第06章 ファーストコンタクト
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
探査機とのランデブーから数日後。
全世界の観測網が沈黙を続ける中、最初の返答は、
メールという最も日常的な形で届いた。
送信元不明。
国連に届いたその文面は、恐ろしく丁寧、かつ明瞭だった。
「この頭脳は資源を目的としている。
我々は現在、資源の枯渇に見舞われ、文明の維持が難しい。
従って、資源のあるこの場所にやってきた。
先住民である君たちの惑星には手を出さないが、
それ以外の場所は我々が開発したい。
そのため問題点と協議を行いたい。
ただし、
この探査機はロボットであり、本体はまだ到着していない。
協議のうえ、返答を願いたい。」
地球には手を出さない。
しかし、太陽系の他領域は開発したい。
この一文だけで、国際社会は完全に分裂した。
国連本部では緊急会合が連日続いた。
木星、火星、小惑星帯、衛星群、これらは誰のものなのか?
国際法上、宇宙は「全人類の共有財産」とされてきた。
しかし現実には、各国は既に権利の先取りを始めている。
火星の土地売買を謳う企業、木星圏の資源調査権の主張……。
そして、宇宙から来た存在が突然こう宣言したのだ。
「太陽系の資源を利用したい」
第一案:
「太陽系は我々人類の管轄であり、いかなる開発も認めない」
と通告する案。
大国が強く主張した。
理由は単純で、他者に資源を渡したくないからだ。
第二案:
互恵関係を構築し、技術提供を引き換えに資源使用を認める。
これは科学者、外交官の多くが支持した。
第三案:
協議の場を設け、段階的に情報交換を行う。
一部の国は非常に慎重だった。
しかし、第一案が拒否権の乱用で押し通された。
強権的な大統領を擁する国が、
「弱みを見せればつけ込まれる」と主張し、
第二、第三案は潰された。
結果として、
最も高圧的で、最も危険な返答が宇宙へ送られた。
探査ロボットは淡々と返信した。
「内容を受領した」それだけだった。
そして、火星軌道を離れ、太陽系外縁へ向けて静かに退去した。
まるで協議は終了したと言わんばかりに。
数週間後。
カシオペア座方向の深宇宙から再びメールが届いた。
「1年後、我々が行く。その時、改めて話し合おう。」
その瞬間、人類は悟った、これは協議ではない、
これは、審判の猶予期間だ。




