表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/40

27 嫉妬

 ヴァーツァの顔に笑みが浮かんだ。含み笑い? 

「あんなにたくさんあっても、死体は誰かが操らなければ動かない。彼らが動けば、この館はもっと快適になる。君が料理をする必要はなくなる。トラドやメルルの負担も減る」

 それが何を意味するのか、咄嗟にわからなかった。料理。トラドの負担?

「地下室で眠っているのは、カルダンヌ家の使用人たちだ」

「使用人達の遺体……」


 やっぱり噂は本当だったんだ。犠牲者が、行きずりの人から使用人に変わっただけで。ヴァーツァは片っ端から使用人たちに手を出して、女も男も関係なく手を出して……最後には全員殺してしまったんだ。

 使用人を殺すなんて。それも、皆殺しなんて。一人一人ベッドに呼んで、優しく耳元で偽りの愛を囁いて、そして……。


「なんてひどい」

「そうだな。早く体力を回復しなければ、彼らに恨まれる」

 頓珍漢なことを、ヴァーツァが言う。

「今でも充分恨まれているよ。殺して地下室に閉じ込めておくなんて」

 もしかしたら、一晩で数人を殺したこともあったのかもしれない。つまり、一晩で複数人を相手に……。

 目の前がちかちかした。

 やっぱりこの男は人でなしだ。

 ヴァーツァが首を傾げた。


「ん? 殺したのは俺ではないぞ」

「……え?」

 胸に希望が灯った。

 だめだ。希望を抱くなんて不謹慎だ。とにかく。使用人たちは亡くなったのだから。

「疫病が流行ったの?」

 それなのに希望を抱く自分が忌まわしい。希望……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という希望だ。


「死因はさまざまだ。俺もよく知らない。いや、調べればわかるんだけど、書類仕事は苦手で」

 頭を掻く。

「でも、そんなことしなくても、当人に聞けばわかることだ」

「聞く? 死骸に?」

「そうだよ。まさか忘れたんじゃあるまいね。俺はネクロマンサーだ。遺体を蘇生させ、使役することが俺の領分だ」

 ぽかんと口が開いてしまった。俺はヴァーツァを眺めた。朗らかで美しい彼を。

「明日にでも彼らを蘇らせよう。カルダンヌ家自慢の使用人たちだ。きっと君は満足することと思う」


 ゆっくりと頭が回転を始めた。

 メルルは死骸だと、ヴァーツァは言っていた。死骸を使役していると。だから、壁に叩きつけられても、すぐに蘇った。

 同じことが使用人にも言えるのかもしれない。

 彼らはもともと死体だった。ヴァーツァが使役し、初めて動くことができる。

 見上げる男の顔に笑みが浮かんだ。


「それにしても、女性? 気にしていたのはそこなんだな」

 手を伸ばしてきた。

「俺が彼らを殺したかもしれないという疑惑より、俺が彼らと寝たかもしれないという疑いの方が、君を傷つけたのだろう?」

 図星を刺されて、俺の頬に音を立てて血が上った。

「ち、ちが、ちが、」

 必死で否定する俺を、ヴァーツァがにやにや笑いながら眺めている。

「違わない。嫉妬してくれて嬉しいよ、シグモント。最初のキスの後、君は全然積極的でなかったから。むしろ俺を避けていたろ?」


 理解するのに時間がかかった。

 言葉の意味がわかった瞬間、俺は彼に抱きすくめられていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ