一緒に喜べる人
「それはっ、魔術だよ! ほら、これに手を乗せてみて」
興奮した様子のフォルメダが、空中に何かの陣を描く。
手を置くと、その上に文字が浮かんだ。
「ユマ! これ、属性が生まれているよ! 『彩』、だね! とても珍しいよ」
「さ、彩?」
にわかに理解ができず頭を回転させる。
「魔術には属性というものが存在する。それがあるのとないのとでは雲泥の差なんだ。つまりこれを磨いていけば、君の魔術は飛躍的にパワーアップするよ」
「そうなんだ……。でそれを磨くのにはどういう勉強をすればいいんだろう?」
「彩属性を強くするのは、知識というより経験だと思うよ。美しい景色を見るとか、生き方の素敵な人を知るとかさ。一方で、取り込むだけじゃなくて、自分から発信することも大事だね。好きな服を選んだり、髪型を工夫したり、自分の気持ちを表現して伝えたりとかね」
そうか。経験と、表現。
「紹介するから、他の魔術師たちとも会ってみない? 刺激になるし、みんなで高め合っていけると思うよ」
「わあ、ありがとう! ちなみにフォルメダは属性を持ってるの?」
「僕は火・光・水・氷・土・風・雷を持ってるよ。元々持っていたものも、習得していったものもあるね」
「へ、へえ……。そうなんだ」
そんなに持ってたんだ……。リューの言う通り、本当にすごい魔術師なんだろうな。こういう人に教えてもらえて幸運なんだ。
とにかく、僕の魔術に少し進展があったみたいで良かった。フォルメダと知り合いになれたことに、繋いでくれたリューに、今は素直に感謝できる。これからの成長がぐっと加速するよう、気合いを入れ直すか!
***
「__ということみたいです」
「ふうん、そういうものなのか」
膝の上のリューが天井を見上げて聞いている。僕の嬉しい気持ちが伝わるのか、
「そうらしいですね。僕もまだピンと来ませんが」
「あの飛び出す色の正体は、まだ何物でもないのか?」
「ただの色のついた気体みたいなものですね。周囲にある魔素とかが集まって結晶化するみたいです。応用できるようになれば可能性は広がると思いますが」
リューが頬に手を伸ばして微笑む。
「ユマ、頑張ったな」
「ふふっ、ありがとうございます」
体を起こして、僕の肩を抱く。
「じゃあ私が新しい体験をあげようか」
何かを察知して、手を前に出してガードする。
「いや、なんか、大丈夫です……」
「また遠慮している。私の奥さんは本当に謙虚で困る」
そういってガードする手を掴み、手の甲と平にキスをする。
すると、手の辺りにまた例のぽわぽわが出た。
「あっ、まただな。これ、自由に出せるのか?」
「出せません……、まだコントロールできなくて……」
もう一度キスすると、まだ出てしまう。
「ふはっ、なんだか面白いな」
「ちょっ、やめてください! 恥ずかしい……」
「これはどうだろう」
リューが手を取って僕の口にあてがい、その甲にキスをした。
するとやっぱりぽんと淡いピンク色が飛び出す。
「やめて! 恥ずかしい!」
「ははは、もっと見せてくれ」
何度もキスをされ、二人の周りにいくつも柔らかな気体が浮かんでいく。
「リュー! やめてよー!」
キスされながら二人で大笑いする。
「ユマ……」
「ん?」
「今から少し、的を外してしまうかもしれない……」
ふいに真剣な顔をして、それまで手の甲に向かっていた唇が、その横の頬にゆっくり、ゆっくり近づいてくる。
「……」
近づかれる度に、ぽんぽんと小さな気体が飛び出していく。
「ユマ、好きだ……」
そう囁いて、唇が頬に触れた。
二人の体から蒸発する何かを集めるようにして、温かいというよりは熱い、赤い気体がぽわんと出てきた。大きさといい、ちょうどクッションのようだった。
なんだか自分の気持ちを証明してしまったような気がする。これ以上、言い逃れできそうにない。




