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契約書はよく読めとあれほど!  作者: 宇居 リンリ


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爆盛れ死、のち転生

 だだっ広い草原の真ん中で目が覚めた。ここは一体。

 整理してみる。僕は今年大学を卒業して就職に失敗中。暇に飽かしてそれっぽい美容系の画像や動画投稿ばかりをしては、大して伸びもしないインプレッションを見つめる毎日だった。美容系に就職したいという希望は一応捨てていなかったので、今日も肌やネイルをたっぷりホームケアして、午後は美容室に行ったんだ。ピンクのインナーカラーを就活のために黒染めしてあったからそのケアをしてもらって、全身の仕上がり具合にテンションが爆上がりした。そして2階にある店を出て階段に足をかけたら、そのまま大回転しながらすごい勢いで階段を転げ落ちて……。ここで記憶が途切れている。

 さてはこれ、異世界転生では?


 持っていたはずのバッグは見当たらない。この転生、不親切過ぎない?

 とにかく一刻も早く水と食料と、雨風を凌げる場所を確保するのがミッションだ。せっかく転生したのにまたすぐ死んでしまうのはちょっと。

 ていうか今日せっかく全身綺麗にしたところだったのに、何でこんな野ざらしになってるの。もっとSPFの高い日焼け止め塗っとけば良かった……。

 今はとにかく歩き出す。川とか、果実の成っている低木とか、なにかないかと目を皿にする。漫画に出てくるような洞窟とかあったらベストだけど、こんな平原にあるとは思えない。これから焚火したり野宿したりしないといけないのかな……。僕そういうの無理なんだけど。


 森というほどではないが、木々が集まって生えている場所を見つけた。何かないかと分け入ってみる。

 すると、木造の小屋を見つけた。おおお、人のいた形跡。人工物最高!

 勝手に入るのも憚られたので、一応ノックしてみる。

「***?」

 中で返事らしき声と足音がした。誰もいないと思いこんでいたので、びくっと固まる。

 怖い人が出てきたらどうしよう。そもそもこの世界って人間いるのか? 全員モンスターみたいな感じだったらどうしよう。

 良かった。出てきたのは普通の若い男性だった。いや、普通というか、とびきりの美形。金髪に近い明るい髪、澄んだ凛々しい目元、それに身長は僕より15cmぐらい高い。歳ははっきりとはわからないけど20代半ばぐらいだろうか? 必死の努力で何とかなっている僕とは質が全然違う。

 青年は僕の足元から顔まで視線を往復させている。

「あ、あの、こんにちは。僕、東京から来たんですが、ここはどこでしょうか……?」

 ひきつってはいるだろうが、精一杯のスマイルで話す。

「……」

 その青年は少し目を見開いたあと、今度は目を細めて、黙ったままじっと僕の顔を見つめている。

「僕、別の世界で死んで転生したんじゃないかと思うんですけど、お金も持ち物も何もなくて……」

「……」

 だめだ、全然話してくれない。何とかして信用してもらわないと。次いつ人間に会えるかわからない。正念場だ。

「水とか食料とかもないですし、このまま夜が来たらすごく困ります。僕、どうしたら……」

悲しそうな上目遣いで見つめてみる。こうなったら、昔から小動物系と言われてきたこの顔で勝負するしかない。使えるものはなんでも使う。食らえ、自撮り用キメ顔! きゅるん!


 すると、青年はマントの内側から何やら小さな果実を取り出して、僕の前に差し出してきた。貴重なビタミン源(多分)。

緑色で丸く、ゴルフボール大ぐらいだろうか。ライムでもないし、かぼすでもなさそう。

 何だろうこれは……全然わからん。食べられるんだよね?

 戸惑っている青年を見上げると、もう一つ出して俺の目の前でかじりついて見せてくれた。安全だということを教えてくれているらしい。その親切が今の俺の心には深く沁みる。

 はい、理解しましたよ! うんうんと嬉しそうに頷いて見せる。

 一口かじってみると、皮は薄くて柔らかいし、爽やかな酸味。

「……おいしい」

 青年の目を見てにっこり笑って見せた。私はこれをもらって喜んでいる、感謝している、それを何とか伝えなければ。

 青年は果実の残り半分を口に放り込んだあと、僕の(あご)を摘まんだかと思うとぐっと近づいて顔を見つめる。

 美形ではあるが、知らない人に目の前で黙ってもぐもぐされ続けるのは居たたまれない。でも今目を反らすと信用を得られない気がする。やわらかく見つめ返して、精一杯微笑んだ。

 果実を持った手を掴み、口元に持ってくる。残りも食べろと言いたいのか。

 うん、食べるね。また、ぶんぶんと頭を上下に振る。

 咀嚼していると酸味が消えていき甘みを感じるようになった。不思議な味だな。

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