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契約書はよく読めとあれほど!  作者: 宇居 リンリ


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最初の贈り物

「よし決まりだ。フォルメダ、これから宜しく頼む」

「わかったよ。ユマ、一緒にやってみよう」

「ありがとうございます! 僕、作りたいものがあって……」

「ユマ、まだ少し話したいだろう? この、みんなにもらった花や食べ物を一旦馬車に置いてきたいんだがいいか? 帰りにまた倍に増えるかもしれない」

 リューが、一旦置いておいた贈り物の山を再び抱える。

「ええ、お願いしても大丈夫ですか?」

「ああ。フォルメダ、少しの妻を頼む。手を出すなよ……」

「ひえっ。僕だってまだ命が惜しいよ」


 フォルメダに礼を言い、帰ってきたリューとまた馬車へ向かう。

 自習用に、とフォルメダが貸してくれた魔術書数冊を、繋いでいない方の手で二人で半分ずつ運ぶ。

 とりあえずは何かやることができたという安心感。しかも、上手く行けば欲しい化粧品やメイク道具を自分で作ることができるかもしれない。

「リュー、ありがとうございます」

「ああ、礼はフォルメダに言ってやってくれ」

 思った以上の収穫があってとても嬉しい。


 馬車に乗り込んで気づく。

 車内に充満している、往路にはなかった香り。それを放っているのは間違いなく、目の前に置かれた大きな花束だ。薄くて繊細な花弁が幾重にも重なり、小ぶりの毬のようなシルエットになっている。薄い桃色、紫色、水色が2,3本ずつ選ばれている。

「わあ……」

「大きくて、良い香りのもの、だったか。アモリースと言う花だ。淡い色があなたのイメージに合うかと思ったんだが、気に入ってくれるか?」

 花束を手に取って顔を近づけると、リューが手の甲をつついてくる。

「もう一つ贈り物だ」

 パステルブルーの紙袋。開けなくてもわかる。さっき見ていた化粧水と保湿剤、それと色のつくリップバーム。

「ああ、私の奥さんがやっと元気になった」

「リュー……」

 うまく言葉が出てこない。なんて伝えたらいいんだろう。

「おや、また黙ってしまったか。さて、今度はどうしたんだろうな。出てこい、私の小鳥、ほら」

 そういってふざけて首元をくすぐってきたので、二人で笑った。

 ああ、贈り物ってこうやってするのか。お手本を見せてもらった。どうやったら相手が笑顔になるか、その思いを形にするんだ。リューはやっぱり素敵な人だ。

 プレゼントも嬉しかったし、一方で僕が欲しいのはどうやら物そのものじゃないってことにも、手探りしながら二人で気づけた。一人では無理でも、一緒にいたら成長できる気がする。僕もこの人に何かを返せたら。

「妻ユマよ。……私に口づけする栄誉をくれないか――」

「だめっ」

「……返事が早いな」

 リューはすぐくっつこうとするけど、ぴしゃりと断るとすぐしょんぼりとする。

「まあ、……ハグなら、別に――」

 途端に、がしっと抱き着かれた。どちらかというと友情のハグのような気がする。

 ハグをねだったのは、涙目なのを見られたくなかったからなんだけど。

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