表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/38

26 告白?

 どうやって階段を駆け上がったのか覚えていない。

 気がつくと、調理台に向かい、玉ねぎを刻んでいた。


 骸骨は、ドレスを着ていた。あれは、女性だ。


 湧き出る涙が、信頼が裏切られたせいなのか、玉ねぎのせいなのか、判然としない。

 きっと玉ねぎのせいだ。

 なら、泣いていいのだろう。

 包丁を放り出し、俺は盛大に涙を流した。


 「やっぱり。ここにいた」

背後から尊大な声が聞こえた。

「急にいなくなるなんて、ひどいじゃないか。料理なんて君がする必要はない。君がすべきことは、いつも俺のそばで……どうしたんだ、シグ!」


 伸ばされてきた腕をよける。涙の向こうに、ヴァーツァが傷ついた顔になったのが見えた。

 ひどい。まるで被害者はヴァーツァのようじゃないか。憤慨して俺は叫んだ。


「本当は女性が好きなくせに! 俺なんか、ただの気まぐれなんだ」

「は? 何を言ってる?」

「あなたは、大の女性好きで……。何人もさらってきたのでしょう?」

「何を言う。失礼な」


 むっとした声。騙されまいと思った。彼は、地下室の彼女たちを愛したのだ。たとえ一時でも、その髪を撫で、肌を慈しみ……。


「トラドに命じて、定期的に空気を入れ替えさせて。神経質なくらい。大事なんだ。大事だから、しまっておくんだ。ラベンダーやミルラで守って」


 頭の中に警鐘が鳴り響いた。これ以上、言ったらダメだ。この男は危険だ。

 けれど、止まらない。自分で自分が抑えられない。


「飽きて殺してしまったくせに。でも、貴方は彼女らを愛したんだ! あんなにたくさん!」

「……地下室へ行ったのか?」


 質問ではない。断定だった。

 はっとした。

 秘密を知った俺は、殺されるのに違いない。

 けど、この美しい男に殺されるのなら、本望だ。だって俺は……。


「そして飽きたら殺してしまうんだ!」

「棺の蓋を開けたのだな?」

 この場にそぐわない優しい声だった。

「あ、開けた。だって、貴方を疑いたくなかった。あの中には、本が入ってると思った。あるいは骨董品か。そうだったら、どんなによかったか!」


 血を吐く思いだった。だって、本当にそう思っていた。あれは棺桶なんかじゃないって。ヴァーツァを信じていたのに!

 俯き、涙を流す俺を、ヴァーツァがじっと見ている。何も言わず、食い入るように。

 しばらくして彼は言った。


「黙っていてごめん、シグ。でも君は気にしないと思った」

「気にしない? 地下室に大量の死骸があることを? それも、女性の!」

「うん、女性のもあるな。だが、男性のもあるぞ」


 ぱっと俺は顔を上げた。見上げるヴァーツァは、どこかいたずらっぽい顔をしている。


「俺も殺すの?」

「殺されたいのか?」

「やだ。だって俺はまだ、飽きられるほど貴方を知っていない」


 それが愛の告白だとは、微塵も思わなかった。

 そもそも、俺からのキスで始まった関係だ。主導権は、最初からヴァーツァに握られている。口づけたのはガラスで、本物のキスではなかったけれど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ