僕からの贈り物
まあ、一緒に暮らすようになったのも何かの縁だし? お祝いの日を無視するのもなんだし? 少しぐらい喜んで欲しいし?
「誕生日のお祝いですか……、そうですね……」
相談相手はシャンスさんしかいないと思った。
「ご主人様はあまり大げさに祝おうとするとどうも気まずそうにされるものですから、これまでは言葉で祝うだけでした。しかしながら、もっと楽しく過ごされても良いのに、と私も思ってはおりました。奥様のご提案なら、ご主人様も受け入れて下さるかもしれませんね」
「そうだと良いです。で、何をあげたら喜んでもらえるか、相談に乗って欲しくて」
「何でも喜ばれそうですが……、記念になりそうなアクセサリーですとか、身に着けられるものはいかがでしょう」
「なるほど、さすがですね。……もしかしてシャンスさん、恋愛の経験が豊富ですか?」
「まさか。ずっと仕事の日々でしたので、そんな余裕はありませんでした。でもご主人様が身を固められたので、私もそろそろパートナーを持ってもいいのかなと思ったりしています」
「一応聞くけど……、シャンスさん、リューのことを好きだったりとかは……?」
シャンスさんが声を落とす。
「奥様!物騒な冗談はよしてください!私はまだまだ命が惜しいのですよ……!」
「そ、そうですね。もう言いません。シャンスさんはどういう人が好みなんですか?」
「さあ、考えたことがないので」
「もしかして、モテるんですか?」
「そうかもしれません」
は? 急にムカつくことを言うな。いや、僕の質問に正直に答えただけなんだけど。
「少し失礼して、自室に物を取りに帰っても良いでしょうか」
「どうぞ」
そりゃモテるだろうね、こんだけ格好良くて洗練されてて、大人って感じだもん。きっと恋人もまた、洗練されていておしとやかな、大人っぽい人を選ぶんだろうな。
「失礼致します。想い人にはこういったものを贈るようです。恋人やパートナーと贈り合うケースでも同じでしょう」
布袋に乱雑に入れられたアクセサリーは、どれも安物には見えない。
「これ……、みんな貰い物?」
「時には断り切れないこともございます」
少し嫌いになってきた。とは言え参考になるので見せてもらう。きれいな石を組み紐で固定したブレスレット、銀色の金属製でメッセージの刻まれたバングル、デザインの凝ったリング、繊細な細工のピアス等々。どれも綺麗だと思う。芸術的感性は元の世界とほぼ共通するらしい。
「なるほど、素敵なものばかりですね。こういうのは街で買えるものなのですか?」
「ええ、いくつか店があるはずです。少々値は張るのでしょうが」
「そうか……、先立つものがないからなあ」
誰かに出してもらったお金で人のプレゼントを買うのはちょっと気が引ける。
「手作りも宜しいかと思います。例えば……、石は高価なものでなくとも、ある程度磨けば何でもそれなりに見えます。飾り紐などで編んでくるむことで、ちょっとしたアクセサリーにできるのでは」
「ベルトとかに取り付けられるようなチャームはどうかな……、アクセサリーというかお守りというか」
「素晴らしいと思います。頻繁に携帯するものですし、危険な任務のときは目につけば勇気を得られるかと」
シャンスさんはまるで自分のことのように満足そうに微笑んでいる。このチョイスは良さそうだ。大げさじゃなくて、邪魔にならないものだと良い。
「シャンスさん、極秘ミッションのスタートです。まず僕がリューに頼んで、どこか野山に連れ出してもらいます。それで持ち帰った石を加工できるような工房や職人さんを探したいんだけど、誕生日までになんとかかなりそうかな……?」
「……かしこまりました」
シャンスさんの眼がキラリと光る。




