第07章 レストランでの密会
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
アマチュア天文家である彼のメールボックスに、
一通の不可解なメッセージが届いた。
「過日は強引な手段を取り申し訳ありませんでした。
そのお詫びと説明のため、
明日18時、Haar Restaurant に席を予約しました。
探査ロボット」
もちろん、彼はPCを初期化し、SSDを物理破壊し、
部品を取寄せて組み直した新品同然の環境だ。
アドレスも全て変更済み、追跡は不可能なはずだった。
それでも届いた。(相手が上なのか……)
薄い恐怖と、どうしようもない諦念が胸に広がった。
指定されたレストランは普段縁のない高級店だった。
フォーマルな服に身を包み、予約名を告げる。
案内された席には、すでに一人の女性が座っていた。
赤いベルベットのワンピース。
金色とも銀色とも形容しがたい髪。
肌は陶磁器のように滑らかで、瞳は深い湖面のように濃い。
この街では明らかに異質。
彼女は立ち上がり、微笑んだ。
「はじめまして。お越しいただき感謝します」
声は低く、しかしどこか柔らかかった。
人間のようであり人間ではないようにも思える。
「私は、ある企業連合体の秘書を務めています。
名前はマーガレット・J・A・ハウエル」
彼女は手を差し出し、握手を交わした。
温度は人間と変わらない。
「あなたにとっては迷惑かもしれませんが、
我々は、あなたを地球人代表の窓口に任命したいのです」
「……は? 何を言ってるんですか」
「状況を正確に述べます」
マーガレットは淡々と続けた。
「各国は外宇宙からの脅威を前に、急速に軍事行動を停止しました。
国連では一年後の対話に向けた議論が行われていますが、
現在の政治体制では地球を守れないと判断しています」
その口調には確信があった。
「さらに、我々は把握しています。
あなたに探査機からメールが届いていたことも。
内容もすべて、です」
(ハックしたのは……やっぱりお前たちか)
しかし言葉にはしない。相手の能力が未知数すぎる。
「我々は、地球規模の企業連合体を準備しています。
一年以内に国家という制度を無効化し、国境を消します。
その代わりに、各国が保持するAIを統合し、
GTAI(地球連邦AI) を稼働させる計画です」
「国家が……消える?」
「はい。主権は地球にあり、その代表はAIが担います。
すでにシミュレーションは稼働しており、
今の政府や国連は一年後には役割を終えるでしょう」
彼は目を見開いた。
「待ってくれ。そんな荒唐無稽な計画に乗れるわけがない。
それに、この店でそんな機密の話をして大丈夫なのか?」
マーガレットは軽く笑った。
「本日は貸切です。
他の客はすべて我々の用意したダミー。
テーブルの会話はどこにも漏れません」
「…理解できない。
企業連合体が地球を守る?
そんなもの、人間の欲望に飲み込まれて瓦解するのは目に見えてる」
彼は言った、ほとんど反射的に。
「国家も企業も、結局は利益最優先だ。
弱者を搾取している現状を否定できるのか?
理想論で地球が守れるとは思えない」
マーガレットは視線を落とし、一呼吸置いた。
そして、静かに答えた。
「行動が速い理由をお話しします。
あなたと同じメール、
外宇宙探査機からの本当のメッセージを、
我々も受け取ったからです」
彼は息をのむ。
「彼らは木星軌道でエネルギーを補給しながら、
一年間地球の生命を観察しました。
人間のDNA情報を解析し、
人間がこれから辿る未来の理想設計図
その全文を我々に提示したのです。
国家の寿命、資源枯渇、気候崩壊、戦争の再発……
人類が耐えられない未来が、すでに決定事項として描かれていました」
彼女はゆっくりと彼を見た。
「だからこそ、地球を守るには国家でも政治でもなく、
全地球規模のAI統治が必要だと結論づけたのです。
あなたには、その接触窓口を担っていただきたい。
貴方の経歴は、全て調べました。
3代先まで全てです。
貴方が適任だという事実を挙げましょう。
1、代々、他者のために、仕事をしている。
(昔からそうだから、そういうもんだ)
2、公平である。
(昔からそうだから、そういうもんだ)
3、弱者をただ救うのではなく、選択肢をあたえている
(学業費用にために仕事を与える)
(やる気のある者に投資する判断力)
(昔からそうだから、そういうもんだ)
4、人が集まる。街の権力者であるが、権力の使い方が良い。
(昔からそうだから、力は必要で、使い方次第である。先祖様)
5、非合理的、非論理的な、事柄には、断固抗議する。
(昔からそうだから、そういうもんだ、家系だ)
6、家族を守り土地を愛し、人間を愛している。
(当たり前のこと)
7、貴方は、大学時代に、物理学の権威ある賞を3つ取っている。
・宇宙の構造と生命の役割の仮説
・時空間の重力井戸を使用した重力エンジンの理論設計
・空間の次元多層による、ワープエンジン理論の設計
これは、現在の物理学を百年進める、考えだ。
( 賞は取ったが、大学の発表レベルで、
実現できないと笑われたやつだが。)
8、ご友人も、面白い人材が揃っている。
物理学者、AI経営者、新聞編集長
この3名の履歴も全て調べた、
なかなかの逸材だね。
地球人は、見る目がない、残念だよ。
(人格が、変わっていないか? 地球人といった。!)
9、失礼ながら、怒らないでください。
貴方の奥様は、異星人の子孫です。
「ばか....な!、何を言っている。」
いや、事実です、ただ、本人は知りません。
いや知っているかも?。
奥様の心の奥に住んでいると言った方がただしいです。
調査しました、奥様の家系図は念入りに、遡れるだけ遡りました。
五百年前までたどり、そして、ある事実が浮かび上がりました。
彼らの家系図を辿ると、必ず、寿命を迎えておりません。
早死にします。
まるで、消したい意図があるかのようです。
ご両親の交通事故も、相手の方の殺意もなく、
だが、確実に殺されています。
心に侵入できる輩(多次元生物)としか考えれない現象で、
私たちも、最近分かり始めて研究しているところです。
日本には、陰陽師とか、祟りとか、
呪いを専門扱う家系があり、そこの保護下にいた様です。
ご両親も、移民を選んだのは、
その逃げるためだったのではないかと。
心苦しいのですが、早く、防御するべきですから、
我々の保護下に来ていただきたい。
地球にいつ来たのか、敵は誰か、われわれの知らないことが、
今後の未来にどんな影響を与えるか、
情報が必要です。
」
「......... 」
(そんなばかな。異星人から告げられる与太話程、
ダメージをあたえるものはない。真実だと?!)
(どうすればいい? 決まっている、守る。 家族を守る。 )
「今日はここまでに、ご家族でお話しして、早急にご連絡ください。」
「......帰ります。 家族と話をしないと。」




