて、フローリングの床から響く、麻衣と僕の足音が家に響いていた。

リビングに向かっていると、「かちかち」とパソコンの操作音がした。

「またパソコンやってるのかな」麻衣は静かにつぶやく。

おじゃましまーすと言ってリビングから彼女の部屋をあける。

入ると、薄暗い部屋に長い黒髪の少女が座っていた。彼女の前にはパソコンが白く光っていて彼女の髪を照らしていた。

「もしもーし」麻衣は彼女に呼びかけた。

「うっ、だ、誰っ?」

僕は暗い部屋に電気をつける。

彼女は振り返る、あっ、綺麗な人だ。

本当に肌が純白で、その上に掛かる長い髪は深く吸い込まれそうな黒だった。

「麻衣・・」

麻衣と彼女の表情が曇った、前の因縁からだろうか。

「弥生先輩・・」

弥生という子は麻衣はしばらく見てから、僕に視線を向ける。

「へぇ、これが麻衣の彼氏か・・始めまして。麻衣の先輩の九条 弥生です」

九条さんは、黒い髪を揺らして少し微笑んだ。

「どうも」

「麻衣、ちょっと席外してくれないかな」

彼女はすこし、睨み付けるように麻衣をみる。

こういうのが、先輩と後輩の仲なのだろうか。否そうじゃない、きっと、麻衣を信じていないのだ。

「はい」

 麻衣は名残惜しそうに、僕と九条さんを見た。


麻衣が出た後、九条さんはゆっくりと微笑みかける。

「どうだった?」

彼女は僕に突然聞いてきた。

「なにがですか?」

「あっ、ごめんなさい。焦ってて・・あなたも麻衣に殺されかけたでしょ、その時、どう思った?」

「最初は信じられませんでしたけど、親の血液型と銃を見せられた時は本当に驚きましたね」

彼女は少し目線を逸らし、話し始める。

「私も凄く驚いた。私ね、中学の頃は剣道部やってたんだけど、麻衣は後輩の中でも気に入っていた、いや、親友だったって言っても良かった。その子に銃を向けられるなんてね」

「麻衣が言うには、銃を分解したとか・・」

「あっ、これのこと?」

彼女は引き出しからなにかを出す。

「これ・・」

九条さんの白い手のなかに分解された銃があった。

「いったいどうやって分解したんですか?」

彼女はすこし笑う、

「映画で覚えたの、ちょっと見てて」

本物の銃はエアーガンのように、ドライバーを使わずにまるでパズルのように組みあげていく。

まるで、ルービックキューブを組み立てるような速さだ。

カチャっと彼女は銃をコッキングする。

そして、その銃口を僕に向ける。

「すごいよ、映画並だ」

彼女は少し真面目な表情になる。

「動かないで、そのままじっとしてて」

「えっ、冗談でしょ」

 ガタンとドアの空く音がして、そこから麻衣が飛び出してきた。

彼女はいままで僕に見せたことの無い驚きの表情をする。

「自然淘汰って君は知っているかな」

僕は即座に図書館で見た本を思い出す。

「知ってますよ」

「生物には同じ種類でも性質がことなる、その中には繁殖や生存にすぐれたものがいるそれが子孫を産み弱い個体を滅ぼす」

僕には九条さんがなにを言いたいのかさっぱり分からない。

そう考えている内に彼女は本題を言い始めた。

「私と付き合って、そして私にあなたの子を産ませて、それが自然なことだから」

「そっ、そんなこと言われても」

彼女の言いたいことはなんとなく分かる気がする、イレギュラー同士で後世に強い子孫を残したいのだ。

確かに彼女の言うことは間違いではない、むしろ正しい。

これも、ひとつの恋の形なのかもしれない。
















 

主人公は今回、麻衣か弥生どちらかを選択しなければならなくなりました。

自然淘汰の流れでは、弥生を選択したほうが自然だし、そっちの方が麻衣にとっても自分のようなイレギュラーな存在を忘れられて幸せかもしれません。

でも、麻衣が自分を愛してくれているということも知っています。

ですが、主人公はまだ彼女を愛しきれていないかもしれません。


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