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第一話 彼女の告白

初めての小説投稿です。下手ですが長続きさせたいと思っています。


 高校二年の秋、少し肌寒くなった廊下を僕は何時も通りに歩いていた。

「あの・・」

 ふと、僕は後ろから微かに聞こえた声に振り向いた。見ると僕の真後ろには一人の女子が立っている。彼女は小柄な体をしていて、その体のラインはとてもスマートで美術館で見るような彫刻のように美しく、それを少し茶色くて波立つ髪が彼女の凛として美しい顔をを包んでいた。小柄な体からすると後輩の一年生だろう。

「僕に何か用?」

 僕は彼女に優しく話しかける。

彼女は僕の言葉を聞いた後、僕の目をじっと見つめてから話し始めた。

「せ・・先輩のことが好きなんです。ど、どうか私と付き合ってください!」

 あまりに突然過ぎたので、僕はしばらく絶句した。僕は彼女と喋ったこともなければ、彼女の名前すら知らない。

「本当に一目ぼれなんです。付き合ってください」

彼女は戸惑う僕に押して頼んできた。彼女の顔はさらに下を向いて、茶色い髪ごしに彼女の頬が真っ赤になって、もうここからに逃げだしてしまいそうだ。僕に詮索している時間はない。

「僕で、よければ」

気の利いた返事じゃないって僕にも良く分かるような、とっさに出た言葉だった。

「あっ、ありがとうございます。私、1Eの楠木 麻衣っていいます」

彼女はそういって紅く染まった顔を見せて廊下を走って行く、その姿はとても純潔で汚れていない、僕がこんな可愛い子と付き合ってしまっていい物なのだろうか。

***

 今日一日の授業を終えて、僕は教室を出る。楠木さんは寒い教室の外で待っていてくれていた。

「待っててくれたんだ、ありがとう」

僕が彼女の頬はまた真っ赤になる。茶色の髪といい、小柄な体といい、なんて可愛いのだろう。

「先輩、今日はこれから予定ありますか?」

「いや、特に予定無いけど」

「もしよかったら、私の家で夕食とかどうですか?料理店やってるんですけど、今日、親がいなくて」

楠木さんのご両親は旅行なのだろうか、とすると、彼女は今日を狙って僕に告白したのだろうか。

「いいよ、喜んで」

僕は笑顔で彼女の誘いを受けた。

 雲がかってぼんやりとしている夕陽の下、街路樹の落ち葉をパリパリと踏みながら、二人で楠木さんの家に向かう。

「楠木さんは勉強は出来る方?」

僕は彼女に話しかけてみる。

「それなりに、努力してるんで大丈夫です」

「そっか」

話が長続きしない・・でも彼女の家でまた話すことが沢山出来るかも知れないと思い、僕は黙々と彼女とともに歩く。

彼女はそんな僕に自分から喋りかけてきた。

「先輩、私・・先輩のこと好きですよ」

「どうして?」

「一目ぼれかも知れません」

「楠木さんの運命の赤い糸は僕につながっていたわけだ・・こんな男だけどこれからも宜しくね」


 此処が楠木さんの店か、結構洋風な感じだ、ニス塗りしたテーブルが幾つも並んでいて、その奥に小さな厨房がある。

「先輩はそこで座って待っていて下さい。すぐ用意しますから」

彼女は小さな厨房で料理を始める。フライパンや鍋を小さな手で運んで材料を揃える彼女。こうしてみると、とても可愛い。でも、彼女が料理をする手つきは実に危なっかしい。

「なんか手伝おうか」

と僕は彼女に声を掛ける。

「いえ、大丈夫ですから」

彼女は笑って返事をした。 

数分後、料理が運ばれてきた。ハンバークとスープ。定番といえば定番だが、彼女が作ったそれは料亭で作るような本格的なもので茹でたニンジンやブロッコリーなども添えられていた。

「本格的だね、お金払わなくて大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ」

「じゃあ、頂こうかな」

「召し上がれ」

彼女はにっこりと笑う。僕は何時も箸を使ってハンバーグを食べているため、お世辞にも器用とは言えないナイフとフォークを扱い始めた。

「先輩は、この所、体の調子が悪く無いですか」

料理が半分程僕の胃に落ちた頃、彼女は何の前触れもなく聞いてきた。

「確かに具合が悪いね4.5日前から」

彼女は長いため息をついた後、がっくりと肩を落とした。彼女の髪が振り子のように動く。

「そうですか、やっぱりそうだったんですね」

そうだ、彼女の言うとおり僕は四五日前から具合が悪かった。吐き気、下痢、頭痛、倦怠感。特に頭痛がひどい。それが一体何なのだろう?

 彼女はおもむろに携帯を取り出して電話をする。

「もしもし、彼に間違いないです。 ええ、計画通りやってしまいます」

彼女は数十秒間喋った後、携帯をため息と共に閉じる。

「楠木さん、なんか僕の事で、問題でも?」

 彼女は無言で一枚の名刺を僕に差し出した。

 進化・突然変異危機管理センター、助手 楠木 麻衣

「単刀直入にいいますと、先輩は突然変異を起こしました。ただの突然変異なら何もしませんが、

あなたの場合はあなたの子孫が我々現生人類の進化を大きく崩す可能性があります」

彼女の言っていることがよく分からないので、僕は結論を聞いてみる。

「えっと、それで楠木さんはなにがしたいの」

スープをすすりつつ喋る。

彼女は結構な時間、うつむいてから、すっ、と顔を上げて溜めていた言葉を吐き出す。

「ここであなたに死んでもらう事です」

「なんだって!?しょ・・証拠は?!」

彼女は書類を一枚取り出して見せた。

「先輩の血液型、先輩のご両親の血液型です。これがすべて条件を満たしています。原因も言いたいですが、長くなりますから・・」

というと、楠木さんは小柄な学生服から重たそうになにか取り出す。黒くて、鈍い光が見えた。銃だ。そんな馬鹿な、なにかの冗談だろう?

 だが、そんな冗談にしては彼女の態度といい、言動といい、よく出来すぎている。

 彼女が学生服からそっと出したと思った瞬間、銃をぐっと握り締めて僕の額に銃口をつけた。ひんやりとした金属の冷たさが、額に伝わってくる。これは、本物の銃だ、間違いない。

僕は生唾をのむ。

「先輩、最後に言うことはありますか?」

彼女は握り拳にピッタリ収まるようなとても小さな拳銃を持っている。訳が分からない。でもこのまま無抵抗で殺されるのは実に惜しい。よし、駄目元で最後のあがきをしよう。

 僕はテレビでみたことを脚注を交えて話した。

「楠木さんは、進化って分かるよね。」

「・・・知ってますよ。それが仕事なんで」

それぐらい知ってる、当たり前の事だと言わんばかりに彼女は呆れた顔をした。

このときも彼女は銃口を僕の額に当てたままだ。

 僕の顔から冷や汗が垂れた。

「他の生物と共存したり、対立したりすることで個体数を一定に保ったりできないかな」

「つまり、あなたの子孫の存在が人類にとって有益になるということですか?」

「どこかの映画みたいに人を襲うわけでもないでしょ、僕の子孫は・・

だから分からないと思うんだ、有益かそうでないかなんて、君に分かるはずないよ。もし計算して出した結果だとしても」

 彼女は引き金に入っていた指をどかして拳銃にロックをかけた。

「確かにそうですね・・私が納得しなければどうしようもない・・上の人に命令されてやったんです、確かに先輩の言い分は正しいと思います。御免なさい。私どう謝っていいか・・」

「ああ、助かった・・・もう別に気にしてないよ、怖かったけどね」

 まだ、生きている心地がしない。危なかった。なんとか乗り切ったようだ。

 楠木さんはテーブルの上に置いてあった食事を片付け始めた。

「片付けなくても良いよ、毒とか入れてないでしょ」

 無用心にそういって、僕はテーブルに座り、彼女の料理を食べる。僕の頭はぼんやりとしていながらも彼女の事を信じた。僕と楠木さんは本当に赤い糸で繋がっているのかも・・

「やっぱり優しいんですね、先輩って・・」

彼女は、僕が座る椅子の横でがっくりと肩を落としている。これで一段落ってところか。

 だが、僕の心の中にはまだつっかえている部分が残っている。

突然変異っていったいなんのことだろう、なぜ僕がそんな目にあわなければならないんだ。そもそも原因はなんだろう、新種の公害か、被爆か、それとも生物に本来行われるべきであろう突然変異による進化なのだろうか?とにかく彼女は僕を見逃してくれたようだ。これからゆっくり探っていこう。

「先輩、私、本当に先輩のこと・・・」

「なんか言ったかい?」


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