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王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


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36 ゾンビ軍

ヴァーツァが語る、戦闘の様子です。

当時はまだ、第一王子のアンリは即位しておらず、「殿下」と呼ばれています

 蛮族が、ペシスゥスの国境を脅かしていた。

 しかし、軍が到着した国境の村、エシェクに、敵の姿はなかった。


「前衛軍は本体から離れ、西へ向かえ」


 第一王子で、鎮圧軍総司令官でもあるアンリは命じた。

 前衛軍は、ヴァーツァ・カルダンヌ公爵率いる精鋭部隊だ。ヴァーツァは、自分の軍がアンリのそばを離れることに反対した。


「分遣は、軍の力を弱めます」

「確かにお前は正しい、ヴァーツァ。だがそれは、軍人の考え方だ」


 恐れもせずに上官(アンリ)を諫めるヴァーツァに、第一王子アンリは首を横に振った。


「俺は、王族だ。国家経済について考えなければならない。軍を維持するには金がかかる。早急に敵を見つけ出し、たたく必要がある」

「しかし! 軍を弱体化すべきではありません」

「お前の言いたいことはよくわかる、ヴァーツァ。だが、俺は弱虫ではない。西へ行くのだ。敵を見つけ出せ」

「私には殿下のおそばでお守りする義務があります!」

「忘れたか。上官の命令は絶対だ!」


 辺りは霧に覆われていた。

 ヴァーツァの軍が西へ向けて出発してすぐ、霧が晴れた。アンリ皇子率いるペシスゥス軍は、蛮族の大軍に対面していた。


 「あれは、砲撃の音だ」

 駐屯地を出ていくらもしないうちに、ヴァーツァは馬を止めた。飛び降りて大地に耳を押し付ける。

「間違いない。大砲の発射音だ。アンリ殿下の軍が襲われている。エシェク村へ戻るぞ」

「ですが、アンリ殿下は西へ向かえと……」

 おずおずと副官が意見した。軍では上官の命令は絶対だ。総司令官であるアンリ殿下の命令に逆らって戻れば、軍法会議に問われてしまう。

「その殿下の軍が襲われている。俺は戻る。ついて来れる者はついてこい!」


 言い終わった時には、彼を乗せた馬は、素晴らしいスピードで走り始めた。

 副官たちは慌てて後を追ったが、その差は開くばかりだ。歩兵たちに至っては置いてけぼり状態だった。


「俺は一足先に戻る。エスリングス、前衛軍をまとめて連れて来い」

 振り返り、副官に向かってヴァーツァは叫んだ。




 敵を迂回する為、ヴァーツァは大きく南下してエシェク村へ戻った。途中、険しい山道があり、騎馬兵たちはそこで、上官(ヴァーツァ)を見失った。岩場を馬が嫌がり、ついていくことができなかったからだ。


 死霊使いのヴァーツァには、テイマーとしての素質もあった。彼が命じれば、馬は決して逆らわない。

 部下たちをすべて置き去りにして、ヴァーツァはただ一人、エシェク村の司令部に到着した。敵に囲まれたアンリの軍は、丘の陰に、かろうじて退避していた。


「帰って来てくれたか、ヴァーツァ」

 アンリの顔色は悪かった。それでも、部下であり親友でもある男の姿を見て、ほっとした表情を隠せなかった。

「私は貴方の盾です」

 ヴァーツァは答えた。二人の間は、それで十分だった。


 辺りは暮れかけていた。

「午前中の戦いで、親衛隊は切り崩されてしまった。再編には時間が掛かる」

 せかせかと辺りを歩き回りながらアンリが言う。

「私が前へ出て、敵を引き付けましょう」

ヴァーツァは申し出た。

「その間に、わが軍の後方で軍を再編なさいませ」

「引き付ける? どうやって? 兵士が足りない」


 ヴァーツァの前衛軍はまだ帰り着いていない。今頃は徒歩で山越えをしているだろう。


「お忘れでございますか、殿下。私には絶対服従の兵士たちがおります。彼らは死をも恐れません。なぜなら……」


 最後まで言う必要はなかった。今回の戦いで、敵味方ともに、大勢の死者が出ていた。彼らをそのまま再利(リサイクル)しようというのだ。ネクロマンサーの魔力で。


 アンリの目が輝いた。


「やってくれるか、ヴァーツァ」

「お任せください、殿下」








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