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王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


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44 お仕事再開

※シグモント視点に戻ります


 仕事を再開することにした。例の代筆業だ。

 この長屋の家賃をヴァーツァに立て替えてもらったことを、思い出したのだ。返済しなくちゃならない。


 べ、べつに、それを口実に彼に会いに行くとか、そういうことをするつもりはないから。カルダンヌ公は王都の屋敷に引き籠ったきり出て来ないという噂だし、お金は送ればいい。

 もちろん、お金に添える書状に、ここの住所を書くつもりもない。

 ヴァーツァは既に、この長屋の場所を知っている。だって、家賃を建て替えたのだから。それでも、一度も訪ねて来ないということは……馬鹿だな、俺。何を期待しているんだ?


 幸い俺のことを覚えてくれた人がいて、ぽつぽつ仕事が入ってきた。厄介な役所への書類を代筆しながら、ふと思う。そういえば俺、ヴァーツァから雇われたんだっけ。戦争の報告書を書けと言われた。あれは、どうなったのだろう。

 いけない。なぜ俺は、ヴァーツァのことばかり考えるのだろう。どうしようもなく残酷で、移り気な男のことを。


 自分で言うのもなんだが、俺はなかなか、腕がいい。つまり、ラブレターの代筆だが。文章は流麗だし、字もきれいだ。おまけに、くずし字を書くこともできる。

 公文書作成はさておき、ラブレター代筆の方は、次々と仕事が入ってきた。リピーターも多い。

 もっとも、相手を乗り換えた場合を除き、リピートされるのはあまりいいことではない。だって、恋文の効果がなかったってことだからね。

 それなのに、みんな、何度も何度も俺のところにラブレターを書いてもらいにくる。

 まあ、こっちも、成就率○%以上、とか、誇大広告はしていないから、商売的には問題ないわけだけど。



 「だって、ボルティネさんに会いたいから」

 娼館の女性が言って、ぺろりと舌を出した。

「光栄です。でも、俺に会っただけでは、恋は実りませんよ」

「もちろん、お仕事もお願いするわよ」


 よかった。これで明日の夕飯も食べられる。


「お仕事、喜んで承ります。お相手の名は、ええと」

「ボルトよ」

「前回はボルダーさんでしたね?」

 前の記録を見ながら俺は指摘した。女性は目をぱちぱちさせた。

「あら、記録を取っていたの?」

「仕事ですから」

「相手の名は、ボルティネでも構わないのよ? どう? 負けとくわよ?」

 今度は俺が目をぱちぱちさせる番だった。

「何をですか?」

「もうっ! 鈍いんだから」


 客は、娼館の女性だけではなく、貴婦人や令嬢の場合もある。時には男性が依頼に来ることもある。

 どの人もだいたい、こんな感じだ。年配の貴婦人の場合は、謝礼の他に、お菓子や甘い飲み物をくれたりする。令嬢は刺繍の入ったハンカチや靴下をくれるが、正直、手芸においては、彼女らはあまり上級者ではない。






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