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王都怪異事件簿――ネクロマンサーの不埒な恋を祓うには  作者: せりもも


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12/20

12 浄霊

 「アイン イーヒィ アン アジン!」

銀の杭を振り上げた時だった。


「おっと。そんなこと、許しはしないよ」


 揶揄(からか)うような声が聞こえた。

 いつの間にか、俺とヴァーツァの間には、少年が立ちふさがっていた。


「兄さんも兄さんだ。こんなやつ、捻ってやればいいのに」


 ヴァーツァとよく似た顔立ちだが、ヴァーツァの黒髪に対し、この少年は金色だった。10歳前後だろうか。可愛い顔をして、とんでもないことを口走っている。


「一般人を捻り潰す趣味は俺にはないよ。それにこの()は俺のことを好いてくれている。しもべは大切に扱わなくちゃな」


 可愛くてたまらないという風に、ヴァーツァは弟の髪をなでた。この()ってさ? つか、しもべ? 誰それ。まさか、俺?

 ぷうーっと少年の頬が膨れた。


「まぁーったく、兄さんは優しいんだから」

「俺がいちばん優しいのはお前に対してだ、バタイユ」


 蕩けそうなヴァーツァの目。俺を見る目と全然違う。ちょっと妬ける。いや、今の、なし! 怨霊に、蕩けそうな眼差しで見られたくなんかないし!

 少年のふくれっ面は治らない。


「兄さんも兄さんだよ。意識を取り戻したのなら、なんで真っ先に僕を呼んでくれないの?」

「それはまあ、ちょっとやることがあったのだ」

「この人と()ろうとしてたね?」


 ()ろう、だって? 可愛い顔してなんて言葉を使うんだ! 第一まだ、ほんの子どもじゃないか。


「バレてたか。全くもってバタイユ、お前には叶わないな」


 ははは、とヴァーツァが笑った。悪霊のくせに疚しそうだ。って、ヴァーツァのあれは本気だったのか? 続きをしようって。

 続き? キスの続きと言ったら……、それに、()ろうといてた? だって!? 


「ダメじゃない、兄さん。まだ全快したわけじゃないんだよ。もう少し、あの棺の中で寝てなくちゃいけなかったのに。そんなにこの人が欲しかったの?」

「まあな」


 むちゃくちゃな会話だ。

 それに、棺の中で療養してた?

 俺を抱く為に、生き返った?


 じりじりと俺は後じさった。

 カルダンヌ公に弟がいたとは聞いていない。だとしたらこいつもあやかしの可能性が充分ある。

 よかろう。二人まとめて浄化してやる。


「アイン イーヒィ アン アジン」

念を込めて唱えた。


「うるさい」

「ダメだぞ、バタイユ。そんな口の利き方をしたら」

 少年が俺をぎろりと睨み、ヴァーツァがたしなめる。浄化されそうになっているくせに行儀をあれこれ言うとは、大した度胸だ。

「だって僕、この呪文、嫌いなんだもん」

「確かにきれいな言葉だと言い難いな」

二人で勝手なことをほざいている。


「アイン イーヒィ アン アジン、アイン イーヒィ アン アジン!」

 俺は必死で繰り返す。この二つの悪霊を祓わなければならない。


「ああ、うるさい。ねえ、兄さん。カルダンヌ家の別荘へ行こうよ。誰も知らない隠れ家で、ゆっくりと養生するがいいよ」

「それは魅力的な提案だねえ」


 くくく、と、ヴァーツァが笑う。

 うっとりと兄を見上げ、少年が微笑んだ。


「じゃ、行こうか。ここはあまりにも……人間臭い」


 二人の周りを、ゆっくりと閃光が飛び交った。光は輪の形になり、どんどん半径を縮めていく。

 ヴァーツァがこちらに目を向けた。

「彼も連れて行かなくちゃ」

「え?」

 唖然とした。


 甲高い声で少年が何か叫んだが、聞き取れなかった。耳がきーんと痛む。

 光の中心から軍服の腕が伸びてきて、俺は、あっという間に引きずり込まれた。





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