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王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


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64/64

64 ブランコ

 「シグ!」

 駆け寄ってきたヴァーツァに抱きしめられた。膝の裏側に手が差し込まれ、足が地面から離れる。

 ……姫抱っこ?

 羞恥を感じる暇もない。

 そのまま、夏の別邸へ連れて行かれた。海に浮かぶあの小島だ。


 執事のトラドを筆頭に、使用人一同が迎え出た。ゾンビの皆さんから、陰気な祝祭の気配が感じられる。先頭のトラドだけが、なぜか悲し気だった。

 慌ただしくメイドさんたちに世話をされて、ヴァーツァの寝室へ送り込まれる。

 もう、逃げ場はない。




 「バタイユを置いてきてしまった」

目を覚ました俺は、途方に暮れた。

 ヴァーツァの姫抱っこって、最強だろ? 他が全部見えなくなったって、無理はない。おかげで、バタイユを一人きりにして、置き去りにしてしまった。


 「あの子なら大丈夫」

紫の瞳には、赤や青の光が、華やかに点滅している。ベッドで至近距離で見る美貌は、想像していた通り、やっぱり心臓に悪い。

「それより、シグ、もう一度……」

 何が大丈夫かわからない。けれど、彼のブラコンの弟は邪魔をしに来なかった。

 長い間怯えていたけど、バタイユは、二人の寝室に現れなかった……。




 再び眠ってしまったヴァーツァを置いて、庭に出る。

 今の幸せが信じられない。有頂天のあまり、どこかへ飛んでいきそうだ。

 少し、頭を冷やす必要を感じた。

 気を利かせたのか、柩で休んでいるのか、使用人たちは姿を見せない。


 微かな音が聞こえた。

 生い茂る葉をかき分けて進んでいくと、ブランコがあった。前へ後ろへ揺れている。

 バタイユが乗っていた。


「やあ、シグモント」

 彼の漕ぎ方はへたくそで、頼りない。

「無事に済んだようだね」

 俺は真っ赤になって俯いた。自分のつま先が見える。

「可愛いなあ、君は」

含み笑いが聞こえた。

「いずれ、僕も混ぜてね」

「なっ!」

一気に血の気が引いていく。

「だいじょうぶ。許可があるまで行かないから」

 足をぶらぶらさせながら、そんなことを言う。

「許可なんか、永遠に出ない!」

「いいさ。兄さんに頼むから」


 ヴァーツァにきつく言っておかないと。

 俺はいやだ。

 たとえ双子の弟でも、ヴァーツァ以外の人を二人の間に割り込ませるなんて。


「アンリに渡すなよ」

 ブランコは止まりかけていた。バタイユは、一生懸命、揺らそうとしている。

「アンリはダメだ」

「俺ならいいの?」


 そこはやっぱり気になる。全てにおいて陛下の方が格上だが、たったひとつ、ヴァーツァへの想いだけは、負ける気がしない。


「君のことは、僕も欲しいから」

「……えっ?」


 にたりとバタイユが笑った。

 「何をしているんだ? ブランコを漕いでくれないの?」


 不服そうに言われ、静止してしまったブランコの後ろに回った。

 小さな背中を力いっぱい押す。

 楽し気な笑い声が、辺りに広がっていった。





最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

完結マークは入れますが、ちょっとした伏線を残してあります。ご希望があれば、続編も書きたい気持ちでいっぱいです……


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