表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/64

61 ラスボス


 「なぜ? なぜ、いつも僕を呼ぶの?」

誰かが文句を言っている。

「いいからさっさと治療しろ!」

別の誰かの命じる声。強い焦燥を感じる。

「こんなのかすり傷だ。とっくに治ってるよ!」

最初の誰かが蹴飛ばした。

「何をする!」

激しい怒声。

「俺に何をするのも自由だ。今までだって、好きにやらせてきた。俺のゾンビ兵を操ることさえ黙認してきた。だか、シグに手を出すことだけは許さない」

「許すも何も、シグモントは完全に元通りだ。わかってるだろ」


 ヴァーツァのゾンビ兵を操った者がいる?

 そしてヴァーツァはそのことを知っていた?

 知っていて、唯々諾々と背中を切らせたというのか? 


 呻き、俺は目を開いた。


「シグ!」

 豪華な金色の髪が覆いかぶさってきた。ヴァーツァだ。ヴァーツァが俺を抱きしめていた。

「馬鹿だな、シグ。俺を庇って……君が死んだら、俺は生きていけないんだ。そこのところを、君はちっともわかってない」

「ちが、……。あなた……の、方が……だいじ」


 うまく口がきけない。

 途切れ途切れになんとか伝えると、ヴァーツァは号泣した。



「いい加減、見せつけるの、やめてくれる?」

 ずけずけと言ってくるやつがいる。

「もう君は治ってるよ。傷は完璧に治癒させておいてやった。恩に着るがいいよ」


「何を言うか! シグに万が一のことがあったら、お前といえど、決して許さない!」

 ヴァーツァの怒りの波動が伝わる。ダメだよ、ヴァーツァ。そんなに怒ったら。

「あれは、事故だっていったろ! 誰がこんな魅力のないのをわざわざ……。僕が狙ったのは、兄さんだ!」


 やっぱり……。

 妙に納得した。


 召喚されたゾンビ兵は、最初、何の気配も漂わせていなかった。気配……エクソシストが感じる、負の怨念だ。彼は全くの死骸、ただのゾンビだった。

 それなのに、最後の一瞬、凄まじい瘴気が立ち昇った。それは、よく知る人の気配だった。俺はこの「気」を良く知っている……。


「バタイユ……やっぱり君だったのか」

「そだよ。僕だよ」

バタイユが笑った。何も知らなければ、天使のような少年の笑顔だ。

「ああ、シグ。良かった。気がついたか」

 俺を抱きしめたヴァーツァの腕の力が強くなる。

 バタイユの顔が歪んだ。

「僕の白魔法は完璧だ。シグモント、君は、もうすっかり元通りのはずだ。それどころか、前より調子がいいんじゃないか? いつまでも僕の兄さんに、甘えてるんじゃない」

 強引にヴァーツァから引き離そうとする。

 けれどヴァーツァがそれを許さなかった。俺に触れたバタイユの手を叩き落とす。

 俺は自分でヴァーツァの腕をほどき、起き直った。

 本当だ。肩の激痛が消えている。


「シグ……」

 言いかけたヴァーツァを留め、バタイユに向き直った。

「傷を治してくれてありがとう」

「うん。あれは結構な致命傷だったね」


 ゾンビを使って、その傷を負わせた黒幕は誰だと言いたい。けれど、バタイユに常識は通用しない。だったらこちらも、聞きたいことを聞くまでだ。


「なぜ君は、ヴァーツァを殺そうとしたんだ? しかも、二度も」


 戦闘の時と。

 そして、ついさっき。

 バタイユの瞳が赤く輝いた。


「決まってるだろ。どちらも同じさ。移り気な兄さんを、これ以上、人目にさらさない為だ。まったく、君は番犬として失格だな、シグモント。兄さんがアンリ陛下と接触することを、妨害できなかったなんて」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ